映画を観た記録168 2024年9月9日    サミュエル・フラー『拾った女』

Amazon Prime Videoでサミュエル・フラー『拾った女』を観る。

ストレートすぎる反共映画。

とはいえ、この映画を観て、反共と洗脳されるとは考えにくい、なぜなら、本作公開当時の1953年は、赤狩りが広まっていた時代である。そのことからみて、本作は反共プロパガンダ映画の要素はなく、当時の時代風俗を描いていたとみるのが妥当である。というか、フラー自身、思想なんかあるわけがないので、つまりは「映画とは、戦場のようなものだ。愛、憎しみ、アクション、暴力、そして死。要するに、エモーションだ。」が刻印されている映画である。彼が撮った全てがそうなのであろう。

本作のアクション・シーンは、その後のアクション映画の規範ともいうべき形として描かれている。

主演はリチャード・ウイドマークが前科3犯の小悪党のスリを演じ、リチャード・カイリー演ずる共産スパイのジョーイに政府機情報のフィルムを運ばされた女・キャンディをジーン・ピータースが演じ、キャンディは、小悪党のスリにフィルムをすられてしまい、盗んだスリをみつけ、そのスリを愛してしまうようになる。

脚本はサミュエル・フラーが執筆している。

脚本も演出も手掛けるサミュエル・フラーは、その後の映画を目指す者たちの屈折した英雄なのである。

ゴダール、ヴェンダース、カウリスマキ、タランティーノ、彼らはフラーに憧れ、「悪い映画」を作ろうとした。

「悪い映画」は教育に良いのである。

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