命の泉
緊急事態宣言解除後、ほどなくして祖父の不幸により久しぶりに母方の実家へと出向いた
そこは自分にとっては故郷ではないが、幼少期より慣れ親しんだ場所ではあったので、足を運ぶたびにどこか懐かしさを感じる
地獄のような日々の中でもそれは同じだった
実の孫は私含めて総勢5名、そして親類の数々
祖父との永遠の別れ
それぞれに、三者三様の思いがあったに違いない
しかしこの集い、悲しみ一辺倒というわけではなかった
新しい命を目の当たりにした日でもあった
孫世代にも子供がちらほらと誕生していた
そして義理の姉弟たちの心身共々、その逞しさにはただただ目を見張り驚かされるばかりだった
首都圏からはるばる、伝染病をばら撒くワケにもいかない出前、遠目に最初に目にはいってきたのは特に体格の良さ
決して太ったというわけではなく、貫禄が出たというのか、聖なるオーラ的なものを察知して身を引いてしまう始末
その後、親世代が酒を片手に死生観や男の四方山話について語り倒している傍らで、私はというと半日〜丸一日近く大人しくしているうちに義理の姉さんの方から子供を頼まれる一幕もあった
いざ抱き抱えてみると、漬物石や50ccバイクのエンジンのようなずっしりとした重みを感じた
この感触を日々味わっていれば、納得のいく感触だ
自分もまた、こうして育てられ、生かされてきたのだと再認識すると、そこには敬意、感謝、感心、尊敬などのあらゆる念が脳裏に渦巻いていた
そしてふと、もはや昔のような無礼は許されないだろうと思うと同時に、どこか遠い存在のようにも思えたが、見渡してみると、そこには何世代にも渡る命の数々が滝のように流れていた
新しい命に触れ、何かしらエネルギーを貰ったような気がする
自分は、この人たちのように子孫は残せないかもしれない
しかしながら、何があろうとそれもまたひとつの人生だ
この先の人生、望まずとも、意図せずとも様々な失敗を繰り返すかもしれないが、取り返しのつかない大失敗だけは許されないと、必ずや、何かしらの小さな幸せは掴んでみせよう
私は自分の仕事を確信してもう一度立ち上がる