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《分割版#1》ニンジャラクシー・ウォーズ【ゴッデス・セイブ・ザ・マーチャン】

◆はじめての方へ&総合目次◆
◆全セクション版◆

この宇宙に人類が生き続ける限り、決して忘れてはならない事がある。
本テキストは70'sスペースオペラニンジャ特撮TVショウ「宇宙からのメッセージ 銀河大戦」とサイバーパンクニンジャアクション小説「ニンジャスレイヤー」のマッシュアップ二次創作であり、(株)東映、石ノ森章太郎=センセイ、ボンド&モーゼズ=サン、ほんやくチーム、ダイハードテイルズとは実際無関係という事だ! ただしリスペクトはある!

◆#1◆

 第15太陽系・第1惑星シータ周辺宙域を、宇宙オーロラの神秘的な輝きが十数年ぶりに覆った夜。シータ洋上に浮かぶデリ島は、時ならぬ賑わいに包まれていた。

 トントコトトン、トントトン。トントコトトン、トントトン。ギーチャカギーチャカギーチャカギー……地球人がタイコを叩き、宇宙猿人デーラ人がギロを掻き鳴らす。天空を彩るオーロラの下で、宇宙民族衣装を纏う人々は朗らかに笑いつつ、輪になってボン・ダンスめいたステップを踏んだ。

 先住民族であるデーラ人の口伝によれば、シータにおいて最初に地球からの移民船団を受け入れた地こそ、このデリ島なのだという。移民達は程なくして各地へ拡散していったが、宇宙猿人のオーガニックなライフスタイルに共感した一部の人々は島に残り、今なお数世代前と変わらぬ暮らしを続けているのだった。

 円形広場の中心に立ち、慈愛の表情で人々を見下ろす大理石像は、デーラ人が信仰する地母神マニヨル。宇宙猿人の神でありながら、なぜかその美貌には地球系人類の面影があった。「デリ・マノス・マニヨル!」「デリ・マノス・マニヨル!」島民は平伏し、女神を讃えるチャントを口々に唱えた。

「聖なるオーロラが戻ってきた! マニヨル様は我等を見捨ててはおらなんだ!」「どうかいま一度のご加護を!」「「「デリ・マノス・マニヨル!」」」人々が叫び、タイコのリズムとステップが激しさを増す。トントコトントコトントコトントコ……人々の宗教的興奮が頂点に達しようとした、その時。

 BRATATATATA! 銃声が夜空を裂いた。島民は水を打ったように静まり、威嚇射撃の主を恐る恐る振り返った。ミリタリー装束とフルフェイスメンポに身を固めた兵士の一団が、宇宙マシンガンの銃口を天に向けている。彼らはニンジャトルーパー。第15太陽系を支配下に置くガバナス帝国の尖兵だ。

 ザッ! 隊列が左右に割れ、宇宙ニンジャの下士官が歩み出た。頭部を紫の頭巾で覆ってはいるが、その下の爬虫類めいた異星人相は隠しようもない。「アール隊長だ」「なぜ監督官が祭りの場に」囁き合う群衆。「フン」下士官は鼻を鳴らした。「アール隊長か……その名前で俺を呼ぶのも最後になるだろう」

「なぜなら! 俺はこれより貴様らのくだらん信仰を根絶し! その功で新たな地位とニンジャネームを得るからだ!」「「「アイエッ⁉」」」人々の間に動揺が走る。宇宙ニンジャは尊大なオジギと共に、下賜内定済みの新たな名でアイサツした。「ドーモ! ニンジャオフィサー・ヘビビトです!」

「5人以上の集会は騒乱罪にあたると再三警告しておいた筈だぞ! なのに何だこの有様は!」ヘビビトは広場に集う群衆を威圧的に見渡した。「斯様な反逆的行為を助長する宗教など、ガバナス治世下に存在してはならんのだ!」「そんなの関係ない!」地球人の青年が叫んだ。

「シータの空にオーロラ輝く時、マニヨルの神来たれり! 七日七晩の祭りでお迎えするのが古来からの……」BRATATATA!「アイエエエ!?」再度の威嚇射撃に青年が腰を抜かす。「もはや愚民の声に貸す耳はない! やれ!」ヘビビトの号令一下、「「「イヤーッ!」」」トルーパー達がフックロープを投擲!

 数十本のロープが石像をがんじがらめに縛り上げた。「セーノ!」「「「ヨイショ! ヨイショ!」」」呼吸を合わせてロープを引くトルーパー。マニヨル像はたちまちグラグラと揺れ始めた。ナムサン! 巨大な石像といえど、統制の取れた集団宇宙ニンジャ筋力の前にはひとたまりもない!

「「「ヨイショ! ヨイショ!」」」「アイエエエ!」「ヤメローッ!」人々の叫びもむなしく、KRAAAASH! 前のめりに倒れた女神は広場の石畳に激突し、木っ端微塵に砕け散った。「ハハハハハ! 神は死んだ!」哄笑するヘビビト。「これで貴様らも、帝国市民の末席を汚す栄誉を得た訳だ!」

「フ……フザケルナ!」先程の青年が震えながら言い返した。「これしきの事で、俺達からマニヨル様を取り上げられると思うのか!」「そうとも! 見ろ!」壮年の男が夜空を指差す。「オーロラは消えていない! あれは恵みの光なのだ!」「「デリ・マノス・マニヨル!」」「「「デリ・マノス・マニヨル!」」」

 人々は喉も裂けよとチャントを唱え続けた。「「「ウオオーッ!」」」「「「WRAAAGH!」」」地球人が叫び、デーラ人が咆える。噴火寸前のマグマめいて高まる反抗の機運に気圧され、「ダ……ダマレーッ!」ヘビビトが絶叫した。真っ赤に裂けた口中、牙の間に小さな稲妻が走る。

 ヘビビトは腰に下げた鞭を掴んだ……否! それは単なる鞭にあらず、宇宙蛇を遺伝子改造した生体ウィップだ!「イイイイイ……」ヘビビトの体内発電器官が生み出した電流を、生ける鞭が生体電磁誘導で伝達!「イイイヤアアーーッ!」BZZZTT!「グワーッ!」鞭打たれた青年が感電痙攣!

「イヤッ! イヤーッ!」ヘビビトは怒りのままにバイオ電磁鞭を振るった。「グワーッ!」「ARRRGH!」BZZZT! BZZZZTT!「「「アイエエエエ!」」」逃げ惑う群衆!「調教してやる!」ヘビビトの双眸が爛々と輝いた。「貴様らが崇めるべきは神ではない! ロクセイア皇帝陛下の威光だーッ!」

「クソッ、もう我慢できない!」広場に程近い岩陰で、端正な顔立ちの青年が腰を浮かせた。「やめな、ハヤト=サン」ジュー・ウェア風ジャケットの男が肩を掴んで引き戻す。「せっかく隠れたのにノコノコ出て行く奴があるか」「でも!」「今ここでコトを構えてみろ、巻き添えで何人死ぬかわからんぞ」

「戻ったぜ、リュウよ」身長7フィート超の屈強なデーラ人が暗がりから姿を現した。「おう。どうだ相棒、例の古いダチは」ジュー・ウェア男が声をかける。「ダメだ、広場のどこにもおらん。ひょっとしてパオの奴、もうガバナスの連中に……!」「バルー=サン……」焦燥する宇宙猿人をハヤト青年が気遣う。

「早合点すンなよ。たまたま祭りに来てなかっただけさ」「パオに限ってそれはねえ! アイツは島一番の信心者でよォ、オーロラが出たとなりゃ、真っ先に音頭を取って……ウウッ」「泣くな泣くな」リュウはバルーの背中を叩いた。「とにかくこの場は退くぞ。ハヤト=サンも堪えろ。いいな」「……ハイ」

 リュウ、ハヤト、バルー。戦闘宇宙船リアベ号を駆り、邪悪なるガバナス帝国と戦い続けている宇宙の男達は、しめやかに闇の中へと退却した。リュウは去り際に振り返り、狂ったように人々を鞭打つヘビビトを見やった。その目がカタナめいて細まる。「……島を出る前に、あのクソ野郎を始末せにゃならんな」

 時の流れに取り残されたようなデリ島の中にあって、高台に建つその家は一種異様なアトモスフィアを放っていた。宇宙マネキネコ金張りレリーフ、モルタル製メダイヨン、模造ウダツ・ピラーなどの装飾品が、粗末な木造小屋をけばけばしく飾り立てている。その有様は滑稽を通り越し、グロテスクですらあった。

「クソッ! やっぱりダメか」スキンヘッドに口髭の男がペンを放り投げ、狭い室内の大半を占める貴族めいた執務机に突っ伏した。机上の帳簿には減少する月次利益の数字と、急下降の折れ線グラフ。「占領下で取引先は減る一方だ。検閲のせいで荷動きも鈍い……このままじゃ早晩、貧乏暮らしに逆戻りだ」

「いよいよアレに手を出す時が来たか」やがて男は顔を上げ、自らに言い聞かせるように呟いた。「今更何をためらう、パオ……お前にはもう、恐れるものなんかない筈だぜ……!」その時。ドンドン! ドンドン!「アイエッ!?」玄関のドアを激しく叩く音に、男は飛び上がった。「アッハイ! 只今参ります!」

「ドーモ、夜分遅くご苦労様です!」扉の向こうに愛想笑いしつつ、パオは何重もの宇宙南京錠をガチャガチャと開けた。「お待ちしておりました! 実は折り入って重要なお話が……アイエッ!?」立ち竦むパオ。戸口に立つのは完全に予想外の人物だったのだ。「WRAHAHAHA!」

「生きてたかパオ! いやァ無事で良かった!」7フィート超の宇宙猿人が呵々と笑いながらパオを抱きしめた。「バルー……お前バルーか!」パオは身をもぎ離して破顔した。「この野郎! お前こそとっくに野垂れ死んだと思ってたぜ!」「うるせえ! WRAHAHAHA!」「ハハハハハ!」

 バルーがデリ島で過ごした期間は三年あまり。退屈な日常に耐えかねて故郷の村を飛び出したものの、外界は彼の想像以上に過酷だった。下層労働者としてシータ各地を転々とする生活は、しばしば雇用主との暴力的トラブルに発展し……そしてある日、ついに彼の鉄拳は一人のスカム経営者を死に至らしめた。

 不幸にしてその経営者は、給金よりミカジメ・フィーの支払いに余念がない男だった。ケツモチ宇宙ヤクザに追われたバルーは逃亡の果て、俗世と隔絶したこの島へ流れついた。野良犬めいて村落の片隅に住み着いた余所者に、勇気を奮って最初に接触したのが、島民相手の商売を細々と営んでいたパオであった。

 彼と意気投合したのをきっかけに、他の島民との交流も少しずつ進んだ(人々の態度は最後まで、奥ゆかしく余所者との距離を置いたものではあったが)。かくしてデリ島での日々は、バルーの疲れ果てた心身を癒し、マニヨル神への信仰を深める良き日々となったのである……。

「で、そちらの御仁達は? 今の仕事仲間かい」パオは一行を室内へ招き入れた。「ドーモ、はじめまして。ゲン・ハヤトです」「ドーモ、リュウです。航行中に例のオーロラを見た相棒が、古巣の祭りに顔を出すって聞かなくてね」「そうだ……それだ!」バルーの表情が険しさを取り戻す。

「えらいこったぜ、パオ! ガバナスの連中が祭りに乱入してマニヨル様の御神体を!」「アー、ウン……らしいな」パオは曖昧に答えながら、宇宙ワインのコルク栓を開けた。「そんな事より、久々の再会だ。盛大に飲もうや。こいつはアナリス産の年代物だぜ」ボトルを掲げる。

「なあ、パオ……お前ちと様子がおかしかねえか」バルーが眉根を寄せた。「第一、いつの間にこんなカネモチになったんだい」「島のしがない食料品屋がか?」パオはブラインドを開け、高台の麓の道を見下ろした。祝祭を蹂躙されて悄然と帰路につく人々は、まるで葬列のようだ。

「何も特別な事はしとらん。島で採れた作物を安値で仕入れて、相場通りの価格で売り捌いただけよ……掟にちょいと目を瞑ってな」パオはニヤリと笑った。「要するに、島のバカ共があんなカラ騒ぎで浪費するエネルギーを、俺はもっと有益な使い道につぎ込んで来たって事さ」「なッ……!」バルーが目を剥いた。

「なんて言い草だ貴様! 久し振りに帰ってみりゃ、島の皆は相も変わらぬ貧乏暮らしじゃねえか! 少しは儲けを分かち合ったらどうなんだ!」「分かち合う? 冗談はよしてくれ」パオは吐き捨てるように答えた。「商人と泥棒の区別もつかん連中が、俺からカネを受け取ると思うか?」

「そりゃ受け取らんだろうよ、これだけ贅沢三昧してりゃあな!」バルーは高級品まみれの室内を指し示した。「富を貪る者はジゴクに堕ちるべし。それがマニヨル様の教えだろうが!」「何百年前の教えだ! そんなカビの生えたお説教が現代資本主義社会に通用するか!」パオが言い返す。

「利益を出して何が悪い! 島の外じゃ当たり前の事だ。お前もそうやってメシを食ってるんじゃないのか!」「う……うるせえ! WRAAAGH!」「シッ」言い争う二人をリュウが遮った。「取り込み中悪いがな。見ろよ」彼が親指で示す窓の外、接近するヘッドライトはガバナス軍用装甲車のそれだ。

「オイオイ! まさかアイツら、ここに来るんじゃなかろうな」バルーが慌てる。「何かまずい事でも?」「なァに、ちと気が進まねェだけさ」訝しむパオに答えながら、リュウは仲間達に目配せした。「一旦身を隠そう」ハヤトが頷く。「GRRRR」バルーは不承不承に唸った。

「ガバナスのどちら様がお越しか知らんが、俺達の事は内密に頼むぜ。アンタだって面倒に巻き込まれたかねェだろ」「何だって? そりゃ一体どういう……」パオの問いに答える代わりにリュウはニヤリと笑い、音もなく物陰に滑り込んだ。どこに隠れたか、バルーとハヤトの姿も既にない。

 ドンドン! ドンドン! 玄関のドアを激しく叩く音に、再びパオは飛び上がった。「アッハイ! 只今参ります!」玄関に駆け寄り、解錠済みの扉を開ける。「ドーモ、夜分遅くご苦労様です」「……」苦い顔で戸口に立つのは本来の予定にあった訪問者……トルーパーを引き連れた爬虫人類宇宙ニンジャだ。

「お待ちしておりました、アール隊……ヘビビト=サン。実は折り入って重要なお話が」「……」揉み手するパオを無視して、宇宙ニンジャはずかずかと入室した。追いすがるパオ。「そういえば今日は祭りの臨検でしたな。首尾は如何で……」その瞬間。「ダマラッシェー!」ヘビビトが真っ赤な口を開いて叫んだ。

「忌々しい未開人どもめ! イイイヤアアーーーッ!」再燃した怒りにまかせて、へビビトは腰の生体ウィップを振り上げた。「アイエッ!?」咄嗟に身を屈めたパオの頭上をバイオ宇宙蛇が薙ぎ払う。CRAAASH! 背後の棚に並ぶ酒瓶が列ごと砕けた。「イヤーッ!」BZZZZT! BZZZZZT!

 狭い室内を電撃が荒れ狂い、渦状銀河柄の絵皿、「自由経済」の掛け軸、漆塗り書類キャビネットといった高級調度品の数々を次々と破壊していった。「イヤーッ! イヤーッ!」BZZZZZT! CRAAASH!「アイエエエ!」パオは頭を抱えて蹲った。BZZZZT! BZZZZZT! CRAAAASH!

 膨大なカネと時間を費やして築き上げた小さな城とも言うべき居宅が、宇宙ニンジャの鞭の一振りごとに砕け散り、無価値な瓦礫と化す。だが抗う術などなし。「イヤーッ! イヤーッ!」BZZZZZT! CRAAASH!「アイエエエエ!」BZZZZZT! CRAAAASH! CRAAAAASH……!

「フゥーッ、フゥーッ……」やがてヘビビトは鞭を納め、息を整えた。「……クソが!」CRAAASH! 蹴り転がされたパオが、ダンゴムシめいてビヨンボ・パーテーションの残骸に激突した。「グワーッ!」「神像まで破壊したというのに、あの狂信者どもめが! マニヨルの神は不滅と抜かしおったわ!」

「この島の教化任務に失敗すれば、俺のニンジャオフィサー昇進は帳消し!  監督官の任すら解かれかねん! そうなれば貴様も路頭に迷うのだぞ!」ヘビビトはパオに指を突きつけた。「知恵を出せ! 長年この島で商売してきた貴様だ。あの連中に信仰を捨てさせる手はないのか!」

 明かすなら今だ。「……一つだけございます」パオは肚を決めて立ち上がった。「マニヨルの神様はまだ生きております」「何だと?」ヘビビトが訝しむ。「この島には、天の岩戸に隠れて陰ながら平和を守ると伝えられる、ダイヤと金からできた真のマニヨル像……真の御神体があるのです」「初耳だぞ」

「島外には秘中の秘。私がタブーを破ったのは、ひとえにヘビビト=サンへの忠誠心ゆえにございます」パオは言葉を続けた。「信仰に迷いし者が祈りを捧げる時、岩戸を開いて御姿を現すと伝えられております……御神体がこの島にある限り、民の信仰はいささかも揺るがぬでしょう」

「その像はどこにある」「ジャングルの奥深く……とある場所に」パオは明言を避けた。正念場だ。「詳しい在処はさておき、皇帝陛下に献上なされば一層のご昇進は間違いなしかと。重要なお話とはその件でして」「フーム」ヘビビトは腕を組み、パオを睨んだ。「で? 貴様、見返りに何を求める」

「島外貿易に課せられるミカジメ・フィーを、しばしご免除頂きたく」「貴様の言葉どおりの品ならばな」踵を返すヘビビト。「明後日に検分する。現地まで案内せい」「ハハーッ!」ドゲザするパオを尻目に、爬虫人類宇宙ニンジャはトルーパーを引き連れて退出した。バタン! ドアが乱暴に閉じる。

「フゥーッ………とうとうバラしちまった」半壊したエルゴノミクスチェアに座り、パオは溜息をついた。「これで俺もポイント・オブ・ノーリターンか……ン?」不穏な気配を感じて天井を見上げる。その先には、太い梁に蹲って怒りの牙を剥くバルーの姿があった。「GRRRR……」「アイエッ!?」

「GRRRAAAGH!」バルーはパオに飛びかかり、喉首をギリギリと締め上げた。「グワーッ!」「待て待て!」「バルー=サン、落ち着いて!」物陰から飛び出したリュウとハヤトが組み付く。「止めるな! WRAAAAGH!」バルーが叫んだ。「マニヨル様を売った裏切り者め! ブッ殺してやる!」

「待てッつってンだろアホウが! イヤーッ!」リュウはバルーの頭上に跳び上がり、脳天に肘打ちを叩き込んだ。「AAARGH!」「イヤーッ!」うつ伏せに倒れた背中を片膝で抑えつける。「WRAAAAGH!」宇宙ニンジャ筋力で拘束されてなお、パオを睨むバルーの形相は凄まじい。

「まさかガバナスと通じていたなんて!」ハヤトがパオを咎めた。「この贅沢はそうやって手に入れて来たんだな!」「……ま、そういうこった。おかげで財産没収を免れて、島での商売を独占できたってワケさ」パオは開き直った口調で己のこめかみを叩いた。「ココの転換よ、ココの。文句あるか」

「あるよ! WRAAAAGH!」「グワーッ!」リュウを跳ね除けたバルーがパオの頬桁を殴りつけた。頭部が120度回転!「この馬鹿ったれが!」「よせよせよせ!」「本当に死んじゃうよ!」「AAAAARGH!」「アイエエエ!」宇宙の男達の乱闘はなおも続き、粗末な木造小屋の柱梁をギシギシと軋ませた。

【#2へ続く】


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