デンマーク伝統のオープンサンド「スモーブロー」を作ってみよう/スギアカツキ
少し前になりますが、デンマーク・コペンハーゲンに行ってまいりました。もちろん旅の目的は、地元のおいしいもの探し。
“世界一幸福度が高い”ともいわれる国に、一体どんな食べ物があるのでしょうか……?
コペンハーゲンの街並み。静かで美しい世界が優しく広がります。
以前、美食業界の中でスカンジナビア料理がブームを起こしたような記憶があります。
つるんと綺麗なお皿に、アシンメトリーな盛り付け。
あのような料理は果たしてリアルなんだろうか?
なんていう疑問を持ちつつ現地で出合ったのが、「スモーブロー」というオープンサンドでした。
スモーブロー(Smørre brød)とは、デンマークの伝統料理で、ランチなどでおなじみのオープンサンドのこと。
スモーとはバターのことで、ブローとはパンを指すそうです。
えっ、パン料理に見えない?
そうなんです。
スモーブローは、パンがほとんど見えないのが特徴とも言えます。
基本的なポイントとしては、次の3つ。
・薄いライ麦パンを敷く。
・ハム、エビ、たまごなどのたんぱく質食材がたっぷり乗っている。
・野菜が立体的に盛り付けられている。
絵画のような美しい盛り付けに、言葉も出ないほど心をつかまれてしまいました。
そしてもう一皿は、レアな牛肉タルタルが主役になった欧州ならではの味(日本では滅菌方法の違いにより、このような生食スタイルを提供されることがほとんどありません)。
もちろんパンは見えませんが、2皿に共通するのは、“たまご”の存在感。
はい、元気に輝いていますよね。
大好きなたまごが、スモーブローでも元気に活躍していて、私はとっても嬉しくなりました。
さてさてこのスモーブロー、見た目の美しさだけではなく、栄養バランスから考えてみても優秀。
たんぱく質をしっかり摂取できることや、糖質を摂り過ぎないような設計になっていることが気に入り、帰国後、早速作ってみることにしました。
まず用意すべきは、ドイツのライ麦パン。
デンマークはドイツに隣接していることもあり、スモーブローにライ麦パンを使うのが主流なんだとか。
最近では日本のスーパーやパン屋さんでも購入することができるようになっています。
もし手に入らなければ、薄切りの胚芽パンなどでも良いでしょう。
そして次に用意すべきは、たんぱく質食材。
たまごの他、スモークサーモンや生ハム、サラダチキン、フレッシュチーズ、カニカマ、魚の缶詰……。
改めて並べてみると、意外と気軽にそろえることができるものばかりです。
愛しのたまごは必須としつつ、あとは気分でチョイスしていくことに。
サーモンを控えめに置きつつも、からしマヨネーズで和えたツナと、ほぐしたカニカマをたっぷり乗せて、カッテージチーズを散らし、キュウリやスプラウトを飾ってみました。
気分はすっかり絵画教室。
どうやったらおいしそうに見えるか、楽しみながらトッピングをすることができます。
たまごはもちろん半熟をチョイスして、自己満足な私。
でもこれって万人への正解はないですから、自分の好きなように描くことがおいしさへの道なのです。
また、具材や皿をちょっと変えるだけで、まったく印象の違う仕上がりに。
そうです、茹で豆や果物など、冷蔵庫にあるものを寄せ集めたりするのも醍醐味ですが、こうやって実験してみると、やっぱりたまごがないと寂しいですものですね(笑)。
皆さんもスモーブローに“たまご”をお忘れなく。
心穏やかに、楽しい気分で作ってみてくださいね。
この連載では、「たまごが一番大好きな食材」という食文化研究家のスギアカツキさんが、その経験と好奇心を生かしたさまざまなアプローチで「たまご」を掘り下げていきます。【たまごのはなし】は、ほぼ隔週火曜日に掲載します。
文・写真:スギ アカツキ/食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)、女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。
「みなさん、一番大好きな食べ物ってなんですか? 考えるだけで楽しくなりますが、私は『たまご』という食材に行きつきます。世界中どこでも食べることができ、その国・エリア独特の料理法で調理され、広く愛されている。そしてなにより、たまごのことを考えるだけで、ワクワクうれしい気分になってしまうんです。そこで、連載名を『たまごのはなし』と題し、たまごにまつわる“おいしい・たのしい・うれしい”エピソードを綴っていきたいなと思います」
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