20210426-28 わからないからおもしろい
橋本治『「原っぱ」という社会がほしい』に収容された遺稿『「近未来」としての平成』を読み終わる。橋本さんは「一を聞いて百を知る」タイプの人だと再認識。このタイプの人にはエビデンスなんかあまり意味がない。「なぜかわかってしまう」タイプの人なのだ。
赤の他人がひしめき合って、相互にはなんの関係もないくせに妙に濃密(インティメイト)なネット空間で、ストレートに自分丸出しであるような「苦悩」を表明したら嫌われる。みんなが「苦悩を隠して」ではなく、苦悩とは無縁に明るく振る舞っているようなネット空間で「苦悩」を表明したら「重い」と嫌われる。「そんなことよそでやってくれよ」である。
そんなタイプが説明をなんとか試みようとしているのか、思考の道筋をそのまま書いてしまうとことがある。やたら迂回が多い。そのことをたびたび文章中に本人が言及している。文章自体は難しくないが、結局何が言いたいのかと思わせてしまうところがある。言っていることがわからなくてもストレスを感じない人にお勧めする。もちろん、儂はわからなくても構わないタイプなので全然大丈夫。むしろわからないからおもしろい。
読みながら伊藤計劃『ハーモニー』の世界を思った。これは引用部分とは関係ない。やさしさが人をじわじわと殺していく『ハーモニー』の世界は気づかぬうちに現出しているのではないか。
100年後の、この世界の行く末を見てみたいと思うが、残念ながら叶わぬ夢だ。
我ながら支離滅裂なことを書いたが、これは日記なのだから良いのだ。
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仕事帰りに書店に寄って、前に空振りをした、いしいしんじ『げんじものがたり』を買う。源氏物語を現代京言葉で抄訳したもので、「きりつぼ」はこんな感じで始まる。楽しみ。
どちらの帝さまの、頃やったやろなあ。
女御やら、更衣やら……ぎょうさんいたはるお妃はんのなかでも、そんな、とりたててたいしたご身分でもあらへんのに、えらい、とくべつなご寵愛をうけはった、更衣はんがいたはってねえ。
宮中で、フン、うちがいちばんに決まったあるやん、て、はなっから思いこんではった女御はんらみんな、チョーやっかんで、邪魔もん扱いしはるん、おんなしくらいのご身分や、それより下の更衣はんらにしても、ずんずんあからさまに、いらいらを募らせはってね。
伊藤洋一『ブレイクセルフ』をKindleで買ったが、フィックス型だったことにがっかりした。マークをつけることができないじゃないか。なんでリフローにしなかったのか。コストなんてそんなに変わるもんでもなかろうに。
他、高橋源一郎『「読む」ってどんなこと?』も購入。