「およしちゃん」と「聖☆おにいさん」

一部で話題になっている「およしちゃん」というキャラについて、昨日私の意見を書いたが、「およしちゃん」のtwitterに補足説明が出ていたようなので、私も書き足しておこうかと思う。

公認キャラとして採用されなかった理由については「歴史や文化ある城下町 郡上八幡にはこのような女の子やアニメ風なイラストは好ましくない。害となる」と説明されたとのこと。

ただ、作者としては、「お上」には当時から起こっていたアニメ絵バッシングに対する強い不安があり、「クレームを避けたい」「問題を起こしたくない」という理由から「およしちゃん」のビジュアルを拒絶した、というのが彼らの本音である、と感じた、ということのようだ。

作者の主観が多分に入っているようなので、これを事実として鵜呑みにするわけにはいかないが、事実だとすれば、まさにアニメ絵への不当な非難が活動を萎縮させた一例ということになる。
そういった事例を増やさないように、不当な非難に対してはしっかりと反論していく姿勢が必要だろう。

■「聖☆おにいさん」との比較 ①活動への制限
ちょっと気になったのは、「人柱伝説をモチーフとしているからNG」なら「聖☆おにいさん」だって「アウト」じゃないのか、という主張。

問題となっているのは「PR用の公認キャラとして採用されなかったこと」だったはず。
「聖☆おにいさん」のイラストがキリスト教や仏教の教会・寺院・聖地などの公認PRキャラとして使われている事例はあるのだろうか?

とりあえず私がざっと検索した限りでは見つからなかった。
もし、あるようならご指摘いただきたい。
さしあたっては、無い物として話を進めようと思う。

「およしちゃん」は公認はされなかったものの、自分でPR活動を続けていることから、私人としての活動まで制限されているわけでないことが分かる。
つまり、「モチーフとなった人物と縁の深い史跡の管理者に、公認PRキャラとして採用されていない」「私人or私企業としての活動は認められている」という2点において、「およしちゃん」と「聖☆おにいさん」は同等の扱いを受けている、と言える。

また、仮に「聖☆おにいさん」がどこかで公認キャラになっていたとしても、それは個々の史跡管理者の裁量の範疇の話であり、他の史跡管理者に他のキャラの採用を求める根拠にはならない。

「聖☆おにいさん」を引き合いに出して「およしちゃん」の扱いが不当であると主張するのは無理があるように思う。

■「聖☆おにいさん」との比較 ②モチーフの人物像
お釈迦様もイエス様も、確かにさまざまな受難に臨んでいる。
ただ、彼らはいうなれば反体制派の改革者であり、さまざまな迫害に対して、相応の覚悟と信念を持って臨まれた事と思う。
また、各地に残る史跡は、彼らの活動の成果の一部ともいえるだろう。

およしさんはどうだろうか?
彼女は郡上八幡城に情熱を注ぎ、納得して人柱になったのだろうか?
「およし物語」の泣き声の話からすると、納得していたとは考えにくい。
郡上八幡城もまた、彼女が望んだものとは言い難いのではないだろうか。

このような経緯を考えた場合、お釈迦様やイエス様をモチーフにしたキャラが宗教や史跡の案内をする漫画やポスターがあってもそれほど違和感はないだろう。
しかし、およしさんモチーフのキャラが郡上八幡城の案内をするのは違和感を拭い難いと思われる。

■「聖☆おにいさん」との比較 ③人物の知名度
「およしちゃん」を通して「およし物語」を知ったという人は少なくないだろうが、「聖☆おにいさん」を読んで初めてイエス様やお釈迦様を知ったという人はほとんどいないだろう。

先日のnoteで、私は「およしちゃん」が伝承のイメージを毀損すると指摘した。

お釈迦様やイエス様についてはすでに広く知られており、数多くの研究もなされているため、「聖☆おにいさん」が与える影響は限定的だ。

しかし、地方の伝承と言うのは注意深く保存していかなければ、容易に忘れられたり、改変されたりしてしまう。
郡上八幡城の関係者が多少ナーバスになってしまったとしても、無理のないことではないだろうか。

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女の子のイラストがしばしばバッシングを受け、それに対する不安から創作活動や各種イベントが萎縮してしまう、という状況は非常に残念なことだ。

「およしちゃん」がその事例に該当するのかどうか、現時点では判断がつきかねるが、もし該当するようであれば、今後とも情報発信をしていって欲しいと思う。

ただ、「聖☆おにいさん」の人気を引き合いに出すのは適当ではないと思われる。
現状で同等の扱いである以上、「聖☆おにいさん」を引き合いに「およしちゃん」の扱いが不当と訴えるならば、「およしちゃん」が「聖☆おにいさん」を超越する作品であることを示さねばならない。

また、すでに他の方も指摘していることではあるが、製作サイドのごたごたはキャラクターアカウントで発信していい内容だろうか?
この件に関しては、キャラクターにしゃべらせるのではなく、作者のアカウントで発信していくのが適切ではないだろうか?


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