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僕が路面電車の運転士になるまで③

憧れの鉄道業界に信号通信の分野から飛び込んだ僕はその複雑さと奥深さに魅了されていく…


好きな信号保安設備とは

 特に好きだったのが「継電連動装置」だった。
ポイント・信号機・軌道回路を文字通り「連動」させるための回路や機械である。
 駅の信号所で信号機に進行信号を出すためのスイッチ(信号てこ)を操作すると、連動装置の中ではいくつもの継電器(リレー)が列車の在線状況やポイントの開通方向、踏切の開閉状態、他の信号てこの状態をオンとオフの信号として出力している。
最終的に安全であれば信号機に進行現示を出すリレーを動作させる。連動装置は駅の頭脳そのものなのだ。
(ざっくりと説明してますのでツッコミはNGで笑)

 研修で扱う模擬の駅は小さいものだが、それでもタタミ1畳分くらいの大きさのリレー架と呼ばれる棚びっしりにリレーと配線を設置していくと最終的には5つ分くらいにはなっていた。
これは駅の規模に比例して大きくなり、現場配属後に検査で入ったある駅の連動装置は25mプール半分くらいのコンクリ造りの建屋いっぱいにリレー架があり、それが駅の両端に1つずつ建っていた。

複雑で膨大な数の配線を一つずつみんなで結んで完成させ、試験時にちゃんと動作した時はとても嬉しかったのを覚えている。
てこを操作するといくつものリレーがほぼ同時に動き、端子が接触する時に「バチッバチッカチッ!」と音を立てる様は見ていて飽きなかった。

電子連動

 ここまで読んだ人の中にはリレーに頼った旧時代的で巨大なこの装置はコンピュータで簡単に代替できるのではと感じると思う。
実は40〜50年くらい前からコンピュータを用いた「電子連動装置」が実用化されていて、先に話した継電連動装置は置き換えられつつある。
これによってどこのご家庭にもあるPCモニター・マウスで信号を操作できるようになった。巨大な操作盤は無くなり、多くのリレー架が並び配線でゴチャゴチャした機器室は1/4程度の広さのサーバールームのようになる。
電子連動装置は鉄道信号を専門に手がけるメーカーへ鉄道会社が設計書を出すと、駅配線をプログラムしたサーバーを搬入し信号機などの現場装置と接続するだけでとりあえず完成してしまう。もちろん切替工事やケーブルを引き込むための外構工事や接続工事に信通屋は絡むが、継電連動装置に比較すると携われる範囲は狭い。

古いものを使い続けてる?だけじゃない


ここまで読むと継電連動なんてもう使わなくていいんじゃね?って思うかもしれない。
ただどちらにも大きすぎるメリット・デメリットがあり、完全にどちらかへはならないのだ。その辺の理由の大部分はネット上の先輩諸氏やWikipedia先生に譲るとして、簡潔に言えば電子連動は
めっちゃ金がかかる、その割に寿命が短い
そこそこ利用者がいる駅の連動装置が更新の時期を迎えても積極的に電子化されないのはこのためである。
リレーや回路を部分的に更新すれば長期に渡って使える継電連動に対して、電子機器でブラックボックス化された電子連動は部分的な更新が難しい。スマホや家電が劣化するように電子機器の塊である電子連動も劣化が進む。寿命は約20〜30年と言われる。これに対して継電連動は40年と言われている。
(いちおう継電連動にも電子機器はある)
なので現在は継電と電子の良いとこ取りをしたハイブリッド連動装置なるものもあるらしい

暑い現場仕事の中で、連動装置がある建屋は機器を冷やすために常に空調が効いていて昼食や休憩でよくお世話になった。
長くなったが、僕が好きだった連動装置を簡単に紹介した。
まだまだ運転士になるまではかかりそうだ…

続く…

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