「業界を盛り上げたいと使命感が芽生えました!」アンバサダーの木村昴さんも登壇した東京おもちゃショー記者発表会/日本おもちゃ大賞授賞式レポート
取材・撮影・文:キャプテン住谷
2024年8月27日(火)、東京おもちゃショー記者発表会/日本おもちゃ大賞授賞式が行われました。この催しは、一般社団法人・日本玩具協会が主催する毎年恒例のイベント「東京おもちゃショー」の概要や業界のトレンドを紹介する場であり、また同協会が新しいおもちゃを生み出す作り手やメーカーのモチベーションアップ、それによる業界の活性化を目的として選定する「日本おもちゃ大賞」の受賞商品を発表する場となっています。この記事では、東京おもちゃショーのアンバサダーに選ばれた声優の木村昴さんも登壇した会場の模様をお届けします。
記者発表会は日本玩具協会会長・前田道裕さんによる挨拶からスタート。2024年から東京おもちゃショーの会期が8月末へと後ろ倒しになったことについて、子どもたちにとって夏休み最後の一大イベントと認知されたい目的があることや、その達成のために声優であり、アーティスト活動や有名子ども番組のMCとしても活躍する木村昴さんをアンバサダーに招いたことなどが語られました。また前田さんからは、2023年度の市場規模が前年比107.1%となり、上代(希望小売価格)ベースで1兆193億円を突破したことも発表。2022年度はカプセルトイを含めて市場規模が1兆円を超えましたが、このたび玩具業界のみの市場規模が史上初めて1兆円を超える結果となりました。
日本玩具協会 見本市委員会 専門委員の藤井大祐さんからは、2023年度の市場傾向について発表が。規模拡大の最大要因となったのは、売り上げを425億円伸ばし、2,774億円市場となったカードゲーム・トレーディングカード分野。例年業界を牽引している同分野ですが、2023年度は市場の27,2%を占める結果となりました。続けて、プラモデルとフィギュアが好調だったというホビー分野が79億円増の1,749億円をマーク。次いで、ぬいぐるみ分野が67億円を伸ばし、391億円市場となったことが語られました。商品ジャンルとしての市場の伸び率では、1位がハイテク系トレンドトイ(121.5%)、2位がぬいぐるみ(120.7%)、3位がカードゲーム・トレーディングカード(118.1 %)とのこと。総じて業界を牽引しているのはキダルト(キッズとアダルトを足した造語で、子ども心を持った大人のこと)層をターゲットにした分野であり、インバウンド需要としても人気のカテゴリーだったことが要因として挙げられました。
業界のトレンドについてひと通り発表されたところで、東京おもちゃショーのアンバサダー・木村昴さんを呼び込んだトークパートも実施。おもちゃショーの見どころについて問われると「大人も一緒に楽しめるデジタルスタンプラリーなどもあって、お子様の付き添いとしてだけでなく、大人も楽しめるのがいいなと思いました。僕、“元・子ども”なので(笑)おもちゃは大好きだったんですが、大人になってからその偉大さに気づくことも多くて。(会場に出展されるおもちゃを)大人の力を使って買い占めたいくらい、その全部に(作り手の)思いがこもっているのが素晴らしいですよね」と木村さん。またおもちゃ大賞が贈られる各部門について、特に気になるものは?という質問に対しては「迷いますよね。こんなに部門が分かれているのは(アンバサダーに就任してから)初めて知ったんですけど、やっぱりキダルト部門は気になります。男の子だったからアクション部門も。デジタル部門なんて、ちょっとおじさんみたいなこと言っちゃいますけど、僕が子どもの時にはなかった(笑)」と終始にこやかにトーク。最後はおもちゃショーについて「夏休みの思い出作りにぴったりなショーだと思いますし、僕自身の夏の締めくくりとして楽しみにしています。みなさんと一緒に盛り上げて、たくさんの子どもたちにとって忘れられないイベントにしたいです!」と意気込みを語りました。
発表会のラストでは、登壇者に対して質疑応答ができる時間もありました。
Q.市場規模が伸びているが、商品自体も値上がりしている。特にキダルト向け商品に顕著と思われるが、単価はどの程度上がっているか?
A.日本玩具協会として詳細を調査しているわけではないが、5%ほど客単価が伸びているという報告もある。しかし、それがハイターゲット分野特有の数字であるかは不明。
Q.インバウンド需要が占める割合、また海外輸出での売り上げは?
A.正式に業界として規模を調べたことはないが、昨年、都市部の玩具店では売り上げの半分ほどまでになっているという報告がある。業界全体としては、およそ20%がインバウンド需要ではないかと思われる。2024年度はさらに伸びていることが予想される。また海外輸出については各メーカーが展開しており伸びているが、詳細は捉えきれていない。
Q.例年市場を牽引しているTCG(トレーディングカードゲーム)分野だが、今年は新商品の供給、中古品の価格も比較的安定している。一説には中国市場のバブルが弾けたことが理由ではないかとの説もあるが、どのように捉えているか?
A.TCGは投機目的による需要があったが、各メーカー対策の甲斐もあって潤沢に流通するようになった。変動が和らぎ、本来の正常な形に戻るものと思われるが、市場規模としては今年も順調に推移すると見ている。ただ、例年のような伸び幅にはならないであろうとも懸念している。
Q.ぬいぐるみ分野が特に伸びている点が意外だが、その詳細についてお聞きしたい。
A.ポケモンやスーパーマリオ、ピクミン、スタジオジブリなどのキャラクターぬいぐるみが特に伸びた。推し活としての需要や、インバウンド客のお土産としての需要が高まった。
ここからは、46社から427商品のエントリーがあり、第3次までの審査を経て選定された日本おもちゃ大賞の授与式へと移ります。
知育・教育・教科学習に役立つ玩具に贈られるエデュケーショナル部門では、セガ フェイブの「ePICO たいけん100エディション」が受賞。表彰状と盾を受け取った代表者は「ピコで遊んでいた私が、当時ピコを作っていた人たちと一緒にePICOを作ることができたのは貴重な体験でした。今の子どもたちに、新しい可能性や魅力を伝えられた結果なのかなと思います。ePICOはプラットフォーム型玩具なので、これからも進化していきます」とコメント。
五感を育む基礎的な玩具に贈られるベーシック部門では、メガハウスの「シールランドリーナ ちいかわ」が受賞。代表者は「定番のシール作りに加えて、何か斬新な方法での遊びを実現できないかと考えました。自分で書いたイラストや文字もシールにできるので、友達や親子とのコミュニケーションに使ってもらえると嬉しい」とコメントしました。
アクティブに遊べる玩具に贈られるアクション部門では、タカラトミーの「トミカ 2つのコースをいったりきたり!ツインコースやまみちドライブ」が受賞。代表者は「まさか2年連続で(大賞を)いただけるとは。走行するコースを、別売の高速道路と連結させることが新しい開発面でのチャレンジでした」とコメント。
キャラクターIPを題材にした玩具に贈られるキャラクター部門では、バンダイの「DX変身ベルトガヴ」が受賞。担当者は「僕自身仮面ライダーが子どもの頃から大好きで、変身ベルトで何度も遊んでいた。今の子どもたちにも夢中になって遊んでもらいたいという思いで、チーム一丸で開発してきました」とコメント。
ボードゲームやアクションゲーム、パズルなどに贈られるゲーム&パズル部門では、メガハウスの「ルービックキューブパネルズ」が受賞。代表者は「ルービックキューブは今ブームが来ていて、発売当初以来の売り上げとなっています。パネルをつけることで難しくなるというコンセプトは、世界大会常連の達人に遊んでもらったところ“初めて(キューブを)揃えた時の感じを思い出した”と言ってもらいました。ルービックキューブ50周年、またルービックキューブを開発したルビク・エルネーさんが80歳という記念イヤーに受賞できて嬉しいです」とコメント。
デジタルに特化した玩具に贈られるデジタル部門では、バンダイの「ちいかわフォン」が受賞。代表者は「大人のスマホには真似できない、おもちゃならではの要素はないかと考えました。耳を付け替えるギミックや、そのカチッと感、どうやったらちいかわたちが活き活きとして見えるかなどにこだわっています。心理テストやゲームなどコンテンツもりだくさんなので、大人の方にも満足してもらえると思います」とコメント。
雑貨、コレクタブルトイ、サプライズトイなどに贈られるバラエティ部門では、セガ フェイブの「#バズゅCam むてきパープル/ときめきミント」が受賞。代表者は「お子様でも簡単に、SNSのような編集ができる。その簡単にできることにこだわり、60種類以上のテンプレートを用意しています。ワンタッチ、ツータッチでインフルエンサー気分を味わえます」とコメント。
主に大人をターゲットにした商品に贈られるキダルト部門では、タカラトミーの「リカちゃん フォトジェニックリカ シリーズ(ダリア/デイジー/アイリス)」が受賞。代表者は「(昔リカちゃんで遊んでいた)大人たちに、リカちゃんに再会してほしいという思いで、可動式のボディを開発しました」とコメント。
目や耳の不自由な子もそうでない子も、障がいの有無に関わらず楽しく遊べるよう「配慮」が施された玩具に贈られる共遊玩具部門では、アガツマの「きって!ほって!ぬいて!とれたてアンパンマン農園」が受賞。代表者は「野菜の収穫を遊びながら学べることがテーマでした。どうしたらお子様に繰り返し遊んでもらえるか試行錯誤した点を評価していただけたのかなと思います」とコメント。
全9部門の大賞が発表されたところで、コメントを求められた木村さんは「(自分が出演する)番組で紹介させてもらって「これ知ってる!」となったものや、きっとこれから紹介させていただくことになるものもありました。この場に来れて良かったと思ったのは、作り手の思いを知ることができたこと。業界全体を盛り上げられたらいいなという使命感がいま芽生えました!」と決意を新たにした様子です。
その後は、2023年度の国内玩具市場を牽引し売場に大きく貢献した玩具に贈られるヒット・セールス賞、特に玩具業界に貢献し、顕彰に値する玩具に贈られる特別賞、日本発で、海外でも大きな成功を収めた玩具に贈られるグローバル・サクセス賞も発表。
ヒット・セールス賞に輝いたタカラトミーの「カメラでリンク!ポケモン図鑑 スマホロトム」では、代表者が「シリーズで初めてカメラを搭載したアイテムで、色でポケモンを探す遊びを考えました。アニメと同じようにポケモンと出会える体験が受け入れられたのかなと思います」とコメント。
特別賞は、タカラトミーアーツの「ガチャ」、バンダイの「ガシャポン」がダブル受賞。「カプセルトイが日本に上陸して60周年。バンダイさんや各メーカーさんと、手のひらサイズのサプライズを届けられるように業界を盛り上げたいです(タカラトミーアーツ代表者)」「メンバー一同、光栄に思っています。昨今、カプセルトイ市場は拡大を続け、大きな玩具の間口となっています。私たちの製品を愛してくれてるみなさま、業界や基礎を作ってくれた先輩に感謝しています(バンダイ代表者)」とそれぞれにコメント。
グローバル・サクセス賞は、ハナヤマの「キャストパズル~はずる シリーズ」が受賞。代表者は「おもちゃではあるが、金属製の鋳造パズル。近年ではIPとのコラボもしていて、昨年の『ゼルダ』とのコラボは世界中で好評でした。説明不要で、国を問わない強みを活かしていきたいです」とコメント。
すべての受賞商品を発表し、最後は日本おもちゃ大賞2024 審査委員長の北原照久さんによる閉会の挨拶で終了となりました。