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【シャニマス】泣かない理由/樋口円香【ネタバレ感想】

※アイドルマスターシャイニーカラーズに2020/04/06実装の新キャラクター樋口円香の共通コミュ(W.I.N.G.関連コミュ)ネタバレ感想です。

※泣くほど長いです。

まだ読んでない人は先に見て来なさい。こうかいしますよ(断言)




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樋口円香は透明を望む

「シャニマス初の狂犬枠」、樋口円香の登場直後に広まった評判である。

事実、彼女はPのやることなすことに噛み付いてくる。だが樋口円香は狂犬の如く、見境なく噛み付いているわけではない。彼女にはPに攻撃的にならざるを得ない理由がある。

樋口円香は、透明が透明のままでいることを望んでいるのだ。

シーズン2コミュ『バウンダリー』には、Pが「夢はないのか?」と尋ねるシーンがある。

図3

この場面に限らず樋口円香は「普通に」「ほどほどに」といった言葉を多用する。アイドルの仕事だからほどほどで良いというわけではなく、日常からそういった思考であることがmorning10でわかるだろう。

図10

樋口円香は意図して透明であろうとしている。透明な人生、すなわち山も谷もない、普通でほどほどな人生こそが彼女の理想なのである。努力して特別になろうとする「アイドル」は、その理想と正反対だ。

スカウトコミュ『夜に待つ』は、浅倉透がすでにアイドルになった後の話だ。浅倉透が悪徳事務所に騙されていないかを、樋口円香が確認に来るという内容になっている。

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いくら幼馴染とはいえ、「浅倉透がアイドルになる」ことは、樋口円香に直接関係のないことだ。にもかかわらずPや事務所といった「アイドル」に関係する事柄に対し、攻撃的な言動をとる。

図4

樋口円香は透明な日常を望んでいる。そしてその日常には、幼馴染の浅倉透も含まれているのだ。

「浅倉透がアイドルになる」ことは、透明な日常に余計な色が差すことを意味する。アイドルの幼馴染であることを、否応なく意識せざるを得ないからだ。

図11

morning9は浅倉透とPのツーショット写真が送られてくるというギャグのようなコミュだが、浅倉透がアイドルになることで、樋口円香の日常にも影響が出るであろうことがわかるだろう。

樋口円香がアイドルを好ましく思っていない理由はわかった。では何故彼女はアイドルになったのだろうか。単に悪徳事務所から浅倉透を守るため、だけでは理由として薄いように思える。

図6

その答えはアイドルに対する攻撃的な言葉に隠されている。シーズン1コミュ『カメラ・レンズに笑う』では、路上ライブを行うアイドルを酷評する場面がある。

図7

この言葉は単に「アイドル」を貶すものではない。見下そうとするニュアンスが含まれている。

ここでシーズン3コミュ『二酸化炭素濃度の話』から言葉を1つ引用しよう「強い言葉を使う時は、そう思い込もうとしている時」。樋口円香本人の言葉だ。

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彼女の口からこのような言葉が出るのには理由がある。とどのつまり、自分もそうであるということに他ならない。「アイドル」を見下す言動をとるのは、そうであってほしいから。樋口円香が「アイドル」に抱いている感情は嫌悪ではなく「恐怖」なのだ。

ここから彼女がアイドルになった理由が見えてくる。『カメラ・レンズに笑う』は宣伝写真を撮影するコミュだが、彼女は「アイドル」として初めての撮影を「普通」に振る舞ってみせた。写真の出来栄えは上々である。

図9

情熱など必要なく、普通にしていればそれなりの結果が返ってくる。それは樋口円香の望む透明な日常に他ならない。彼女はアイドルに「楽な商売」であって欲しかった。日常となんら変わりはない、恐れるようなものではないことを確認したかった。だからアイドルになったのである。


"怖い"

平凡な人生を望み、アイドルに恐怖を抱き、強い言葉で攻撃することで怖くないと言い聞かせている。樋口円香のパーソナリティをこう読み取ると、「狂犬」というより「臆病者」に見えてくる。

先にシーズン4『心臓を握る』を挙げる。樋口円香はこの場面で取り繕うことはなく、はっきり「怖い」と訴えかけている。

図1

期待を背負って、必死に生きること、自分を何度も試されること。いずれも透明な人生とは正反対のものだろう。彼女の恐怖の対象はやはり「アイドル」なのだ。

恐怖の始まりは、シーズン2『バウンダリー』で初めてファンの存在を意識した瞬間だろう。『バウンダリー』とか、境界線という意味。ここから彼女は変化し始める。

図13

自分に期待するファンの存在に疑問を覚えながらも、彼女はその期待に応えようとするかのように自主レッスンという行動に出る。

図14

続けてシーズン2突破コミュも、ファンの存在に主軸をおいたものだ。自分宛てに届いたファンレターに対し、まんざらでもない感情を抱いている。しかし持って帰ることは拒否するのだ。

図15

図16

この時点ですでに、樋口円香にとってファンの存在は「恐怖」となっている。

樋口円香は臆病者だ。知らぬ間に背負っていた期待とはいえ、それを裏切り今まで通りの「楽な商売」を続ける勇気はない。樋口円香は期待に応えざるを得ないのだ。

シーズン3コミュ『二酸化炭素濃度の話』にも樋口円香の「恐怖」を象徴するような出来事がある。これは樋口円香がとあるオーディションを受けた帰りのコミュになっている。

選択肢次第だが、このコミュには『カメラ・レンズに笑う』でも登場したあの路上ライブアイドルが登場する。

図20

あのアイドルは樋口円香と同様のオーディションを受けたが、不合格を察したのか泣きだしてしまっていたのだ。

樋口円香にとってあのアイドルは、透明な日常と正反対の道を選んだ「アイドル」を象徴する存在だった。彼女は路上ライブで自分を売り込むくらいには必死に努力をしていた。にもかかわらず彼女はオーディションに落ちてしまう。

必死に生きても報われるとは限らない。残酷だが十分あり得る話だ。だからこそ樋口円香は必死に生きることが「怖い」のだ。


さよなら、透明だった日々

『二酸化炭素濃度の話』に戻ろう。オーディションの感想を聞かれた彼女は空気の話をする。

図17

このコミュのタイトルは『二酸化炭素濃度の話』である。すなわちこれは「空気の話」であると同時に、「二酸化炭素濃度の話」なのだ。

結論から言うと、このコミュは「有機化合物の完全燃焼」をなぞって話が展開している。これは次のような式で表される。

有機化合物 + 酸素(O2) → 二酸化炭素(CO2) + 水(H2O)

「空気」と「二酸化炭素」というヒントからこの式にさえ辿り着いてしまえば、その後の理解は容易い。樋口円香ので話した内容を式に当てはめることで、式は次のように書き換えられる。

他のアイドル(有機化合物) + 酸素 → 二酸化炭素 + 涙(水)

アイドルにとってオーディションが如何に重要なのかは語るまでもない。勝ち残ろうと誰もが「燃えて」いる。

有機化合物である「アイドル(ヒト)」が「燃え」ることで「空気(酸素)」が消費され、室内の「二酸化炭素」濃度が高くなる。中には完全燃焼し、「泣き」出す子もいる。樋口円香はそれに居心地の悪さ、息苦しさを感じたのだ。

樋口円香に上記の式は当てはまらない。彼女は「燃えていない」。いつも通りにオーディションへ臨んでいる。

図18

普通にしていればそれなりの結果が帰って来る。彼女にとってアイドルはそういう認識だったはずだ。にもかかわらず、樋口円香は自分が合格するとは思っていない。もはや彼女はアイドルを「楽な商売」とは思っていないのだ。

しかし「燃えて」いたアイドルたちを抑えて、樋口円香はオーディションに合格してしまう。

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樋口円香はこの結果を好ましく思っていない。彼女自身、望んでいたのは自分の不合格だった。もっと言えば不合格を理由に、アイドルを辞めたいと思っていたのだろう。

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樋口円香は自分がアイドルに相応しくないと思っている。自分は他のアイドルたちのような「熱意」を持っていない。にもかかわらず勝ち進んでしまうことは、彼女にとって「怖い」ことなのだ。

図23

しかしこれは過小評価だ。事実として樋口円香はオーディションを勝ち進み、シーズン4まで駒を進めてきた。才能はあったのだろう。運もあったのかもしれない。しかしそれだけでここまで勝ち残れるほど、アイドルは「楽な商売」ではない。

無題1

熱意があればいいわけでも、技術があればいいわけでもない。アイドルには、その両方が必要だ。ここまで勝ち上がってきた彼女は、とっくに「熱意」を宿しているのである。

図25

ずっと隠れて努力してきたことをPから指摘された瞬間に、樋口円香は気づいたのだ。必死に「アイドル」を生きている自分に。

それは辞める勇気がなかったという臆病で消極的な理由だったのかもしれない。だがどんな理由だろうと彼女はファンの期待に応え、必死にレッスンを積み重ね、何度もオーディションを乗り越えてきた。それはかつて酷評していた「熱意」あるアイドルの姿そのものだったのだ。

図28

樋口円香は自分が思う以上に、アイドルという「色」に染まっていた。


泣かない、これからも

樋口円香は幾度も「自分は泣かない」ことを主張する。

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「泣かない」話題は『二酸化炭素濃度の話』で初登場する。つまりこれも有機化合物の完全燃焼式をなぞり、燃焼した際に発生する水に涙を喩えている。

樋口円香は「泣かない」。それは「燃えていない」からではない。彼女が完全燃焼式に当てはまらないのは、まだ「燃え尽きていない」からだ。

図29

W.I.N.G.決勝は終わりではない。その結果が勝利でも敗北でも、樋口円香の物語は続いていく。彼女の「熱意」が尽きることはない。

図26

優勝コミュ『蛇足』で、彼女は優勝の喜びを口にする。

彼女は今まで恐怖を理由に「アイドル」を続けてきた。だがここでようやく喜びを知ることができた。これからは喜びを理由に「アイドル」を続けていけるだろう。

図31

最後に、彼女は初めて「プロデューサー」と口にする。

図30

この瞬間に、樋口円香は本当の意味で「アイドル」になった。

期待を背負い、必死に努力し、熱意に気付き、喜びを得た。

透明な人生に「色」が差した。

そしてその「色」は燃え尽きることなく、また明日からも続いていくのだ。


とびっきり臆病で、誰よりも強かった君へ

樋口円香はW.I.N.G.を通じてようやく「アイドル」になれました。

彼女に灯った熱情は、これからも燃え続けることでしょう。

正直なところ、彼女を理解するのは苦労しました。大きく解釈がわかれるところもあり、なので今後の公式供給によっては、ここの文章がミスター虚言癖になる可能性も十分考えられます。

その時が来ても、この駄文が焚書されないことを願っています。


シャニマスの絵と文章は信頼できる、とギリシア神話にも記載があります。

正直、私は樋口円香に関して何か書く気はなかったのですが、気付いたら筆を走らせ、一度下書きが消えても書き切るほどには引き込まれました。彼女のコミュを見ているとぶん殴りたくなります、Pを。


最後に、

もしこんなジョロキアを生で食わされるかの如き記事を読んで、樋口円香と共に熱意を抱き続ける決心をした方がいらっしゃったら、、それが何より光栄なことです。

アイドルマスターシャイニーカラーズを、この記事を書いている時点では見登場の2人を含むnoctchillのみんなを、そして樋口円香を、何卒よろしくお願いいたします。



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