世界はたまご愛にあふれてる! たまごは偉大な立役者/スギ アカツキ
ホテルや旅館のビュッフェ、皆さんはお好きでしょうか? 子どもから大人まで、好きなものを好きなだけ取って食べることができる、自由で楽しい食空間ですよね。
我が家には4歳の幼児がいて、彼に食の楽しさを主体的に感じてもらうべく、ビュッフェスタイルの食事を選択することが多くなっています。
実は先日滞在した青森県・奥入瀬渓流のホテルのビュッフェがとてもよかったので、その理由を振り返りながら、「たまご」の存在を確認することにします。
星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル 青森りんごキッチン
それでは、たまごが使われている料理を見ていくことにしましょう。
まず、朝食の定番「ふわふわオムレツ」。ここのレストランではツナや帆立を混ぜてふんわり仕上げたオムレツに、トマトクリームソースや和風出汁ソースをかけて、焼きたてを提供してくれます。目の前で作ってもらえるのって、心もおなかもときめきますよね。
続いては、「りんごのパンケーキ」。青森りんごキッチンという名前からも予想できますが、さまざまな料理の中で、青森県産のりんごをたっぷり堪能することができます。
中でも、黄金色にふんわり光るりんごのパンケーキは看板メニューの1つ。この焼き色や風味は、たまごからの賜物です。そうです、たまごは、果物とも好相性なのです。
続いては、菓子パン。たまごとバターがたっぷり練り込まれて焼き上げられたデニッシュに、マシュマロ、生クリーム、イチゴがちょっこりトッピングされています。サクサク、フワフワな食感。たまごとバターが生み出す濃厚な香りで、食欲もアップ。
最近ではたまごアレルギーの人も食べられる、たまご不使用のパンも多数出回るようになり、多くの人々がパンを楽しめるようになりました。
むしろそんなフラットな環境だからこそ、たまごがパンに与えてくれるおいしさを再確認できるのかもしれません。
もう1つ嬉しかったのが、メロンパン、クリームパン、カレーパンといった日本の代表的な菓子・調理パン類が、すべて“ミニサイズ”で並んでいること。ビジュアル的な可愛さに心をつかまれるとともに、「いろいろなものを少しずつ食べたい」という願望(これって、もしかしたら女性だけ?)を、しっかり叶えてくれているホテルの提案力に感激しました。
ここでもたまごはしっかり活躍。
たまご不使用のパンとしては、色とりどりのベーグルやフランスパンなどがラインナップされていました。
さてさて次は、ご当地ラーメン。朝ラーこと帆立昆布の朝ラーメンです。
昆布と帆立の旨味が染み出した塩味スープは、青森ならではの魅力でしょう。そして、たまごが練り込まれたちぢれ麺が、魚介の旨味をしっかり受け止めてくれています。
このように、旅や出張などでラーメンを楽しめば、日本各地の食文化の違いを、おいしく体験することができるでしょう。その土地ごと、お店ごとに個性は十人十色ですが、共通しているのはたまごを使っているという点。麺にも具材にも欠かせない、立派な大黒柱なのです。
さあ最後は、日本の食文化としてつつましく歴史を作り上げてきた「ふりかけ」。戦後、たまごがまだ高価だった時代に、“ご飯のおとも”として登場したのが、「のりたま」でした。そして豊かになった今も、ふりかけの人気は健在。特に「たまご味」は中心的存在として君臨しています。
さらに海外の観光客からも人気が高まっているようで、和食材を使ったふりかけが種類豊富に登場していますが、不動の人気を誇るのはやっぱりたまご。世界中でお米が広く食べられるようになりつつあり、ふりかけの可能性も無限大になっています。
さてさて。こうやって見ていくと、うん、やっぱりたまごはしっかり活躍してくれていますね。サラダからメイン、スイーツまで、時には華々しく目立つように、時にはひっそりと使われています。たまごびいき、たまごファンとしては誇らしい気持ちにさせられます。
これからも新たに生まれるたまご料理の数々に、楽しいアイディアやおいしい幸せをもらえることでしょう。食の世界において、たまごはいつも輝いています。
この連載では、「たまごが一番大好きな食材」という食文化研究家のスギアカツキさんが、その経験と好奇心を生かしたさまざまなアプローチで「たまご」を掘り下げていきます。【たまごのはなし】は、ほぼ隔週火曜日に掲載します。
文・写真:スギ アカツキ/食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)、女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。
「みなさん、一番大好きな食べ物ってなんですか? 考えるだけで楽しくなりますが、私は『たまご』という食材に行きつきます。世界中どこでも食べることができ、その国・エリア独特の料理法で調理され、広く愛されている。そしてなにより、たまごのことを考えるだけで、ワクワクうれしい気分になってしまうんです。そこで、連載名を『たまごのはなし』と題し、たまごにまつわる“おいしい・たのしい・うれしい”エピソードを綴っていきたいなと思います」
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