映画を観た記録125 2024年7月14日    ロバート・ロッセン『ボディ・アンド・ソウル』

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本作品は、一言で言えば「隠れた名作」である。
助監督にロバート・アルドリッチ。脚本はエイブラハム・ポロンスキーである。ポロンスキーはアメリカ共産党に過去に属していたので、ハリウッド・テンのリスト載せられ、ハリウッド映画界から追放されたロシア系ユダヤ人である。仲間の名を売ったエリア・カザンが1999年アカデミー賞名誉賞を受賞したとき、ポロンスキーは会場の外で抗議デモを行っている。ポロンスキーは、ハリウッドに復帰できてから、『刑事マディガン』などの脚本も担当している。
ちなみにハリウッド・テンに積極的に協力した映画人は、ウォルト・ディズニー、ゲイリー・クーパー、ロナルド・レーガンである。私がウォルト・ディズニーというかディズニーを認めないのは仲間を売った裏切り者が作った映画会社など認められるわけがないからだ。微妙な立場が名作『十字砲火』を作ったエドワード・ドミトリクである。彼は実刑を受け、収監されたが、証言してしまい、釈放されている。
ヘンリー・フォンダ、バート・ランカスター、グレゴリー・ペックはハリウッド・テンに反対している。ジョン・フォードがジョン・ウエインをいつまでも子ども扱いし、ヘンリー・フォンダを一人前の俳優として扱ったのは、フォンダの人柄によるものかもしれない。
本作を一言で要約すれば「資本主義の本源的蓄積」を描いたと言える作品である。
「本源的蓄積」は、本作品のような形で現れるのである。本作品は、賭けボクシングと八百長である。アマチュア世界チャンピオンのチャーリー・デービスは八百長ボクシングに手を染めてしまう。そのことで身の破滅を迎えつつある。主人公チャーリーはユダヤ人である。父と母はニューヨークの下町で駄菓子屋を開いたが、場所の治安が悪く、ビリヤード、闇酒場が隣にあり、闇酒場を狙った爆破事件により巻き添えを食らった駄菓子屋の父は死んでしまう。
時代背景は欧州をナチスが制圧していくころである。
本作品は、マーティン・スコセッシの『レイジング・ブル』に影響を与えているといっても過言ではない。『ボディ・アンド・ソウル』のショーティーは『レイジング・ブル』ではジョー・ペシ演じるジェイク・ラモッタの弟である。もっとも『レイジング・ブル』はジェイク・ラモッタの実人生を描いているので。影響と言っても、少ない影響であるのは確かである。本作品の、ラウンド数を示す演出は『レイジング・ブル』にも影響されているのだろう。話は脱線するが、『レイジング・ブル』のプロデューサーのアーウィン・ウインクラーはその後、『ロッキー』のプロでユースもしている。よほどボクシング映画に魅了されたのか。
本作品は、反骨というべきか、エイブラハム・ポロンスキー脚本の良心が遺憾なく発揮されている。悪を描きつつも、「良心」を描く、それこそ「ドラマ」である。主人公チャーリーのセコンドを、チャーリーに頼まれて請け負う黒人ベンの存在は「良心」そのものである。愚鈍な、または家政婦しか登場されない黒人は「本作品」では、この映画の中で誰よりも「人間性を失っていない」のである。
結果的にチャーリーは判定負けの八百長ボクシングを行うがその結果はどうでるのか。それこそ、「人生」である。
ちなみに、撮影監督はフリッツ・ラング『死刑執行人もまた死す』でも担当したジェイムズ・ウオン・ハウである。アメリカ映画界で成功した中国人はブルース・リーの前にいたのである。

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