映画を観た記録152 2024年8月15日      ジョゼフ・フォン・スタンバーグ『間諜X27』

Amazon PrimeVideoでジョゼフ・フォン・スタンバーグ『間諜X27』を観る。

主演は、マレーネ・ディートリッヒ。

男社会に翻弄された女の悲劇とか、戦争によって運命を狂わされた女とか、解釈はできるが、言えることは、本作品の主演女優のディートリッヒの圧倒的な存在感である。

本作品は、舞台がオーストリア帝国なのに、話す言葉は英語であり、オーストリアのある地域を占領したロシアの戒厳令の布告も英語で書かれてある「どこの国も英語」という典型的なハリウッド映画である。

ディートリッヒの目の動きが素晴らしい。少し猫背で上目使いに見るディートリッヒの動き方が特徴的である。

ディートリッヒの顔は掘りが深く、痩せ美人なので、陰影をつけられやすい顔である。その特質が見事に発揮されている。

光と影を巧みに演出する監督と見た。

調べてみたら、本作の間諜x27のモデルはマタハリだそうである。ということなので、街娼が女スパイ間諜X27として仕立てられたのである。

ジョゼフ・フォン・スタンバーグは名作ぞろいである。

彼もまた、生活に追われ、ハリウッドへ入り込んでしまい、そのまま仕事をしてしまった「ハリウッド幼年期」の映画作家である。ある意味、最初の「社会派」ともいえなくもない。

ディートリッヒをスターにした功績は大きい。

他にはジョン・フォードの『男の敵』『アパッチ砦』『黄色いリボン』にも出演したヴィクター・マクラグレンも出演している。

最後近くの若き将校が叫ぶセリフが特に問題視されないのは素晴らしいと言える。

ジョゼフ・フォン・スタンバーグの映画『間諜X27』は、ヴィクター・ランマクラグレン扮するオーストリア将校が(というか英語で話すところはハリウッド!)街娼のディートリッヒに間諜X27を持ち掛け、ディートリッヒがお世辞で「お国のためですわ」というと「国が守らないのに、その忠誠心見上げたものだ。」と愛国者が怒り心頭のセリフ回しで面白すぎる。

この映画はさらに愛国心あふれる右翼を怒りにさせる。

ディートリッヒは愛してしまったロシアスパイを逃亡させてしまった。

当然ながらディートリッヒは敵国犯逃亡の罪で処刑が下る。

ディートリッヒは、処刑にあたり、服装を尋ねられたら、「この仕事に就く前に着ていた男を誘う仕事の服にするわ」と神父に言う。そしてヴェールを被る。

そしてディートリヒは、マスクをつけてくださいと依頼する若き兵士へ「いらないわ」と捨てる。

そして、処刑の太鼓が鳴る。

若き兵士は、叫ぶ「何が戦争だ、こんなの虐殺だ、女を殺すのか」と叫ぶ。若き兵士は外へ連れていかれる。

そしてヴィクター・マクラグレンの命令で処刑される。

(ディートリヒの死に方が『女と男にいる舗道』のアンナ・カリーナがギャングに殺される死に方に影響を与えているはずだ。)

現代日本では、本作のような映画は無理である。本作のような、将校を無くした未亡人が街頭の女になり、それが女スパイとして活躍させられる映画は頭の固い人間には理解が及ばないだろう。

いわゆる「名作」である。

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