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出町座について。または上映作品、企画、あれこれについて。

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出町座について書かれた記事や投稿を集めます。みなさん、書いてくれてありがとう。
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#東京フィルメックス

『アイカ』 移民、貧困、女性、現実

東京フィルメックス-京都出張編- セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督『アイカ』(2018) ロシア、ポーランド、ドイツ、カザフスタン、中国の合作です。これはまた、非常にキツイ映画でした… 階級的弱者の個人を撮り、ハンディの揺れ揺れのカメラでその個人を追い続け、また音楽は全くなく、そしてあのスタッフロールの入り方。映画としてはジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ兄弟のものを彷彿とさせます。自分は彼らの『息子のまなざし』がとても好きです。 その一方内容的にはダルデン

『オールド・ドッグ』 時代の過渡期に消えていくことしかできなかったモノ

ペマツェテン監督『オールド・ドッグ』(2011) 第12回東京フィルメックスで最優秀作品賞を受賞した今作。チベット生まれの監督が作った、故郷の映画です。故郷を目的と言うか、テーマとして撮った映画というのはなんか名作が多いような…これも例にもれず、名作でございました。 中国も西欧的な近代化が進む中、チベットという特異な地域において、内地の富豪にバカ高く売れるチベタン・マスティフ泥棒が横行し、盗まれるならとある男がもっているマスティフを売ってしまい、知らずに売られた父親が怒っ

『タルロ』 無垢なおじさんが放り込まれてしまったただならぬ世界は私が生きるここ

ペマツェテン監督『タルロ』(2015) 小学校の時覚えた毛沢東の語録を丸暗記している程に記憶力がとてつもなく良いが、小学校しか卒業しておらず羊飼いをしており才能の無駄遣いと言われる。そんな「三編み」ことタルロが、必要性もわからないままにIDカードの写真を撮りに街に降ったが、成り行きで知り合った理容師によって見知らぬ世界に触れてしまい、と進む映画。 固定の長回しが特徴的で、会話のシーンにおいては明確な境界線が目立つ時が多い。音楽は薄〜く効果的な場面で鳴っていて情緒を引き立てま

『堀川中立売』ヒモとホームレスは式神の夢を見るか

東京フィルメックス-京都出張篇-『堀川中立売』(柴田剛、2010) 京都の堀川今出川、晴明神社のすぐ近く、かつて陰陽師・安倍晴明が自らの式神を隠していたという一条戻り橋…のその隣。 堀川中立売の堀川第一橋にも、人ならぬ何かが集っている…? そんな口上から始まる、SF×ファンタジー×陰陽師ムービー。 地球侵略をもくろむ大妖怪・加藤the catwalkドーマンセーマン(以下、加藤(笑))を倒すべく、密かに地球に降り立ったギャラクシー・フォースのリーダーは、阿部さんと名乗り、

『ファンさん』

ワン・ビン監督『ファンさん』(2017) アルツハイマー病で寝たきりとなり意思疎通もできないファンさんと、それを取り囲む家族等を記録したドキュメンタリー映画。寝たきりのファンさん、それを囲む親族、或いは電流を流す魚捕り等を長回しでひたすら撮影します。 ワン・ビン監督は『鉄西区』がめちゃくちゃ長いってことぐらいしか知らず、今回はじめての鑑賞でした。『鉄西区』は9時間10時間に及ぶそうですが、アレもこの調子なの…?だったらちょっと観たら気絶しちゃうかな。 死の際を撮ることがで

『フラワーズ・オブ・シャンハイ』 はしゃぐおっさん。映画の美。

ホウ・シャオシェン監督『フラワーズ・オブ・シャンハイ』(1998) 『冬冬の夏休み』などで有名な中国の巨匠ホウ・シャオシェン監督による19世紀末の上海の遊郭で色々する人たちの映画で、原作は古典文学だそうです。上海花じゃなくて海上花なのが素敵です。『冬冬の夏休み』ではガキがはしゃいで楽しいという映画を撮られていたホウ・シャオシェン監督。今回も彼の映画はやっぱり無二だなあと感じました。 この映画では、なんと、全然大したことが起こりません!!いい身分のおっさん達が遊郭に集まって

『昨夜、あなたが微笑んでいた』 カンボジアの若き監督が淡々と収めた生家の収奪

『昨夜、あなたが微笑んでいた』は、ニアン・カヴィッチ監督が、カンボジアはホワイト・ビルディングが日本の企業に買収されその取り壊しを前にした最後の時を撮ったドキュメンタリー映画で、東京フィルメックス2019において学生審査員賞、スペシャル・メンションを獲得しました。これは監督の長編デビュー作で、元はデビュー作にここを舞台にした劇作を作る予定が、取り壊しの予定が早まり急遽これを撮ったそうです。 自分はカンボジア映画は初めて観ました。そして日本という字を見るとは思わず驚きました。見

突然の退去勧告、当事者の監督が記録したドキュメンタリー

東京フィルメックス-京都出張篇-『昨夜、あなたが微笑んでいた』(ニアン・カヴィッチ、2019) 自分ではどうしようもできないような出来事が起きると、もはや一周まわって笑うしかない。 突然、長年住んでいた自分の家から退去することを命じられる。 1963年、カンボジアの首都プノンペンに建てられた集合住宅「ホワイトビルディング」は、2017年、日本企業の買収によって突然取り壊されることになる。その決定を受けて戸惑いながらも、どうすることもできず仕方なく荷造りをする住民たちの様

『草の葉』 ハイセンス群像劇

ホン・サンス監督『草の葉』(2018) 韓国の映画監督の中でも世界的に評価を受ける一人であるホン・サンス監督の映画。店内、特にとあるクラシック音楽の流れるカフェでの男女の会話劇が繰り広げられて進んでいきます。ほとんどが会話劇に終わり、一般的に言われるような明確な展開、ストーリーのようなものはあまりありません。 モノクロの綺麗なショット、遊び心ある階段の上り下り、音楽の妙な効果など、これぞセンス!とばかり次々飛び出してきて、そして起伏がなくて。本当におしゃれで上手で素敵なフ