【PaEDH】《タボラックス》構築思想
1.パウパーEDH参入のきっかけ
6月中頃のパウパーサミット参加レポとなる記事にも記載していたが、パウパーEDH少し興味あるんだよな・・・とX(旧Twitter)で呟いたところ、会場にて知り合いから「根絶さんパウパーEDH組みましたか!?」と何度かお声掛けいただいた。しかしその時点ではまさに試合の合間を縫ってパーツを集めている最中であった。
パウパーEDHとはその名の通り統率者以外のメインボードはコモンのみで構築し、統率者はアンコモンのクリーチャーを指定するというものだ。伝説でないアンコモンのクリーチャーも統率者に指定できるというルールもあるが、コミュニティによっては通常EDH同様に伝説のみ統率者指定可としているところもあるため、通常EDHとも互換性を持たせる意味でも《ドゥームスカージ、カルダール》を検討していた。
一方、前回のデーモンストンピィの記事でも記載した通りこの頃はパウパーと並行して(というより専ら)レガシーにお熱だった時期でもある。今急いで組まずともまったりパーツを集めて遊ぶ機会が出来そうな頃に仕上げるか、と考えていた。
そうして月日は流れ、統率者マスターズのシングル予約が始まった7月下旬頃。今回デーモンの収録数が多く、中には統率者デッキ出身のため非FOILしかなかったものも新たにFOIL化している等で個人的にはペイサイフが捗るセットとなった。
神話レアやレアは一通り目を通し、折角だからアンコモンもと思って眺めていると
《希望の死、タボラックス》がアンコモン落ちしているではないか。
これまで通常のEDHとパイオニアEDHにて《タボラックス》を作成したくらいにはお気に入りの統率者の一つである。そしてアンコモン落ちしたという事はパウパーEDHの統率者に指定できる。もう少しゆっくり組み上げるつもりでいたが、パウパーEDHの方から助走をつけて猛ダッシュしてきた。このタスキを受け取ってゴールインする他選択肢は無い。
こうしてパウパーEDHへの参入を心に決めるとともに早速、いや爆速でデッキ作成へ着手する事に。
参考までに、通常EDH・パイオニアEDHそれぞれのリストはこちら。
・通常EDHデッキリスト
・パイオニアEDH版デッキリスト
2.デッキ構築
上記2つのリストに共通して、「サクりギミック+《影生まれの使徒》」によってデッキを回転させつつ《タボラックス》を成長させ、統率者ダメージも狙えるような構成にしている。(《ラザケシュ》の着地によってコンボに走る事の方が多いが)
デッキの根幹を成す(枚数的な意味でも)《影生まれの使徒》がコモンであるため、パウパーという縛りに於いても問題なく採用する事が可能だ。
続いてサクリギミックだが、こちらも単発のスペルやパーマネントに多数存在する"サクってドロー"系が軒並みコモンのため、レアリティがどうしても高めになりがちなサーチカードを積めない分こういったカードを多数搭載してデッキを回転させてゆくこととなる。
デッキの基盤はある程度固まってきたが、先述のデッキで採用しているような《使徒》で踏み倒す《ラザケシュ》《ヴィリス》《絶望の魔神》等の強力なデーモン達はパウパーEDHに存在しない。そもそもパウパーリーガルのデーモン自体母数が少なく、仮に《使徒》経由で呼び出してもそこまで影響力が大きいものもいないのが実情である。
最終的には殴り合いになる事を考慮し、その際に黒単色で最もサイズが大きい《ヘズロウ》のみを採用する事とした。仮に手札に来てしまっても出来事面によって戦闘を有利にすることも出来なくはない。
また先述2つのタボラックスにて組み込んだコンボルートも、パーツの大半がアンコモン以上であり、コモンで成立可能な枚数の少ないコンボは存在しない。何より、《使徒》が30枚以上入っている事を利用した《織端の石》《秘密の回収》といったカードも無いため、そもそも《使徒》を大量に搭載する意味自体あるのか?と思われるかもしれない。
しかしそこは広大なカードプールを持つパウパー。相応の下準備こそ必要になるが、これらに相当するカードが存在する。《残響する復活》だ。
何度も《使徒》をサクってデッキを回転させてある程度墓地に《使徒》を溜めてから打つ事になるが、ゲームが長引くほど墓地に溜まる《使徒》の枚数も増える事となり、僅か1マナ且つ1枚で10枚以上ものアドバンテージを得られる見込みもある。アンリコも真っ青の爆アド。元から青かったわ
但し10枚拾ったところでそれらを展開できるだけのマナが無ければ超過した分はクリンナップで捨てる羽目になるため意味がない。それらを展開できるだけのマナを確保できる《忌むべき者の歌》の出番だ。
先にこちらを唱えてから《残響する復活》で拾った《使徒》を全展開する事が出来る。そこから6体を差し出して《ヘズロウ》着地しつつ《タボラックス》を更に肥大化させても良いが、統率者ダメージ以外にも全員のライフを削る手段を組み込みたい。そこで白羽の矢が立ったのが《死の夜番のランパード》《略奪する破戒僧》《ファルケンラスの貴族》といったドレインおよびライフルーズ要素。
大量回収した《使徒》を《ランパード》でサクって《破戒僧》《貴族》で更にライフを削ってゆく。この3枚の内どれか2枚が揃うだけでも十分であり、1体差し出すごとに少なくとも一人に対して2点は入れられる事が可能だ。《使徒》をドレインの火種にしたり《タボラックス》が絆魂を得た状態で誘発したりサクリエンジンでドレインするといずれも単体でも一定量のライフを削る仕事が出来るため、中盤から終盤にかけての詰め要員として起用する事を決定。
デッキの凡その構成は固まってきた。但しデッキ内の個々のパーツとしてはお世辞にもボードを作れる程カードパワーが高いとは言い切れないものであるため、そういった生物も組み込みたい。ならば土地サイクリングも持つ《カザド=ドゥームのトロール》《鬱牙のやっかいもの》であれば序盤から終盤まで基本的にいつ引いても無駄にならない。後者であれば《タボラックス》へ賛助して+1/+1カウンターが3個ある状態であれば絆魂をオンにする事も可能。
サイクリング生物以外にももう少しゲームを決定づける力を持つものを入れたい。墓地に生物が溜まるという性質から《ロッテスの巨人》も最後の一人を仕留めるには十分な威力が見込める。他の対戦相手へは6/5という巨体で詰めてもよし、サクって墓地回収を噛ませてCIPを再利用しても良し。
《ロッテスの巨人》程の飛び道具性能を持たずとも、2枚目の《タボラックス》のような生物として《シルムガルの腐肉あさり》というのも存在する。濫用込みで5マナ3/4飛行・速攻がベースで、《タボラックス》と同様に自分の生物が死亡する度に+1/+1カウンターが乗り続けてゆく。重さが少々気になるところだがこれもコンセプト上欲しい1枚である。
勝ち筋についてもある程度の枚数を確保できたところで、残りの枠には除去もある程度割きたい。幸いにも軽量インスタント除去はコモンに多数存在するため、その中から範囲の広さや複数の生物へ干渉できるものを取捨選択してゆきたい。
想定される統率者の中で、デッキのコンセプト上必ず処理しなければならないものの一つに《厳格なもの、コンラッド卿》が挙げられる。これを処理できるものをまずは優先したいため、黒を対象に取れない除去は最低限に留めたい。
そこで、無条件に《コンラッド》を処理できる《夜の犠牲》《喉首狙い》の2枚を確定。更にもう1枚、デッキのコンセプト上陰鬱を達成するのが容易な《悲劇的な過ち》も決定。《コンラッド》を落とす際は少々ライフを失う事を覚悟しなければならないが、対戦相手同士で打ちあっている時に陰鬱が達成して1マナの確定除去として扱えるタイミングも存在する事が期待できる。マイナス修正であるため、族霊鎧等の破壊耐性が付与されたものを処理する事も可能。
《コンラッド》に当たる除去をより優先しても良いが、《使徒》を出したターンにサクリ台でマナを使うという動きが基本である以上、リソースがある内は基本的に毎ターンフルタップで行動しがちである事を想定し、非黒相手へピッチで妨害出来る《殺し》を採用する事に。ライフルーズを伴う除去という括りでは《大群への給餌》も範囲が広く、統率者を封じる手段として黒いデッキでは度々使われる《土牢》対策も兼ねるため採用。尚、自分が《土牢》を使うかどうかについては白や緑は特にアーティファクト・エンチャント対策が見受けられるためそこまで信頼性が高くない卓も存在すると考え、一旦見送る事に。但しそのようなディッチャを引かれるまでの間の時間稼ぎを出来ているという見方も出来るため、今後の調整次第では採用する可能性も十分ある。
単体除去ばかりではなく3人へ影響のあるもの、複数の生物を処理できるものも黒の強みの一つ。全員へ生贄を要求する《無垢の血》もあるが、今回は《肉袋の匪賊》およびパウパーにおいてはほぼ同系統の《悪魔の信奉者》2種を採用。いずれもクリーチャーであるため再利用がしやすく、後者に至ってはクレリックであるため《タボラックス》下であればドロー付の除去となる。より強力にボードをコントロールする役割とライフを詰める手段を兼ねる《黒死病》も採用。
3.デッキリスト
こうしてデッキの形が見えてきたところで残りの枠を争うカードを取捨選択し、100枚のデッキリストへ落とし込んだものがこちら。
デッキリスト内のカード群について改めて触れてゆく。
クリーチャー:47枚
・《影生まれの使徒》32枚
パウパーEDHではサーチ手段がほとんど無く、ドローを重ねることで主要パーツを引き込む事に頼る場合が多い。本デッキに於いてもそれは変わらず、サクってドローするカードを多めに採用している。そのため火種となる《使徒》はデッキを回転する上で途切れずに引き込みたい。且つ上述でも触れたように《残響する復活》で後々一気に回収できるため、通常構築とそこまで変わらない枚数を採っても良いだろうと判断。入念に一人回しを繰り返した結果、デッキを循環させる上でもこの枚数は必要だと結論付けた。
・除去内蔵生物:3枚
3マナ布告2種については前項で触れた通り。《死霊堤の司祭》は召喚酔いのラグこそあれど、クレリックであるためドロー付の《汚涜》生物。お得。
また今は抜けてしまっているが全体除去内蔵生物に《墓所のネズミ》も存在するため、これも再度検討した結果入る可能性は十分ある。
・ドレイン生物:4枚
《ランパード》《破戒僧》《ファルケンラスの貴族》3枚は前項で触れた通り。《アスフォデルの灰色商人》はサクってデッキを回すためそんなに信心は貯まらないが、コンバット環境であるため信心5くらいでも十分延命でき、《残響する復活》で一気に回収&展開した後に〆の1撃を叩き込むことも可能。
・サクリ台生物:3枚
起動コストや本体がやや重いものの、単発のスペルではないためこれらを起点にデッキを回転してゆく。全てライフゲインを伴うため《タボラックス》ドロー時のライフルーズも帳消しに出来、《破戒僧》も誘発させられる。
・サブフィニッシャー:4枚
これら4種についても前項で触れている通り。沼サイクリング2種は《魔女の小屋》をサーチして他の生物やサイクリングに使った本人を積み直す事も可能。
・デーモン枠:1体
サブフィニッシャーでもある《ヘズロウ》のみ。《使徒》のサーチ先は現状これしか採用していないが、今後の調整次第では《トラクス魔》等も入って来る可能性はある。
呪文:19枚
・ドロースペル:8枚
《大釜》はゲイン付でもあるため生物群の方に近い。それ以外は全て単発のサクって2ドローするスペルで、コモンに存在する2マナ以下のものは全て採用。サクらずとも打てる《夜の囁き》《血の署名》も一考。
・墓地回収:3枚
1枚で大量回収が見込めるものは《残響する復活》《墓の刈り取り》の2種。《死体の掘り起こし》はどちらかというとサクって2ドローするスペルに近いがこれ1枚で《アスフォデルの灰色商人》《ロッテスの巨人》を使い回せる点は優秀。
・マナ加速:2枚
後半墓地が肥えてきた頃に引きたいのは《忌むべき者の歌》だが《暗黒の儀式》も《墓の刈り取り》ストーム稼ぎ兼マナの工面に一役買ったり、重めの生物が多いためそれらを早期着地させたり、《タボラックス》2回目以降のリキャスト時の助けになる。
マナアーティファクトも黒単で採用出来るものは幾つかあり、その中でも一番使いやすい《秘儀の印鑑》をテストプレイ時に試していたが、結果的にそこまで必要性を感じなかったため今回は使い切りの上記2種スペルのみとした。
・除去枠:6枚
前項で触れた通り、《コンラッド卿》を処理できるもの・軽いマナやピッチコストで打てるもの・《土牢》を処理できるもの・全体除去とライフを詰める手段を兼ねているものという優先度で採用した。現状自分では《土牢》を採用していないものの、一人の統率者を封殺できる点は有力であるため今後採用し直す可能性はある。
土地:33枚
・冠雪の沼:30枚
《死霊堤の司祭》を採用しているため通常の《沼》ではなくこちら。
現状はデッキの再現性を高めるため多めに採用しているが、墓地利用をする相手も一定数存在する事を加味して1枚《ボジューカの沼》へ差し替えるのも一考。
・墓地回収土地:2枚
どちらも墓地の生物をトップへ積むという点は共通しているが、先述した通り沼サイクリングで探せて且つ誘発する時にはアンタップインする《魔女の小屋》の方が強い。
・強化土地:1枚
都合5マナ且つ使い切りと決して軽くは無いものの、アンタップイン土地でありながら+1/+1カウンターを2個乗せる事が出来るため《タボラックス》の絆魂をオンにしたり統率者ダメージの後押しを出来る土地。
現状のリストについては以上。今後調整して検討しているカードを入れ直したり、新規セットが登場する事によってリストを見直す機会も増える事となるだろう。特殊なフォーマットではあるが、通常のEDHとの互換性がある構築のためレベル4~5くらいの卓に持ち込んでも疎外される事は無いくらいには戦えるものとなっている。
次回の記事はEDHラザケシュ100枚解説を予定。今回のパウパーEDHはある程度カードの枚数が役割毎に固まっていたが、より細分化した役割のものが多いためより詳細について触れてゆく所存である。