映画を観た記録69 2024年3月23日   イングマール・ベルイマン『第七の封印』

Amazon Prime Videoでイングマール・ベルイマン『第七の封印』を観る。

本作品の感想を正直に言うと、一歩間違えると『モンティ・パイソン・ホーリー・グレイル』ではないかと見える。芸術映画に失礼な!と思われるかもしれないが、死神が登場して、騎士とチェスしたりする荒唐無稽さが『ホーリー・グレイル』ではないか、としか見えない。

また、この様にも見える。ハリウッド映画の子供向けのファンタジー映画である。完全にセット内で行われる演劇的な作り方が、トリック撮影無しのファンタジー映画であるともいえるのだ。登場人物の騎士がピーターパンのようなコスチュームをしていて、ますますファンタジー映画を思わせる。登場人物がすべてロビン・ウイリアムズに見えてしまう。

そして、本作品の特徴は、見事にシンクロした劇伴である。このような完成度の高い劇伴はないと断言する。日本でいえば芥川也寸志である。黛敏郎ともいえる。

それにしても、本作品でも、火あぶりにされる魔女が登場するが、『裁かるるジャンヌ』で表現された苦しみというかそのようなものが本作品ではその人物ではなく、ただただ死んでしまうのである。その魔女とされた女性が腕を上げ、縄で縛られている姿で腋が見えるが、腋毛が生えていないのは時代考証的に間違えてないか。中世は腋毛がボーボーのはずだ。

それはともかく、映画音楽でドラマチックなことを表現しているのは時代のせいだともいえる。現在では、VFXだのSFXだの特撮技術はあって、その技術でスペクタルを演出できる。本作品では映画音楽と演技とセリフと光と影しかないのだ。

哲学的なセリフは、黒澤明の『羅生門』を思わせる。よくよく見ると、演出が土着的で黒澤明に通じるものがある。

なかなか興味深い映画である。

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