組織犯罪としてのSNSリスク
くら寿司の従業員が公開した不適切行為の動画が話題になっている。
株価の下落だけで27億円もの損失がでているようだ。
対応にかかった費用や、客足が遠のいたことによる減収も加えれば、損害額はもっと大きな額になるだろう。
外食産業では、人件費の安い学生バイトが多く使われている。
不安で頭が痛い経営者も多いことだろう。
対策が急がれる問題である。
ネットを徘徊していると、ちょっと気になるコメントが目に入った。
「競合店からの刺客じゃないのか?」
「株の空売りで儲けてる奴いるんじゃないの?」
「高校生でも簡単に株価操作できちゃんだねぇ」
偽電話詐欺だの危険ドラッグだの、昨今の犯罪は複雑化・巧妙化が進んでいるようだが、今回の騒動も新しい犯罪の形態なのだろうか?
もしそうだとしたら、今回の一件で数億~十数億の資金が犯罪組織に流れたことになる。
恐ろしい話だ。
犯行の流れを想像してみよう。
まずはチェーン店で働く従業員から、頭の弱そうな奴や金に困ってそうな奴を数人ピックアップする。そしてうまく唆したり、小金を握らせたりして、不適切動画をUPさせる。
動画のUPが確認できたら、管理会社の株を空売りするわけだ。
動画をUPさせる相手は特にこだわる必要はない。
大規模チェーン店で働いている人間ならだれでもいいのだ。
こちらの身元がばれないように注意しつつ、複数人に働きかけ、だれか1人でも動画をUPすれば成功だ。
動画が確認できたら次は株の空売りだ。
性急に動くと怪しまれる可能性があるが、急ぐ必要はないだろう。
証券マンたちは政府や日銀の発表は常にチェックして、敏感に反応するかもしれないが、株主でも役員でもない一個人のSNSのチェックまでは手が回らないはずだ。
不適切動画が株価に反映するまでは、数十分~数時間のタイムラグがあるだろう。
動画を確認して10分ほど待ってから空売りを始めれば、「動画を見て取引を始めた」という言い訳ができる。
ついでに投資家コミュニティに動画情報を流してやればいい。
善意の一般投資家が同調して空売りを始めれば、よいカモフラージュになるし、株価の下落も加速して収益もあがることになる。
こうして考えると、動画投稿者は捨て駒として使いつぶされることにはなるが、肝心の犯行グループ側は逮捕される心配はほとんどなさそうである。
犯罪組織側からすると、ローリスクハイリターンの、非常においしいシノギと言えるだろう。
今回のくら寿司の件の裏に、こういった犯罪組織があったのかどうかは分からない。
しかし、上記のような犯行を企む者が出てくる可能性は非常に大きいと思われる。
早急に対策が必要な問題だ。
店舗側としては調理場の管理体制や従業員教育の見直しは当然進めていることだろう。
併せて学校などでも、道徳の授業のような、良識を育てる取り組みが必要なのかもしれない。
また、ネットリテラシーなどの授業の中で、犯罪に巻き込まれる可能性について警告しておいたほうがよいのだろう。
調理場への電子機器持込禁止などで、不適切動画の流出を抑えようとする企業もあるだろうと思う。
ただ、消費者としては、不適切行為そのものをなくす方向で、ぜひ取り組んでいただきたいと切に願う。
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