映画を観た記録122 2024年7月13日    ヴィム・ヴェンダース『アメリカ、家族の風景』

Amazon Prime Videoでヴィム・ヴェンダース『アメリカ、家族のいる風景』を観る。

原題は、『 Don't Come Knocking』である。「ほっといてくれ」という意味である。

原題の意味がわかると本作品の物語をより味わい深く楽しめる。

脚本はサム・シェパードである。ヴィム・ヴェンダースは『パリ・テキサス』でサム・シェパードと組んでいる。『パリ・テキサス』は音楽がライ・クーダーの印象的な旋律のギター、ハリー・ディーン・スタントン演じるトラヴィスの娘をナスターシャ・キンスキーを演じ、話題作であった。『パリ・テキサス』は1984年製作で日本公開されてから、私は映画館で観たのである。ヴィム・ヴェンダースは20年後、サム・シェパードと組み、しかもなおかつ、サム・シェパードが主人公のだらしない俳優ハワード・スペンスを演じる。主人公ハワードは、撮影中の映画現場から脱走する。ハワードは母親に会いに行く。母親は、ハワードのヤク中、女にだらしない、酒におぼれているということを知っている。母は、便りを寄越さない息子の活躍を知りたいので、新聞をスクラップにしている。母親から、30年前に女性から、ハワードの子を妊娠したという電話があったことを知らせられ、モンタナ州ビュートで出会ったことを思い出し、向かう。

ハワードは過去に妊娠させた女性ジェシカ・ラングが演じるドリーンに会い、息子にも出会う。息子はハワードが父親であることを認めない。一方、母の骨壺を抱えたサラ・ポーリー演じるスカイはハワードに会いたがっている。

家族の葛藤劇でもある。

男は方々に女遊びをして…という男の願望物語になっていないところが本作の魅力である。ドリーンは、ハワードが一緒に住みたいというようなことを言うと、逆襲するのである。あんたは何を言っているんだ!というようなことをいいつつ、キスして別れる。

人間は単純な生き物ではないということがわかる。

それにしても、スカイブルー、雲の形。

西部劇テイストも堪能できる。

『パリ・テキサス』に続く、ヴィム・ヴェンダースの家族劇。

ヴィム・ヴェンダースは『ことの次第』に次いで『アメリカ、家族のいる風景(原題:Don't come Knocking』もまた撮影現場に絡んだ映画である。前者は、プロデューサーがその筋の者に最終的に殺されてしまう。後者は、俳優が逃亡しだし、出資会社の社員が探すという映画である。

ヴィム・ヴェンダースは、逡巡をいつも描いている。人によっては「ロード・ムーヴィー」と呼ばれているが、それは「逡巡」である。

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