映画を観た記録144 2024年8月11日   ウォン・カーウェイ『いますぐ抱きしめたい』

Amazon Prime Videoでウォン・カーウェイ『いますぐ抱きしめたい』を観る。

原題は『As tears go by』である。涙あふれて、が日本語訳である。

ウォン・カーウェイのデビュー作である。

一言で言えば、アイドル映画である。

主人公がアンディ・ラウとマギー・チャンである。

アンディ・ラウが当時27歳。マギー・チャンが24歳。

アンディは今は60代、マギーもうすぐ60代。

本作は、香港が中国に返還されるまえの無軌道な、やくざに憧れた若者たちの青春グラフィティである。

ウォン・カーウェイは基本的に形式美の映像作家である。

ドラマ内容は、大した内容ではない。チンピラたちがやくざに使われるという他愛もない、ありふれた映画である。

いわゆる香港ノワールですね。
というか、この映画、そんなにかっこいいものでもない。この泥臭さは、日活アクション、実録やくざ映画に近い。アンディ・ラウが小林旭や石原裕次郎、菅原文太、渡哲也が演じていてもおかしくない。アンディの顔はどちらかというと西城秀樹に似ている。
マギー・チャンは、松原智恵子のようなものですかね?

夜、スモークがたかれた風景、銃、女、札びら、などなどがノワール映画としての重要なアイテムであり、それは、ジャン・ピエール・メルヴィルのような映画が最も強く表した。ジャン・リュック・ゴダールはメルヴィルに憧れた作家であるのはいうまでもない。

ウォン・カーウェイの形式美にこだわる作風は、本作では、香港ノワールの形式美にこだわっているのである。

面白いのは、ジャッキー・チュン演じるアンディの弟分が「Who is?」と話すと、アンディは何それといって広東語で話せよと話す。

そうか!中国返還前の大英帝国植民地の香港も英語を話せない香港人はいたということなのか。驚くことでもないのか。

甘酸っぱい映画である。日本だと相米慎二がこれらアイドル役者に無茶な演技をやらせそうな映画でもある。
ところで、冒頭のシーンがジム・ジャームッシュの『ストレンジャー・ザン・パラダイス』と同じように、おばさんが娘を置いてくれと電話で依頼するシーンと偶然にも似通ったのは時代のなせる技か。

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