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あの頃、映画館で(16)~「モダン・タイムス」から「ラストエンペラー」

20代(80年代)までに映画館で観た映画。プログラムを眺めながらの16回目。

「モダン・タイムス」(アメリカ映画/1938年日本公開)
製作は1936年。日本で公開されたのは大政翼賛会が発足するわずか2年前。当時、配給元のユナイテッド・アーチスツ日本支社の宣伝部員だった淀川長治は封切り時肩書きに「流線型時代」と加えた。海野弘の「モダン都市東京」はすでに遠く、ひたひたと軍靴が忍び寄るこの時代、人々はこの映画をどうとらえたのだろう。手元にあるプログラムの表紙はチャップリンの作品をちりばめているが、1972年「ビバ!チャップリン・シリーズ」としてリバイバル公開された時のもの。「モダン・タイムス」はその第一弾だったようだ。そろそろ映画館も一人で・・・という中学1年の頃。

「矢沢永吉ラン&ラン」(1980年日本公開)
永ちゃんのドキュメンタリー映画。格別にファンというわけではないが、観にいったんだな。30歳を迎えた色っぽい永ちゃんを。1978年に「時間よ止まれ」がヒット、翌1979年には「成り上がり」がベストセラーになっていて、まさに今でしょ!というタイミングだった。ラストを飾るのはバラードの「長い旅」。♩死ぬまでの長い旅だぜ♩と歌う永ちゃんは、死ぬまで「矢沢永吉」を演じ続けるのだろう。

「夜よ、さようなら」(フランス映画/1980年日本公開)
ダニエル・デュバル監督作品。19歳でパリの娼婦となったマリーが、25歳でその世界から脱出するまでを描く。いわゆる「娼婦もの」ではなく「女性の自立」というテーマをクローズアップしていると解説にある。「結婚しない女」などもこの頃だったと思うが、70年代に描かれた女性像と80年代に描かれた女性像では、映画の世界でも確かに大きく違ってきている。

「ラウンド・ミッドナイト」(アメリカ・フランス合作映画/1986年日本公開)
ベルトラン・タベルニエ監督作品。1959年のパリ、ジャズ・クラブ「ブルーノート」で出会った2人の男。バップ・テナーの名手デイル・ターナーと、彼の音楽に心酔する若きフランス人デザイナー、フランシス・ボーリエ。デイルはその盛りをすぎニューヨークからパリに「落ちぶれて」きたのだった。やがて心を通わすようになった二人は・・・。音楽監督はハービー・ハンコック、表題曲はもちろん、スタンダードナンバーが全編にちりばめられた切なさいっぱいの映画だった。

「ラストエンペラー」(イタリア・中国・イギリス・フランス・アメリカ合作映画/1987年日本公開)
ベルナルド・ベルトルッチで皇帝溥儀ときたら、それは興味をそそる。歴史のダイナミズムを大スクリーンで、というのもさることながら堪能したのはベルトルッチ監督ならではの耽美的な映像世界。映画の中では溥儀も甘粕も婉容も架空の人物でいいのだ(映画の甘粕は片腕だ)。壮大な虚構の中に入り込めるのは映画館という器ならでは。

プログラムで紹介されている坂本龍一(甘粕大尉)。「悪人というのはキャプテンクックのように、どこか欠けている部分があるんだ」って監督が主張して、片腕になったとインタビューで答えている。


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