健康・くらし・介護領域の事業開発でフィールド実証が進まない理由を考える
ヘルスケア領域(特に医療の直接的な範囲を超えた健康や介護、生活支援の領域)におけるフィールド実証の推進は、多大な困難を伴う現状にあると考えています。ここでのフィールド実証とは、具体的には、現場レベルでの試験的な検証を指します。
この課題に対する洞察を深めるために、一般的な医療領域と比較してみました。具体的には、新薬の開発や医療機器のテストといった過程を考察します。
治験のプロセスを見てみると、CRO(Contract Research Organization)とSMO(Site Management Organizations)という二つの主要な機関が存在します。SMOは病院からの依頼に基づいて治験を支援し、CROは製薬企業からの依頼に応じて治験を支援します。
ここで注目すべきポイントは、病院での治験が病院スタッフだけによって行われているわけではなく、外部のSMOによる支援を受けているという事実です。病院スタッフは専門的なスキルを豊富に持っているにもかかわらず、単独で治験を実施するのは困難という現実があります。
一方、人手不足が深刻化している介護施設で、介護ロボティクスやICTによる介護DXのフィールド実証を試みるというのは、極めて非現実的であると言わざるを得ません。
往々にして見受けられる状況としては、経営トップが企業と協力関係を構築し、フィールド実証を開始したところで、現場スタッフから強烈な反発を受けるというものがあります。
現状を完全に理解していないセクター(政府等)からは、介護リビングラボの設立や補助金の提供などが提案されていますが、これらの方策が現場の問題を根本的に解決するには至っていないと私は考えています。
現時点で、介護リビングラボは大学や研究機関、地方自治体の産業支援機関等が担当していますが、これらの活動は上述した治験モデルのCROに該当するものにとどまっています。
介護リビングラボが果たすべき役割は重要である一方で、その機能を最大限に活かすためには、SMOと同様の役割を果たす機能も必要となると考えられます。
すなわち、フィールド実証が進まない主要な理由として、SMOに類似した役割を果たす機能の不存在が挙げられます。
では、どうすれば現状を改善できるのでしょうか。具体的なビジネスモデルを提供する方法は存在します。その詳細については別の機会にお伝えすることとします。
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