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本棚の中身・話せばわかるかも知れない

対談・鼎談の類いが好きだ。とっつきにくいテーマも話し言葉になるとぐんと身近に感じられる。七面倒くさい専門用語もすいすいと頭に入ってくる(ような気がする)。すぐれた話し手は読者にやさしいので置いてけぼり感がない。ところどころでツッコミあるいは考える踊り場を作ってくれる。異なるジャンルの才能による言葉のキャッチボールも楽しい。あらぬ方向に行っているようで見事な着地をすると思わず「おおー」と言いたくなる。もちろん予め脱線を前提とした与太話も大好きだ。ただし五代目志ん生じゃないが「面白くしようとしない」ことが前提だ。というわけで、対談や座談会、インタビューといった形式を含めると100冊位の本があった。その中から「対談」に絞って今の気分の30冊を選んでみた。

「対論」五木寛之、野坂昭如(講談社文庫)ひょっとしたら対談好きになったのはこの本がきっかけかも知れない。軍隊から青春、安楽死まで縦横無尽に語って青白い少年には刺激満載だった。
「話せばわかるか」糸井重里対談集(角川文庫)80年代の私的代表的対談集。対談相手は14人。栗本慎一郎や井上陽水、谷岡ヤスジ、江川卓も。
「ノンフィクション宣言」猪瀬直樹(文春文庫)山根一眞、吉岡忍、関川夏央、沢木耕太郎ら80年代気鋭のノンフィクション作家7人との対談。
「タダの人の思想から」小田実対談集(旺文社文庫)石原慎太郎、宇井純、野坂昭如と小田実のバトル。いい人選です。
「日本人と日本文化」司馬遼太郎、ドナルド・キーン(中公文庫)2人が存命なら、今の日本という島国はどう語られるのだろう。
「悠々として急げ」開高健対談集(角川文庫)タイトルがいい語られるのは「スカトロ憂国論」「優駿と天才の間に」「人を食った人たち」など刺激的。ラストは本人?との「ケンとタケシの物語」
「ビールうぐうぐ対談」東海林さだお、椎名誠(文春文庫)死生観や恋愛術などどーでもいいようでスルドクも楽しい12編。
「ジャズと爆弾」中上健次、村上龍(角川文庫)とんがった二人が語り合う文学・音楽・基地etc. つくづく思うのは「中上健次はもういない」
「セッション・トーク」山下洋輔(新潮文庫)相倉久人、村上龍、矢野顕子、三宅榛名、柳家小三治などとのフリートーキング・セッションなのだ。
「恐怖対談」吉行淳之介(新潮文庫)対談の名手・吉行淳之介の数ある対談集の一つ。半村良、筒井康隆らの作家にまじって淀川長治の名前が。
「おとこ友達との会話」白洲正子(新潮文庫)会話の相手は仲畑貴志や河合隼雄、養老孟司、多田富雄など。赤瀬川原平は尾辻克彦でも登場。
「恋愛について、話しました」岡本敏子、吉本ばなな(イースト・プレス)恋愛を通じた人間論というのか。もちろん「おきれい事」ではない。
「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」(岩波書店)現代文学、恋愛、家族、阪神大震災からオウムまで「今」について話は広がる。
「誠の話」和田誠、椎名誠(角川書店)二人の誠が話すのは、新宿の居酒屋からモンゴルまで。映画や酒、暮らしにまつわる些事大事。
「音楽と生命」坂本龍一、福岡伸一(集英社)読み終えて1週間もしないうちに坂本龍一死去の報道があった。
「ファンダメンタルなふたり」山田詠美、中沢新一(文春文庫)いいたい放談という感じなれど、そこは「ファンダメンタル(基本的)」なのです。
「子どもが心配-人として大事な三つの力」養老孟司(PHP新書)養老孟子と四人の識者が語る教育論。親は自分の願望を子供に託してはいけない。
「トーク8」筒井康隆(徳間文庫)山下洋輔、中島梓、吉行淳之介、岸田秀、河野典生、山下洋輔トリオ(これは座談)、荒巻義雄、相倉久人(山下洋輔が加わった鼎談)8つのトークセッション。
「気まずい二人」三谷幸喜(角川文庫)三谷幸喜初の対談集。そのたどたどしさをとくとお楽しみあれ。いや、どこまでが計算か。
「翻訳夜話」村上春樹、柴田元幸(文春新書)翻訳を偏愛する二人の対話。続編として「翻訳夜話2-サリンジャー戦記」もある。
「らもチチ-わたしの半生・青春篇」中島らも、チチ松村(講談社文庫)しょーもない、面白い。続編の「中年篇」も。中島らもカムバック!
「いい絵だな」伊野孝行、南伸坊(集英社インターナショナル)思わず「それでいいのだ」と言いたくなるありがたい言葉の数々。
「FRUITS BASKET」吉本ばなな(福武文庫)若き日の吉本ばななの対談集。村上龍、島田雅彦、内田春菊…おお、時代が!
「ラジオ北野」ビートたけし(新潮文庫)渋滞、シンナー、バット作り、ウンチ線(!)、人間国宝・・・その道(?)の達人10人とたけしが激突。
「ヌー道-じゅんとなめ子のハダカ芸術入門」みうらじゅん、辛酸なめ子(新潮社)古典から街角まで、世にあまたあるハダカの芸術を斬る。
「青空ふたり旅」五木寛之、井上陽水(角川文庫)筑豊を故郷にもつ二人が語る青春について、音楽について、仕事、読書、人間、趣味について。
「喰寝吞泄」椎名誠(阪急コミュニケーションズ)人間の4大根源となる営み。誰でも下世話な話ほど知性を必要とする。な、そこのオヤジ。
「一度死んでみますか-漫談・メメントモリ」島田雅彦、しりあがり寿(PHP研究所)死の諸相から導かれる世相を作家と漫画家が解き明かす?
「相対幻論」栗本慎一郎、吉本隆明(角川文庫)ドゥルーズからRCサクセション、タモリなど幅広く批評。当時様々な反響・批判があった。
「存在の耐えがたきサルサ」村上龍(文芸春秋)中上健次、坂本龍一、蓮實重彦、庵野秀明、柄谷行人ら80年代の刺激的な名前が並ぶ。

(順不同)

80年代あたりが多いのはご勘弁を。いわゆる世間でいうリタイアというものをすると、話す相手がどうにも限られてくる。いかんとは思うのだが。
ところでタイパ礼賛の人との会話というのは果たして楽しいのだろうか。

見出しのイラストは「日々みるく」さんの作品をお借りしました。ありがとうございます。


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