十代の中絶
少子化が叫ばれる一方で、十代の中絶が1日40件にも上ると耳にした。
厚生労働省によると、平成29年の十代の人工中絶は14128件で、365で割ると約38.7件となる。
望まない妊娠であったなら、無理に生んでも母子ともに不幸であろうから、中絶も仕方ないのかもしれない。
しかし、理由はそれだけだろうか?
少し古いデータになるが、平成15年に発表されたアンケートによると、「産みたくなかった」と回答したのはわずか18.1%である。
39.3%は「産みたかった」と回答し、残りは「迷った」と回答した。
それならば、産みやすい環境さえ整えば、中絶はおそらく半減、うまくいけば1/5まで減らせるはずである。
中絶を選択した理由についてはいろいろあるようだが、経済的問題と学業との両立はやはり大きなウェイトを占めているようだ。
妊娠を懲罰対象として明記している学校はさすがに少ないようだが、現実問題として、妊娠すると退学に追い込まれるケースは多いときく。
13歳とか15歳での妊娠であれば「若すぎる」という意見にも同意できるが、18歳19歳あたりになれば、身体的にはもう出産適齢期である。
本来ならば祝福されるはずの適齢期の女性の妊娠・出産が、どういう訳か忌避され、周囲も本人も喜べずにいる。奇妙なことだ。
十代の中絶の年次推移をみると、平成13年の46511人をピークに、徐々に減ってきているのが分かる。
それはよい事なのだろうが、望まぬ中絶が減ったと解釈してよいのだろうか?
厚生労働省の「母の年齢(5歳階級)・出生順位別にみた出生数の年次推移」を見てみると、十代女性の出産も減っていることが分かる。
平成29年の十代の中絶が14128件であるのに対し、出産は9898人で、中絶を選ぶ女性のほうが依然として多い。
望まぬ中絶が減ったというより、十代の妊娠そのものが減る方向で推移しているようだ。
さて、実際に出産しているのはどのような年齢層だろうか?
先ほども参照した厚生労働省の「母の年齢(5歳階級)・出生順位別にみた出生数の年次推移」を見てみると、30歳以上が過半数を占めている。
本来であればもっとも多いはずの20代前半は、40代並に少ない。
つまり、日本社会における出産年齢は、身体的出産適齢期と、10歳以上もずれているのだ。歪な社会構造といっていいだろう。
しばしば「出産はきつい」「出産は命がけ」などという言葉を耳にするが、適齢期を10年も過ぎて生むとなれば、体への負担が増すのは当然といえる。
少子化について考えるなら、望まない中絶を強いられる女性、負担の大きい高齢出産を選択せざるを得ない女性が多いことを、まず認識しなければならない。
高校生・大学生を含めた若年層への出産・育児支援が危急の課題といえるだろう。
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