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咳をしても一人
私には趣味がない。これだけは誰よりも得意だ・好きだ・知識がある、まあ言い方はなんでもいいけれど誰にも負けないと誇れることも何一つない。
だから、よく聞かれる「趣味はなんですか」や「休日は何してるの?」といった質問が物凄く苦手だ。無難に読書や音楽が好きだと答えることになる。嘘ではない。昔から図書館に入り浸るくらい本は好きだったし、人生の殆どを音楽に携わって生きてきた。けれど、今は活字も全然読まなくなってしまったし、音楽だってGLAYは聞くけど流行りの音楽はさっぱり分からないし、クラシックやジャズに造詣が深い訳でもない。というわけで、会話を発展させることか出来ない。待っているのは気まづい沈黙だけである。写真を撮ることも好きだ。高校時代賞を取ったこともある。でもだからといって、カメラや写真の技術は人並みでしかない。
熱しやすく冷めやすい私に欠けているのは執着心か好奇心か知識欲なのかはたまた継続力か。あるいはその全てなのかもしれない。自分では分からないけれど、どんなことにもプロやマニアになれるほど向き合ってこなかったし、本気になって取り組んでこなかったことは確かだ。
人間相手でも大差はなく、1人に対して執着することがなく広く浅く、クラスの誰とでもグループを作れるけどその代わり大親友もいない。そんな人生を送ってきた。人に執着されることも怖く、少しでも重い話を振られようものならヘラヘラおちゃらけては距離を保つことを心掛けていた。父親の仕事の都合で引越しが多かったこともより一層これを助長させていたように思う。学校を卒業する度に人間関係もリセットしてきた。その結果が、現在の孤独だ。何かあってもなくてもLINEする相手も電話できる相手もいない。縁もゆかりも無い土地で働いているために、休日に会う友人もいない。完全に自業自得である。我ながら微塵も庇う余地がない。
誰と過ごす予定もなく、家で引きこもる準備だけを整え迎える1人過ごす休日前夜はとてつもなく長い。