映画を観た記録176 2024年9月13日   リドリー・スコット『ブラックレイン』

Amazon Prime Videoでリドリー・スコット『ブラック・レイン』を観る。
種明かしをしてしまうと、”ブラックレイン”は、"黒い雨"のことで、原爆投下され、"黒い雨"を浴びた若山富三郎演じるやくざの親分・菅井にとってのアメリカへの仕返しのきっかけとなり。それがグリーン・バックの偽札作りということがタイトルの意味でもある。菅井は「アメリカへの仕返しだ。」とマイケル・ダグラス演じるニューヨーク警視庁に勤務する刑事・ニックへ話す。
公開されたのが1989年なので、時代的にあってもいる。なにしろ、戦争が終わって44年前のことなのだ。
1989年公開ということもあるが、夜の怪しげなクラブのときに流れる音楽がニュー・ウェイブ調の音楽は、安直さを感じた。最も他も尺八が流れたり、盛り上げるといえば盛り上げるが、安直な音楽と感じた。とはいえ、1994年に公開された『スピード』を監督したヤン・デ・ボンが撮影監督を担当しており、視覚的に素晴らしい。スモークが立っているニューヨークの街、大阪、ネオンが反射する大阪、その反射を際立たせるための濡れた道路。画面はとてつもなく素晴らしい。本作品は、この素晴らしい画面がすべてである。とはいえ、松田優作、若山富三郎、安岡力也、高倉健、内田裕也、ガッツ石松、神山繁らの演技が悪いということはない。高倉健が登場すると、なぜか、その時間だけ、「日本映画」のように感じる。高倉健は、ハリウッド映画でも「日本映画」を貫き通すとんでもない役者である。注目された松田優作は、初めてハリウッド映画出演ということもあり、とても力が入った演技とはいえるが、作りすぎの感が否めない。若山富三郎にしても、サングラスは金色レンズのサングラスで、アメリカ人からみた「やくざ」という衣装であるが、やはり、いつもの若山富三郎である。松田優作だけがハイテンションなのである。というか、そういう人物設定ということなのか。ちなみに、安岡力也は菅井の幹部という設定なのだが、銃撃戦になり、高倉健演じる刑事に射殺されてしまう。安岡力也の殺されるシーンはスローモーションでバックに燃え上がる炎で見せ場になっている。対して内田裕也にはそのような見せ場はない。偽物刑事を演じて、マイケル・ダグラス演じる刑事を騙すような役柄である。
この画面作りの入れ込み方からして、相当、日本を調査している。
高倉健が演じる刑事とマイケル・ダグラスが演じる刑事がともに食べるうどん屋は、戦後直後の匂いが漂っている。場所探しが良いのではないだろうか。工場のシーンも、大量に自転車で走る工員が日本を見せていた。実際、工場は広いから、自転車で動いているのである。
本作は日本を詳しく調査し、ディテールを作りこんだ傑作である。
冒頭のオープニングタイトルが縦に英文で"BRACK RAIN"と書かれ、エンディングが日本語で"完"と終るのは、作りこんでいて観ていて楽しい。
オープニング、マイケル・ダグラスがオートバイに乗って現れるシーンがミュージック・ビデオのような雰囲気を感じたが、ドラマはそんなことはなかった。
ちなみに、マイケル・ダグラス演じる相棒を演じるのがアンディ・ガルシアなのであるが、アンディ・ガルシアはクラブで、レイ・チャールズの歌を歌い、高倉健を連れ出し、一緒に歌うのである。高倉健がレイ・チャールズを歌うシーンを観られるのは本作くらいではないか。

いいなと思ったら応援しよう!