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デモフェス2021レポート:「スウェーデン流の子育て~育休パパの姿とパートナーシップ」

「デモクラシーフェスティバル」は北欧で始まった、一人ひとりがつながって豊かな社会をつくるための、老若男女問わず楽しめるコミュニケーションのお祭り。日本でも昨年2020年に初めて開催されました。
今年2021年も10月29日、30日、31日の三日間、たくさんのセッションがオンラインで開催。今回はその中から、10/31(日)14-15時 チャンネル1で開催された「スウェーデン流の子育て~育休パパの姿とパートナーシップ」の様子をお伝えします。

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スウェーデンでは、父親が育児に積極的。男性の育休取得率も約9割で、「子どもは男女で一緒に育てるもの」という考えが根付いているそうです。2017年から日本全国で巡回展示会が行われている写真展「スウェーデンのパパたちSwedish Dads」の話題をきっかけに、子育て、ライフスタイル、キャリア、パートナーシップなどについて、参加者の皆さんと一緒に考えを巡らせました。

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司会:浦野さん
世界の様々なテーマについてオープンに語り合う対話型ラボ
「URL (Universal Research Laboratory)」主宰
ゲスト:新倉さん
北欧ライフスタイル研究家/
片付け収納インテリアコーディネーター「北欧lagom」主宰

■日本における男性育休取得の実態

今年、2児の父になった浦野さんも、独身時代にスウェーデンを旅した際、平日の街中で子供と遊んでいるスウェーデンのパパたちの姿に、日本で目にする風景との違いを痛感。人生において子供をもったとき、育児が人生の中でどれくらい大事なことなのか、あらためて考えるきっかけになったそうです。

-------------------------------------------------------------------------------------国会議員における女性比率(2021年10月30現在)
日本 9.9%  vs  スウェーデン 47%

男性育児休業取得率
     日本 12.7%      vs      スウェーデン 88.3% 
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数字の上でみれば、国会議員における女性比率も男性育児休業取得率も、日本とスウェーデンの間には、まだまだ大きな差があります。男性の大臣が育休を取得するだけでメディアでは大きな話題となってしまう昨今の日本社会ではありますが、それでもようやく、男性育休取得の問題は日本のメジャーな社会課題の一つとして認識が高まりつつあります。


■イクメン??:写真展「Swedish Dads」から見るスウェーデンのパパの子育て

スウェーデン人の写真家ヨハン・べーブマン氏が育児休業中のパパたちの日常を撮影したコレクションを集めた写真集「スウェーデンのパパたち(Swedish Dads)

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日本では、2017年に初めて展示会が開催されて以降、現在に至るまで全国各地で巡回写真展として開催されています。新倉さんは、日本初開催時に、展示会の運営に携わられました。

画像3「#パパも子育てしています」というハッシュタグをつけてSNSで展開

国内初開催後も、もっと多くの日本人に「Swedish Dads」を知ってもらいたいと思い、当時渋谷区内に建設中だったビルの工事の壁面に展示できないか、渋谷区長に交渉。スウェーデン大使館、ヨハン・べーブマンさんと共に壁面に飾る写真を選びながら、壁面展示会を実現させました。

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“2017年当時は、「イクメン」という言葉が日本ではちょっとしたブームに。育児をするパパにかっこいいイメージが先行しがちでしたが、"日本で多くの家事育児の負担を担っているママたちにとっては「育児はそんなかっこいいものじゃない!」というのが本音だったはず。“と新倉さん。

そんな最中、「Swedish Dads」の写真集を初めて目にした新倉さんは、そこで映し出されているスウェーデンのパパの育児姿をみて大変衝撃を受けたそうです。

「Swedish Dads」に登場するパパたちは、みんな笑っていないのです!
子どもも歯磨きするとき笑ってない。すやすや眠る子供をほほえましくみるシーンだけでない。正にあるあるな日常…育児に深く携わっている人なら「こういうことあるよね」「わかるわかる」ときっと共感してくれる、育児の素のままを映しだした、リアルな写真満載の写真集だったのです。“

展示会開催に携わった新倉さんの感想としては、
“イクメンという言葉は失礼すぎて、彼らには使えない、と思った。”
とのこと。

“母親だけが初めて母親になるわけではない。産むという行為は母親にしかできないけれど、それ以外の立場は父親も母親も同じはず。それなのに、日本社会では、母親の方が育児が得意だという前提で話が進みがち。せっかくの機会を、父親は損失しているのではないかと思う。実際に子供を育ててみて、育児をすると人間的に大きくなれると、実感している。家族の絆を深めるためにも、一緒に乗り越えていく共同作業だと思う。”

と、母親信奉の強い日本社会の育児に対する新倉さんの想いが語られます。


■日本における育休制度と男性育休取得の実態

ここで浦野さんより、育休に関するデータの説明。
実は、日本の育休に関する「制度」が世界的に遅れているというわけではないそうです。

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実際は、5日間未満しか有給をとっていない人が多いが、日本の制度としてはもっと長期で父親も育休をとれる制度にはなっている、とのこと。

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ここで、育児中の参加者パパAさんからご意見が。
“日本の男性育児休暇取得の問題は、日本におけるあらゆる問題が凝縮されている気がする。日本では、経験のような無形資産に対する価値づけが低く、思い出などへの優先順位が低くなりがちだと思う。私は、30代、40代と思い出を大量生産したいと考えている“と。

そしてAさんから浦野さんへ一つ投げかけが。
“人生で一番消したくない思い出は何ですか? いくらであればそれを売りますか?“

個人的にも、「私の場合は何だろう?」と深く考えさせられた問いでした。

■日本社会で子育てするのをためらう今の若者たち

仕事を一定期間休んででも育児に関わるのは最高だと感じている、浦野さんや男性育児真っ只中なAさん。彼らの話を受け、Sweden人のパートナーと婚約した20代女性Bさんにもご意見お伺いしてみることに。そこで見えてきたのは、日本の若者の子育てに対するリアルな不安の声の数々

“これまで長年、結婚しても子供はいらないと思っていた。日本で子育てするのは怖さもあり、色々考えるとありえないかな、と。その後たまたまパートナーがスウェーデン人になり、スウェーデンの現状を知って、出産や育児に税金も投入されていることもあり、産まないと損かなと思うように。でも、育児で疲弊してパートナーとうまくいかなくなったらいやだな、という想いもまだある。”とBさん。

すると浦野さんからも、“複数の大学生の知人が、日本で子供を産んで母親になることのハードルが高い、と言っている。母親が大きな犠牲を伴うのは間違いないので、「産みたい」となかなか思えない、と冗談抜きで話してるのをきいた”と。
また新倉さんからも、“以前、別のリケジョの現役学生を集めたイベントに登壇した際、参加者から「子供を産むのが怖い」という話を聞いた。”というお話が。

個人的には、この議論を通じて出生率が低下し続ける日本の背景と待ち受けているかもしれない未来の姿を目の当たりにし、最も考えさせられた時間帯でした。

■夫婦だけで会話してますか?

最後に、家族の繋がりに大きく関わってくる、「パートナーシップ」の話題へ。

新倉さんは、コロナ禍在宅勤務が増えたことをきっかけに、そういえば、子供とは積極的にかかわっているけれど、夫婦だけの会話が少なくなっていたなあ、と痛感されたそうです。“子どもが産まれると、夫婦の会話もついつい子供を通しての会話になってしまいがち。家族のチームビルドのためにも、夫婦の会話というものは大事だなと。気を付けないと会話しなくなっちゃうので。”と新倉さん。

家の中でいきなり対話をする、というのも難しいので、2人だけで外に出かけてみるとか、意識して機会を作ることも大切なようです。

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