映画を観た記録127 2024年7月15日 ウェン・ムーイエ『薬の神じゃない』
Amazon Prime Videoでウェン・ムーイエ『薬の神じゃない』を観る。
本作品の主題は誰が観てもわかるが、映画途中でペテン師が「この世の病気で最大は貧困である。」と言うように「貧困」である。映画は「貧困」を描けば傑作になるという法則はこの映画にも生きている。つまり、アンドレ・バザンだとかジル・ドゥルーズだとか蓮實重彦の言葉はたわ言に過ぎないのである。それらの言葉にこだわっていると映画を楽しめない。
本作品は上海の「貧困」の現実を、白血病を通して描く。中国の医療制度が未改革なのか、白血病のクスリを買うには保険ではなく自費なのである。正規品はスイスのグリニックであり、それは一瓶4万元もするのである。映画の途中で老婆は刑事に訴える。「正規品は4万元。そのせいで家族は破産した。しかし、インド製のジェネリックで生きていられる。死にたくない。生きていたい。」と訴える。そうなのである、暴利をむさぼるスイス製薬品メーカーにこの映画の主題である「貧困」を生む原因を生んでいるのである。
そうなのである。インドからジェネリックのグリニックを密輸する小悪党のチョン・ヨンにあるのではない。
スイスの薬品メーカーが作った白血病のクスリであるグリニックが40000元のところをインド製では3000元で売っているのである。
これはどういうことなのだろうか。
しかも、スイス製薬品メーカーは、インド薬品メーカーを訴訟するのである。グローバル資本主義の「本質」をしつこく描いた映画はそうそうない。
本作品は中国映画である。中国でこのような社会問題を主題に描けるのに、なぜ、日本ではアニメや怪獣ばかりなのか。
おかしくないだろうか。中国ではなく、日本こそが全体主義独裁国家ではないからだろうか。
結局、小悪党チョン・ヨンの行いは営利目的ではなく、実刑5年、減刑3年に短縮され、その過程で中国の医療改革が進む。
映画で重要なことは「主題」である。