ムッシュ松尾の「カルチャーコラム」vol.1

当時まだ僕が小学校4年生の時、理科(化学)の実験でゲルマニウムラジオを組み立てるという授業があった。ちょうど夏休みになるので、家に持ち帰って作った記憶が残っている。その日、僕の初めて作るゲルマニウムラジオが完成し、チャンネルをどこかの放送局に合わせていると、なにやら今まで全く聞いたことのなかった童謡でも歌謡曲でもない外国人の知らない男が歌う不思議なメロディの曲が流れてきた。完成の喜びと音が鳴った喜び以上に明らかにその曲は僕の子供心にショックを与え、その場に立ち尽くして聴き入ってしまったことを鮮明に覚えている。
その音楽とは何か!?

それは「ビートルズ!」
曲は「イエスタデイ」。それ以来僕はビートルズに、また洋楽という聴いたことのない音楽に心を奪われていった。ビートルズを初めてその時聴いたはずだったが僕には何か強く思い当たるイメージがあった。それはマンガ少年だった自分が少年マンガばかりではなく、友達のお姉さんや、近所の床屋さんで見せてもらったりしていた少女マンガまで読んでいたことによる。当時少女マンガには読み物のページに変な記事がやたらと写真付きで出ていた。
記事の内容はどれもみな「ビートルズ来日!」大きな見出しで個性豊かな変な顔にきのこみたいなヘアスタイル、そう「マッシュルームカット」の4人が写っていた。

もちろん初めはそんな4人がかっこいいなんてとても思わず「変な外国人!?」
くらいにしか思っていなかったが、あの時のゲルマニウムラジオから流れてきた音楽(曲)にやられた!後で知ることになる「イエスタデイ」や「デイ・トリッパー」などの名曲は都会に行ったことの無い小さな田舎の鼻垂れ小僧にとって、それはそれはとてつもなく大きい出来事で、僕にとってこれから始まる楽しくて、儚くて、嬉しくて、悲しい人生の幕開けだったのだ!