映画を観た記録71 2024年3月24日 ベルナルド・ベルトルッチ『リトル・ブッダ』
Amazon Prime Videoでベルナルド・ベルトルッチ『リトル・ブッダ』を観る。
『ラスト・エンペラー』のときもそうだったのだが、アジア人が英語で会話するという英語ネイティブでもない民族が英語で会話するというハリウッド映画の定石を今回も行っている。『ラスト・エンペラー』は清末期の中国人。今回はチベット仏教僧が英語で会話をする。『ラストエンペラー』ではジョン・ローンが皇帝溥儀を演じ、『リトル・ブッダ』では、キアヌ・リーブスがブッダを演じる。『ラストエンペラー』にせよ、『リトル・ブッダ』にせよ、ハリウッドの過去によく作られた歴史上の偉人を70㎜シネスコ方式で作られるような映画をまたもベルトルッチは作ったということである。
ベルトルッチは今回でSFXをやりたかっただけなのかもしれないとさえ勘繰ってしまう。キアヌ演ずるブッダが瞑想をしているとき、魔王マーラがブッダを迷わすために、美しい女性や兵士の大群を見せて、ブッダを悟らせまいとするシーンはSFXが全面展開している。まるでロバート・ゼメキスである。
ベルトルッチお得意のセックスシーンは立ちながらでもあるが、途中で終わる。この場面を見ていると、セックスの演出は他に抜きんでるものはないと私は感じる。セックスは、クリス・アイザックとブリジット・フォンダが演じる。とはいえ、ヌードになるのではない。
クリス・アイザック演じる父とブリジット・フォンダ演じる母のあいだに生まれた少年ジェシーが、ノルブの師である高僧ドルジェの生まれ変わりだとチベットの高僧であるノルブから告げられる。
ドルジェの生まれ変わりはほかにも二人いる。ネパールの少年と少女が生まれ変わりだと告げられる。
いわゆる不思議物語なので、ファンタジー映画の部類に入る。
ディズニーで作らなかったというだけのことである。
少年ジェシーは父に連れられ、ブータンの寺院に行く。
そして、高僧ノルブは、死の旅に出てしまう。ノルブは、瞑想しながら死ぬことができる達人でもある。
少年ジェシーはアメリカ・シアトルで生活しており、アメリカのシーンでは画調が青味がかっている。ネパール、ブータン、ブッダの生まれた国では、画調がオレンジがかっている。オレンジではなく黄金なのだろうか。
インド人が登場すれば、神秘感は増すので、この映画もそういう映画である。とはいえ、ブッダはキアヌ・リーブスという西洋人が演じている。
音楽は『ラストエンペラー』と同じく坂本龍一。
撮影監督は『ラストエンペラー』と同じくヴィットリオ・ストラーロ。ヴィットリオ・ストラーロはベルトルッチの古くからの撮影監督である。
ドルジェの生まれ変わりの物語とブッダの半生が交互に語られ、3人の生まれ変わりの子どもの前にブッダが瞑想するシーンが合わさり、そこで、さきほども書いたようにSFXの全面展開である。
ベルトルッチの物語の独特の語られ方は今回も本領発揮している。
色彩感覚がすばらしく、美術品と言ってよい映画である。