コント:『サボった太陽』
《登場人物》
・太陽
・海
・花
・月
・LED
【あらすじ】
ある日、太陽が仕事をさぼった。朝が来なくて困る海、花、月たち。
「どうだ俺の存在の大きさが分かったか!」といい気になる太陽。
しかし月たちは太陽の代役としてLEDを連れて来る。
海と花、走って来る。
海「おい、どうなってんだよいつまでたっても夜が明けないじゃないか」
花「うん、おかしいわね、もう朝の10時なのに、何やってんのかしら太陽
は」
海「うちのプランクトンたちから光合成出来ないってクレームきてんだよ」
花「うちも朝顔たちが花開かないって朝から電話鳴りっぱなしよ」
海「ああ、まったくもー、何やってんだよ太陽の奴は」
月がやって来る(胸に「月」の文字)。
月「どう? 太陽と連絡ついた?」
海「ああ、お月さん、ごめんな、寝てるとこ起こしちゃって、それが何回電
話しても出ねーんだよ、太陽の奴」
花「(スマホを見て)ラインも未読のまま」
月「そう、困ったわねー」
花「こんなこと地球誕生以来初めてのことよ」
海「まったく何処行っちゃんたんだよ太陽は」
下手にスポット。
バー。
太陽、こっそり海たちの様子を見ている。
太陽「(笑)ホラ、見てよマスター、みんな困ってる困ってる(笑)、いい
気味だよ、え? (バーのカウンターに座り)ああ、いいのいいの、だっ
て俺さ、45億年もズーッと休まず働いてきたんだよ、それなのにさ、だ
ーれも俺に感謝してねーんだもん、いや、してないって、あいつら朝にな
ったら太陽が昇るのが当たり前だと思ってんだよ、だからさ、一度俺がい
なかったらどうなるかって言うのを味合わせてやんないとさ」
太陽、もう一度海たちの様子を覗く。
太陽「(笑)ホラ、これであいつらようやく俺の存在がいかに大切か分かる
でしょ、(両手を合わせ)『太陽、ごめんね、あなたがどれだけ大切かよ
うやくわかったわ』、(土下座して)『太陽、この通りだ戻って来てく
れ』なんて言っちゃってさ、そしたら俺がジャーンって現れてじゃあしょ
うがねーなーって言って光をバーンって照らしてさ、そしたらみんなが
『太陽ありがとう』、『これからはあなたの言うこと何でも聞くわ』なん
て言っちゃってさ(笑)ねえ、マスター、最高じゃない、え? そんな上
手いこといくかって? 大丈夫大丈夫、まあ、もうちょっとだけ困らして
やろうか、じゃあ、もう一杯きついやつ(グラスを差し出し)、あーもー
大丈夫だから酔ってないって」
暗転。
明転。
海と花、立って話している。
太陽、隅でこっそりその様子を見ている。
海「ああ、もうこれじゃ、海の生態系が崩れちゃうよ」
花「このままじゃ地球の花が全部枯れちゃうわ」
月、やって来る。
海「あ、お月さん、太陽と連絡取れた?」
月「ううん、でもね、代わりにいい人連れて来たから」
海・花「代わりに?」
月「うん、(下手に向かい)おいでー」
LED、やって来る。
海「この人は?」
月「LEDさん」
花「LED?」
LED「初めましてLEDです!」
月「この人凄いのよ、ちょっと見てて」
月、LEDの胸のスイッチを押す。
舞台が明るくなる。
花「うわー凄い!」
海「明るくなった!」
月「でしょー」
花「(自分のお腹を見て)うわっ、見て! 枯れかけてたお花たちが咲き始
めた」
海「(自分のお腹を見て)こっちもプランクトンたちが光合成始めたよ」
月「しかも、明るいだけじゃないのよ、ホラ見て(LEDの腹のつまみをひ
ねる)」
照明、夕焼け色になったり明るくなったり。
月「ね、時間に合わせて明るさが変わるのよ」
海「お前さん、すげーな」
LED「いやー」
花「良かった、これならもう太陽がいなくても大丈夫ね」
LED「はい、お任せください」
海「この光の方が優しくていい感じだよ」
LED「ありがとうございます!」
花「これからよろしくね」
LED「はい!」
隅でイライラしながら話を聞いていた太陽、我慢出来ずに飛び出して来
る。
太陽「ちょっと待てよ!」
海・花・月「太陽!」
太陽「何だよお前ら、もう俺は必要ないのかよ!」
月「太陽あんた一体何処行ってたのよ!」
花「みんな心配してたのよ」
太陽「ウソつけ! 俺がいなくなってどんなに困ってるかと思ったら、もう
代わりの奴見つけてんじゃねーか!」
花「いや、それは……」
月「あんたが時間通り出勤しないのが悪いんでしょ」
太陽「あ? 俺はこの地球が出来てから46億年ずーっと無遅刻無欠勤でや
ってきたんだぞ、一日くらいすっぽかしたっていいじゃねーか」
月「休んでないのは私たちだって一緒よ、ねー」
海・花「(頷く)」
海「大体お前は仕事にムラがあり過ぎんだよ、自分の調子がいい時だけガン
ガン照らしやがってよ、今年の夏なんてこっちは暑くて死にそうだよ」
花「ホントそう、そのくせ冬はやる気なくてこっちは凍えて死んじゃいそう
になるし」
月「ねー、それに比べるとLEDさんは、優秀よねー、毎日しっかり安定し
た仕事してくれるもの」
太陽「分かったよ、じゃあ、勝手にやれよお前らで、俺は出てくからな」
月「はい、どーぞご自由に」
海「よし、じゃあ、今日も一日頑張るぞ」
花「さあ、仕事仕事」
太陽、下手へ去りかけて立ち止まり、
太陽「引き留めるなら今だぞ」
月「(太陽を無視して)じゃあ、私は夜まで寝てこようかな」
花「そうだよね、寝てるとこ起しちゃったもんね」
海「あとは俺たちでやっとくから」
太陽「ホントに行っちゃうぞ」
月「LEDさん、よろしくね(上手に去る)」
LED「はい、かしこまりました!」
太陽「ホントに行くからな」
海・花「(無視してそれぞれの配置につく)」
太陽、下手に去り、また戻って来て、
太陽「ホントに行っちゃうからな」
海・花「(無視)」
暗転。
明転。
海、花、月、くつろいでる。
その後ろで、LED、みんなを照らしている。
海「いやー快適だな」
花「平和ねー」
月「いい気持ち」
海「ホントよー、あのあれ、なんつったっけ? た、太陽? あ、あいつも
ういらないんじゃねーか?」
花「そりゃいい過ぎよー、でも、いらないかもね(笑)」
月「ホントそうよ、だってLEDさん毎日凄いいい仕事してくれるんだもん
ねー」
海「ありがとな、LED」
LED「いえ、こちらこそ!」
と、突然、警報音が鳴る。
花「え、何? この音?」
海「緊急警報だ!」
月「(スマホを見て)大変、彗星が接近して来るわ、このままだと地球にぶ
つかる」
花「ウソ、どうしよう」
海「とにかくここはみんなで力を合わせて何とかしよう」
月「うん、じゃあ、とりあえず地球にあるもん全部集めてバリケード作ろ
う」
花・海「うん!」
LED「す、すいません、僕は逃げます(逃げ出す)」
花「ちょっと、あんたどこ行くのよ」
海「何だよあいつ」
月「薄情な奴ね」
太陽走って来る。
太陽「みんな!」
海・花・月「太陽!」
太陽「大丈夫か!?」
月「今、みんなでバリケード作ろうとしてたとこなの」
太陽「そんなんで防げるわけねーだろ」
海「じゃあ、どうすりゃいいんだよ」
太陽「大丈夫、ここは俺が何とかする」
花「何とかするって?」
太陽「俺がこの身体で彗星を受けとめる」
月「そんな無茶な」
花「そんなことしたら太陽、あなたの命が」
太陽「大丈夫だ俺の熱で溶かしてみせるさ、さあ、みんな俺の後ろに隠れ
て」
海・花・月「(頷く)」
海、花、月、太陽の後ろに隠れる。
太陽、彗星に向かって戦うポーズ。
SE(彗星接近の音)。
太陽「ぬおー(叫ぶ)」
海「頑張れ太陽!」
花「太陽、お願い! 頑張って!」
太陽「ぬおー(叫ぶ)」
SE(彗星接近の音、爆発音)。
暗転。
明転。
太陽、倒れている。
海、花、月、太陽に駆け寄る。
花「太陽! 大丈夫!?」
海・月「太陽!」
太陽「あ、ああ(ゆっくり起き上がり)彗星は?」
月「大丈夫よ、あんたのおかげで衝突回避出来たわ」
花「ありがとう太陽!」
海「ありがとう!」
太陽「ああ、みんな大丈夫か?」
海・花「(頷く)」
太陽「あの、LEDとかいう奴は?」
月「彗星が接近って警告音聞いたら逃げ出しちゃったわ」
花「みっともない」
海「ああ、やっぱり俺たちにはお前が必要だ」
花「これからもずっと地球をよろしくね」
太陽「ああ、俺、頑張るよ」
海・花・月「(頷く)」
暗転。
明転。
太陽、海、花、ニコニコしながら立ってる。
海「おう、太陽、今日もヨロシクな!」
花「太陽、今日もありがとね!」
太陽「ああ、こちらこそヨロシク!」
下手、月が現れる。
月、スマホを出して電話。
上手、LEDが現れる。
LED、電話をとる。
月「ああ、もしもし、月です。先日はありがうございました。これでチーム
ワークがすっかり良くなりました」
LED「ああ、チームワークを良くするには危機を演出するのが一番だから
ね」
月「さすがです、神様」
LED「ああ、その辺を調整するのが私の役割だから」
LED、上着を脱ぐと胸に「神」の文字が現れる。
月「ではまた」
LED「ああ」
月、LED、電話を切ってそれぞれ下手、上手に去る。
太陽「さあ、みんな今日も一日頑張るぞ!」
海・花「おう!」
《完》