次世代ヘルスケア 〜「健診結果表」をもらう→『健康設計書』を作成するへ〜
現在の健診(予防医療)の体系は、「川上」(インプット系)と「川下」(アウトプット系)の二つの要素で構築されています。「川上」は健診や検査、個人の健康記録(PHR)などの情報収集段階を、一方「川下」は健診結果に基づく栄養指導や運動支援サービスなどの実行段階を表しています。
これまでの体系では、「川上」と「川下」が直接連携し、個別の症状や状態を局所的に、別の言い方をすると臓器別に評価・対処するアプローチが主流でした。これは今後も非常に重要なアプローチであることには変わりないと思います。
しかしこのアプローチでは、個々人の健康状態に対する全体的な視野や計画が欠如し、結果として自己の健康管理に対する意識が十分に高まらないという課題が存在します。
そこで新たに提案したいのが、「川中」のプロセスの存在です。「川中」は「川上」で集められた情報を総合し、その情報が何を意味するのかを理解し解釈するという段階を表現します。さらにその解釈を統合し、全体としての状況判断や評価を行い、総合的な視点での判断を可能にするプロセスです。
この「川中」のプロセスを通じて、初めて自身の健康に対する予測・計画・構想・設計という総体的な視点からのアプローチが可能となります。それは、「問題解決型」の健康管理から「予防予測型」の健康管理へと視点を転換することを意味します。
健康管理が過去の課題を修正・改善するという古い視点から、より将来志向的で積極的な健康へのアプローチへと変わることで、ヘルスケアビジネスの全体像も大きく変わると考えられます。
「川中」のプロセスを意識したアプローチを導入することにより、個々の健康状態に対する理解が深まり、自身の健康に対する計画性や主体性が高まります。
その結果、一人一人が自己の健康について予測・計画し、その実現に向けた積極的な行動をとることが可能となります。これにより、個々の健康への意識が高まり、健康維持・増進への取り組みがより効果的になると期待できます。
また、この「川中」プロセスを意識したアプローチを採用することで、ヘルスケアビジネス自体の在り方も大きく進化します。従来の「問題解決」に焦点を当てたビジネスモデルから、『健康設計』という新しい視点を重視したビジネスモデルへと転換することが可能になります。
それは一人一人の健康に対する意識と行動を促進し、その結果として個々の健康状態の改善だけでなく、社会全体の健康促進にも寄与します。更に、そのプロセスは、個々のライフスタイルや価値観を尊重し、ヘルスケアをよりパーソナライズされた、意義深いサービスへと進化させることでしょう。
「川中」のプロセスを意識したこの新しいアプローチは、ヘルスケアビジネスの未来像を一新し、個々人の健康観と社会全体の健康状態の改善に対する新たな道筋を示す重要な考え方になると私は思っています。