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【シャニマス】まだ笑える、まだ歩ける/七草にちか【ネタバレ感想】

※アイドルマスターシャイニーカラーズに2021/04/05実装の新アイドル『七草にちか』の共通コミュ(W.I.N.G.関連コミュ)ネタバレ感想です。

※このアイドルのコミュについてより詳しく考察するには、共通コミュ以外に以下のコミュを読む必要があると思います。

○illumination STARS 感謝祭共通コミュ

○イベントコミュ きよしこの夜、プレゼント・フォー・ユー!

○イベントコミュ 明るい部屋

当記事ではこれらのコミュに関するネタバレも若干含みます。

イベントコミュは2021/04/05現在無料で読むことができますので、本気で気になる方は是非読んできてください。

※ネタバレを気にしない方はそのままどうぞ。




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足に合わせるんじゃない、靴に合わせるんだ

まず、七草にちかの共通コミュでは明らかに対比となっている関係性があります。にちかとプロデューサー、八雲なみと天井社長です。

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七草にちかが憧れ、アイドルを志した最大の理由。それが彗星の如く現れ、消えて行った伝説的なアイドル・八雲なみでした。現在では歴史に埋もれてしまった存在ですが、アイドル・八雲なみのステージはまさしく完璧なものだったらしいです。

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7と8、地の草と天の雲。考えすぎかもしれませんが、名前の対比は創作上最もわかりやすく仕込みやすいところです。嫌らしい対比ですね。

そして作中の描写から、この八雲なみこそが若い頃の社長がプロデュースし、結果的に潰してしまったアイドルに違いないでしょう。

図1

「足に合わせるんじゃない、靴に合わせるんだ」

かつての社長は八雲なみを"生かす"ために、この言葉を使いました。しかしこの言葉こそが八雲なみを苦しめ、ついには殺してしまいます。時を越えた現在、この呪いのような言葉が今度は七草にちかを苦しめることになります。

七草にちかは至って普通の女の子であり、歌やダンスに特別な才能がないことが作中繰り返し描写されます。

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そしてこの才能のなさは、七草にちか本人も自覚していました。それでもW.I.N.G.で優勝したい。そんな彼女が取った作戦は、憧れのアイドル・八雲なみの真似をすることでした。

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これは『アイドル・八雲なみ』という合わない靴を無理矢理履こうとしてる図に他なりません。身の丈に合わない靴を履こうとした七草にちかは、徐々に苦しめられていくことになります。

これは当然のことです。『アイドル・八雲なみ』は、八雲なみ本人ですら履くことのできなかった靴なのですから。


『アイドル・八雲なみ』という名の靴

先ほど『アイドル・八雲なみ』が素晴らしいアイドルであったことは示しました。ではステージの外、普通の女の子である八雲なみはどのような少女だったのでしょうか。

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作中での描写から察するに、普通の女の子・八雲なみは、七草にちかと似た少女だったと思われます。少し子どもっぽくて、特別な才能などない平凡な少女。天井社長曰く、そのままでは(芸能界で)"生きる"ことができない少女。

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それゆえに当時の社長は、『アイドル・八雲なみ』という名の靴を無理矢理履かせるという手段に出ざるを得なかったのでしょう。

起動に乗って売れて行く八雲なみ。聴衆はその足元なんてわざわざ見ません。八雲なみが無理して靴を履いていること、その痛みや苦しみは誰も想像することができませんでした。

図2

シーズン4コミュ『may be music never end』から、七草にちかはまるでアイドルであることに苦しみ、「終わり」を望んでいるかのような発言をするようになります。

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図26

W.I.N.G.敗退コミュ『<who>』を読めばわかりますが、この時点で彼女は『アイドル・八雲なみ』の靴を履き続けることが不可能だと察していたのでしょう。

図24

八雲なみ本人ですら履けなかった靴を、七草にちかという別人が履けるはずがありません。ですが素足の七草にちかでは、ステージに立つことはできません。

それでもステージに立とうと努力する、あるいは立たなければならないから努力せざるを得ないと言い換えても良いでしょう。この時の彼女には、アイドルを続けることそのものが苦痛となってしまっていたのかもしれません。まるでかつての八雲なみのように。


七草にちかが本当に憧れたもの

七草にちかは八雲なみの再演なのでしょうか。アイドルを辞めさせてあげることが、彼女を救うことになるのでしょうか。

私はそうではないと思います。彼女はたった2つだけ、やり方を間違えてしまっただけなのです。

第一に、彼女は自分自身を才能がないと評価してしまいました。

確かに七草にちかに歌やダンスの才能がないことは事実です。しかしそれは彼女がアイドルになれない理由にはなりません。何故ならシャニマスは過去にこういう言葉を残しているからです。

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アイドルの誰もが、特別であり、普通の女の子。歌がうまいことやダンスができること。それらは確かにすごいことですが、アイドルになるための必要条件ではありません。

ではアイドルであるために必要なものとは?それは後述するとして、七草にちかに例え才能がないとしても、それがアイドルになれない理由にはなり得ないのです。

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第二に、W.I.N.G.に勝利する手段として『アイドル・八雲なみ』の靴を履くことを選んだこと。

確かに七草にちかは八雲なみに憧れていたでしょう。ですがそれは『アイドル・八雲なみ』の靴を履きたい、という意味ではありません。

私も最初は勘違いしましたが、彼女はあくまで目先の優勝を求めた結果、『アイドル・八雲なみ』の靴を履くという"手段"に辿り着いただけです。"目的"ではありません。

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誰かの靴を借りることでしかステージに立てないと思い込んでいるのは、他でもない彼女自身です。事実、作中でプロデューサーは何度もにちかに呼びかけます。「本当にこんなことをしたかったのか?」と。彼女は返答を詰まらせます。

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彼女が本当にしたいこと、なりたいアイドル像は他にあるのです。無理矢理靴を履こうとして苦しむ現在の状況は、彼女が本当に望むところではないのです。


<彼女>のプロローグ

七草にちかは社長室で八雲なみの白盤を見つけました。この白盤は世間にリリースされたタイトル『そうだよ』ではなく、『そうなの?』と疑問形で書かれています。

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七草にちかはこの時点で察したはずです。八雲なみが、本当は自分の憧れたアイドルではないことを。彼女もまた悲しい存在であったこと。そして悲しいからこそ、好きになったのかもしれないということを。

図28

八雲なみは七草にちかと同じ平凡な少女でした。天井社長が靴を履かせなければ"生きる"ことができないほどに。だからこそ彼女の歌が、にちかの心に深く響いたのかもしれません。

プロデューサーもまた、社長の過去の過ちを知りました。彼は七草にちかに靴を履かせないでしょう。

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では七草にちかは、これから"生きる"ことができるのでしょうか?彼女はこれから、幸せになることができるのでしょうか?

七草にちかはW.I.N.G.を優勝しました。ワンダー・アイドル・ノヴァ・グランプリ。新人アイドルの登龍門と呼ばれ、その厳しさは今まで何度も語られてきました。それははたして、過去のアイドルのコピーが優勝できるような場所だったでしょうか

図13

私はそうは思いません。笑顔でいなくても良いと言われて望んだ舞台で、勝った彼女の表情は笑顔でした。

これは八雲なみの笑顔ではなく、七草にちか本人の笑顔です。

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先ほどぼかしたアイドルになるための必要条件。それはプロデューサーが語ってくれています。アイドルで有り続けるために、”生きる”ために必要なただ一つの条件。それは「アイドルであることに喜びを見出すこと」。

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アイドルがただ彼女を苦しめるだけのものに変貌してしまったのならば、この世界から離れることが彼女にとっての救いとなるでしょう。

しかし彼女は笑顔でした。トイレで無理矢理表情を作って、やっと笑顔になれたような少女が、倒れる瞬間にまで演技ができるでしょうか?

今はまだ無意識かもしれません。ですがきっと彼女は、アイドルそのものに喜びを見出しているはずなのです。それに気付くことができたのなら、彼女は八雲なみをも超える素晴らしいアイドルになれる"才能"があるはずです。

図21

『アイドル・八雲なみ』への憧れという名の呪いは解かれました。

七草にちかの物語はここから始まります。

喜びは今から見つければよいのです。

苦しみのない道を進むことも、悲しみに寄り添う歌を歌うことも、彼女が自由に選択して良いのです。

だって、彼女の足はまだ歩けるのですから。

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『そうだよ、にちか』

七草にちかからアイドルを取り上げることが慈悲だとはどうしても思えませんでした。

それだけを原動力にこの駄文を書き上げました。

良くも悪くも彼女は純粋です。自分で自分自身の足をすり減らしてしまうほどに。それゆえに「みんなの妹」だなんて紹介の仕方をしたんじゃないか?と思っています。

シャニマスの描く厳しい芸能界で、七草にちかは本当に"生きて"いけるのでしょうか。

かつて天井社長は無理矢理靴を履かせることしかできませんでした。

思うだけではどうにもならない壁に、これから何度もぶつかるかもしれません。

ですがプロデューサーなら社長を越えられると信じています。才能のない悲しい少女だからこそ、才能があるアイドルには歌えない曲が歌えると思います。変わらなくてもよいのです。それはずっとシャニマスで語られていることのはずです。

現にW.I.N.G.という壁は乗り越えられたのです。これがたまたまラッキーだったから…ではないことは理解していただけるはずです。

なので私は悲観しません。七草にちかのアイドル人生は幸福であると、今度は自分の足で立ち、笑顔を見せてくれると信じています。

その時が来て、この駄文が駄文以下のものになっても、なんとか見逃しといてください。


シャニマスの絵と文章は信頼できる、とネクロノミコンにも記載があります。

良質なノベルゲームを求める方や、こんな文章を読んで畏れ多くも七草にちかのその後に興味を抱いた方は、是非アイドルマスターシャイニーカラーズを初めてみてください。

何とぞよろしくお願いいたします。


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