スポーツ選手と金融リテラシー
スポーツ選手は世の中に存在する多くの職業に比べて、若い時期に偏った資産形成がなされる。
サラリーマンの生涯年収は2~3億円といわれており、単純に約40年の勤務年数で割ると年収500~750万円。基本的に若い頃は給与が低いので、20代は貯金額は平均150万円程度、30歳代でも平均400万円程度だ。これが一般的な資産形成の巡航速度。
しかし、スポーツ選手は、その職業柄、その才能への対価と、常に実力主義というリスクの高い状況を鑑みて年棒は若いころから高くなる。
例えば、J1の平均年棒は2,100万円で、受取る選手の平均年齢は27歳だ。
選手数がより少ないプロ野球では平均年棒3,826万円とさらに高額になる。また野球の場合は。1軍登録されている場合最低年棒が1,500万円となる。
世界に目を移すと、NBAの平均年棒は8億円をこえるので(笑)、資産規模の桁がさらに変わってくる。
つまり、相当な浪費をしない限り、数千万円~数億円単位の貯蓄が20代~30代前半で形成される可能性が高い。その中でもトッププレイヤーであればなおさらだ。
いずれにしても、多くの職業に比べて、若い現役時代に多くの資産を形成できることがスポーツ選手という職業の特徴である。
これは資産形成においてめちゃくちゃ強い。
なぜなら、手元資金を運用するほうが、ビジネスで稼ごうとするよりも、資産が増える確率が高いからだ。
(詳しい説明は、少し昔に話題になったピケティの『21世紀の資本』に書かれた資本論に譲る)
それにもかかわらず、意外にも大金を稼いだスポーツ選手が金銭的な問題に直面する話をよく聞く。
極端な事例はあるが、アメリカのスポーツ界では、資産がなくなり、自己破産するスポーツ選手が後を絶たない。
ある記事では、NBAやNFLについても下記のようなデータが示されている。
Sports Illustrated estimated 60% of former NBA players are broke after five years of retirement, while 78% of National Football League retired players suffer financial hardship after two years.
このような状況が起きてしまう理由として、周りのスター選手の金銭感覚が若い頃から染みついてしまう、負けず嫌いな性格が家・車等の格を競わせてしまう、スポーツ選手への浪費を進めるセールスが多い、などが挙げられる。
繰り返しになるが、アメリカの事例は日本に比べて極端だ。
しかしながら、多かれ少なかれ、世界中のスポーツ選手が、短期間のうちに一般では考えられない貯蓄をし、それを浪費してしまう(浪費させられてしまう)リスクをはらんでいることは間違いない。
そんな状況を鑑み、米国では、スポーツ選手の金融リテラシー向上を目指す動きが生まれている。
特にNBAでは、若い選手に対して金融教育を実施するような仕組みになっているようだ(拒否権などがあるかは不明)。また、クリスポール選手にみられるように、選手自身が金融リテラシーの重要性を語る場面も増えている。
日本でも、川島永嗣選手が、金融教育事業を行うファイナンシャルアカデミー社の公式アンバサダーになり、こんなことを語っている。
「投資をしないリスク」にもっと目を向ける必要。「10年後の自分」が「今の自分」と同じことがないように、少しづつでも勉強を続けていく必要がある。
そう、お金についての正しい知識をつけることで、お金に働いてもらうほど楽な将来の備えはない。
普通のサラリーマンではできないから、うらやましい(笑)。