見出し画像

ムーラン・ルージュ観劇

久々の帝国劇場です。小さな子どもがいるとなかなか観劇が難しいですが、今回友達からお誘いがあり、前回の公演の評判が良かったのをいろんな方のブログで読んでいたので行くことにしました。

(余談。チケット代が高くてびっくり。旧東京宝塚劇場のD席1100円で観劇してたわたしとしては15000円のチケット代は高い!!と思ってしまう。しかし物価の上昇ももちろん、今回の作品は諸々の権利周りでお金がかかったんだろうな、と予想。)

まずセットが豪華!左右の花道の下手にはムーラン・ルージュを象徴する風車と、上手に象が目に飛び込んでくる。

プロセニアム・アーチには多くの電飾。とにかくセットがド派手。

ストーリー自体は、経営破綻寸前のムーラン・ルージュのよき支援者候補の公爵と懇ろの関係になることを支配人ジドラーに示唆されるサティーン。それを理解しながらも、アメリカからやってきた若さと才能はあるけど金のないクリスチャンと激しい恋に堕ちるサティーンは、実は結核を患っていた。という、もうなんかこうやって文章にするとザ・王道と言うか、独創性のある話とかでは全くない。

でも、とにかくショーのシーンを魅せ、歌を聴かせるミュージカル。オリジナル楽曲ではなく、世界で大ヒットしたポップスソングだから親しみ易い。訳詞がユーミンはじめ、シンガーソングライターや作詞家などが手掛けているので、メロディに対して日本語がとても自然にハマっていて、それも親しみやすさの一つの要因だと思う。
どうしても海外ミュージカルは、原曲の歌詞に忠実であろうとして、「翻訳しました!」という感じのカチカチの日本語になるか、意訳しすぎて本来のニュアンスと違ってしまうか、というのがありがちな気がする。
しかし、今回は原曲の持つ言葉を大事にしながらメロディに対してより自然な日本語があて嵌められていて、それがとても心地よかった。特にこのミュージカルのテーマソング的なエルトン・ジョンの「Your Song」の訳詞がとても美しくて、素晴らしくて、誰の訳だろうと思ったらユーミンだった。流石すぎる。

サティーンの平原綾香さんは歌もさることながら、演技がとても素晴らしかった。圧倒的な歌唱力と存在感。クリスチャンに惹かれる自分に、理性はストップかけようとするけど、感情はストップ出来ない、という相反するものをとても自然に演じられていて、平原さんは芝居の人なんだ、と知りました。

クリスチャンの甲斐翔真さんは、理想と夢を追い求める世間知らずの若き芸術家をまさに体現していました。才能はある。でも現実問題を直視できず、自分の気持ちにいっぱいいっぱい。精神的に未熟。だけどどこまでも純粋。少し硬質で透き通った声が、まさにそのちょっと危ういけれど、清らかな魂を表現していてとても魅力的でした。

公爵のKさんは、いけすかないブルジョワ人を見事に演じていました。さすがの歌唱力にはその傲慢な人となりが反映されていて、「巧い〜!でもムカつく〜!」とつい思ってしまいました。


橋本さとしさんのジドラーもさすが。経営危機からサティーンを公爵に差し出すという計算高く利己的な一面と、ムーラン・ルージュが大事で、一緒に頑張ってきた仲間が大切で人情味溢れる一面を上手くみせつつ、ジドラーの本質は後者であることをちょっとした行動や台詞や目線で演じる。演技の安定感が半端ない。

演出はアメリカンだったなぁ。情緒より、わかりやすいエンタメを重視している感じ。曲の最後のキメと同時に、ハート型の照明を点灯!!みたいな、下手するとダサい演出になりかねないものを、「おおぅ!」という感嘆を引き出すことに成功しているのはさすがというか、なんと言うか。
ショーの華やかなピンクや赤の照明と、ロクサーヌの場面のような、光と影の無彩色のような場面と、照明のメリハリもとにかくエンタメ的。なのに、ちゃんと感動する場面でホロリとするのは、演者たちの力量が高いからなんだろうな。


チケット代は高いけど、観に行って良かった作品です。
ここまでドップリとエンタメに全振りしてこだわっている作品って実は珍しい気がする。もう少し、ストーリーにひねりがあるとか、セットは簡素で演出や振付で魅せるタイプの作品とか、音楽メインで、舞台転換をほぼしないとかがよくある。何かも魅せようとしちゃうと、逆に何が一番見せたいのか伝わらず、舞台全体がとっ散らかるリスクがある。でも衣装もセットも振付も演出も「これでもか!!」という派手さと豪華さで圧倒する今回の作品は、非日常感が半端なく、本当に楽しかったです。

あと、お友達とご飯食べたり、ケーキとお茶したり、というのも久し振りでそれもすごいリフレッシュになりました。
エンタメやお茶の時間とか、なくても困らないものだけど、やっぱりたまに楽しむのは気持ちが豊かになってよいものですね。

子どもがもう少し大きくなったら、そういう時間をもっと確保出来るように、いろいろと頑張ろうと思いました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?