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なぜ「スマートホーム」市場は拡大しないのか、について考えてみた
◆スマートホーム市場が思うように拡大しない理由はシンプルで、「便利そうだけど、結局面倒くさいし、期待していたほど生活が変わらないから」です。技術的にはどんどん進化していて「未来の家」感はあるものの、実際に導入して使いこなしている家庭はまだ一握り。掛け声は派手だけど、実生活に落とし込むハードルが思った以上に高いんですよね。
◆じゃあ、なぜ「便利そう」止まりで実際の導入が進まないのか。大きく分けて5つの要因があります。
【後付けが面倒くさすぎる問題】
スマートホームって、基本的にはセンサーやデバイスを家のあちこちに設置する必要があります。後から「やっぱりスマート化しよう!」と思っても、センサーを壁に取り付けたり、各デバイスとアプリを連携させたりと、細々した作業が山のように出てきます。さらに、家電の買い替えが必要だったりすると、そこで一気に「うーん、まあいいか」と諦める人が続出。
特に、既存の住宅にスマートホーム機能を後付けするのはコストも労力もかかるため、新築時にセットで導入する以外の選択肢がないのが現状です。でも、これが面倒で、新築のタイミングで導入しない限りなかなか進まないのが実態。
【サービスの幅が狭い問題】
現状、スマートホームで提供されるサービスの大半は「見守り」や「セキュリティ」関連。例えば、外出先からスマホで鍵をかけたり、玄関の前に誰かが立っていたら通知が来たりといった機能です。
確かに便利ではあるものの、冷静に考えると「それってスマホ単体でもできるんじゃない?」と思ってしまうレベルなんですよね。これが、ユーザーがスマートホーム導入にあまり積極的にならない理由のひとつです。わざわざセンサーを付けてまでやる必要があるか、と問われると「まあ、そこまででは…」という結論になりがちです。
【ヘルスケアセクターとの連携不足問題】
スマートホームのヘルスケア領域にも期待は集まっているんですが、実際のサービスは「データ取得で終わり」がほとんど。例えば、スマートウォッチやベッドに設置したセンサーが「睡眠不足ですよ」と通知してくれても、そこから病院に行ったり、具体的なケアにつながる仕組みはないんです。
ユーザーとしては「睡眠不足なのはわかってるよ、でもどうすればいいの?」となってしまい、結果的に放置。リアルな医療や介護サービスとガッチリ連携できていないので、スマートホームのヘルスケア機能がただのオマケ程度にとどまってしまうんですね。
【データはあれど使えない問題】
スマートホームデバイスが集めるデータ量は膨大です。でも、そのデータをどう活かすかというところが、実はまったく進んでいません。
デバイスが「異常な温度変化を感知しました」「電力消費がいつもより多いです」と通知してくれても、「で?」となることが多いんです。センサーが知らせてくれるだけではなく、そこから「このままだとエアコンが故障する可能性があります」「見守りカメラに映った動作が通常と違います」といった、次のアクションまで提示してくれる仕組みが必要なんですが、これを提供できる企業が少ないんですよね。
いわば「データの宝の山」状態。でも、その宝を掘り起こせる企業が限られているのが問題です。
【住宅会社の売り切り志向問題】
スマートホームが広がらない最大の壁とも言えるのが、住宅会社の「売り切りモデル」です。
住宅会社は基本的に「家を建てて売るまで」がビジネスモデルの中心。スマートホームのサービスをセットにした「継続的なサービス提供型モデル」にはあまり関心がありません。導入コストがかかる上に、継続的なサポートを求められると、ビジネスの手間が増えてしまうからです。
結果的に、スマートホーム機能を標準装備する住宅はごくわずかで、ユーザーが自分で後付けするしかない状況が続いています。住宅業界が「家は売って終わり」というスタンスを変えない限り、スマートホームが当たり前になる未来は少し遠いかもしれません。
◆たとえば、スマートドアロックを導入しても「普通の鍵で十分」と思う人が大半です。スマートカメラも「使わなくても問題ない」となりがち。
さらに、高齢者見守りセンサーを設置しても、実際に異常があった際に自動で介護サービスと連動する仕組みはありません。最終的に駆けつけるのは家族や近所の人。結局、「スマートホームを入れたけど、リアルのサポート体制が整っていない」というジレンマに陥るわけです。
◆要するに、スマートホーム市場が広がらないのは「導入が面倒」「サービスが中途半端」「リアルと連動しない」という三重苦のせいです。
技術的には確実に進化しているものの、実際に導入して「生活が激変する」レベルに達していないのが現状。これを突破するには、住宅会社やサービスプロバイダーがもっと本気で「生活全体を変える仕組み」を作る必要がありますね。