Big Apple Productionについて②
「Big Apple Production Vol.Ⅱ」はシリーズで一番人気。それは緻密はエディット&カットアップで制作されたメガミックスが聴けるから。メガミックス〜マスターミックスといえばDouble Dee & Steinskiの「Lesson」シリーズだが、このBig Apple Production Vol.Ⅱも負けてはいない。ミックスしたのはThe Latin Rascals。
当時全盛だったターン・テーブルを使ったスクラッチによるミックスではなく、彼らはリール・トゥ・リールによるテープ・エディットを武器にしていた。ツートラサンパチ(2トラック38センチ)の磁気テープを細かく刻み、再生し、仕上がりを確認して、また刻みくっつけていくという言葉にすれば簡単だが、実際はくしゃみひとつで全ての苦労が水の泡になってしまうようなデリケートで気の遠くなるようなエディット作業でこのミックスを作り上げた。
WILL C.blogより転載しました。
このレコードがリリースされた84年の時点で存在したサンプラーは、フェアライトCMIやシンクラヴィア、イミュレーターといったハイエンドな機材だけ。85年に、サンプラーの民生機(?)エンソニックのミラージュやAKAI S612が発売されている。
つまり、このミックスはサンプリングではなく全てテープ編集とスクラッチだけで構成されているのだ。それを踏まえて改めてこのミックスをじっくり聴いて欲しい。テープ・エディット職人の技を。
現行DJやアーティスト、プロデューサー達もこのレコードの選曲やミックスに影響を受けてきた。ヒップホップ好きにはお馴染みのDJ、Stretch ArmstrongがThe Latin rascalsとテープ・エディットについて気合の入った文章をアップしているので参照していただきたい。
彼らは、その緻密なエディット・スキルが自身評価されWKTUやKISS FMのマスターミックス・ショーを毎週担当していた。メンバーのAlbert Cabreraは、このBig Apple Production Vol.Ⅱについて語った。
「当時ラジオ番組用のメガミックスをいっぱい担当していた。毎週マスターテープを納品していたんだ。だから、そのマスターをラジオ局の担当者か誰かが盗み出してプレスしたんだじゃないかな。僕にはよくわからないよ」
真意のほどはわからないが、このレコードが84年から現在まで何度もリプレスされてマーケットに出回る理由がわかっていただけただろうか。続く、、、
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?