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蓮沼執太『〜ing』@資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリーで開催されている蓮沼執太のインスタレーションに行ってきました。

地階に降りるとまばらに散る一面の金属。
これ、全部YAMAHAの楽器の廃材らしい。廃材といえども楽器の上を土足で歩くのは実に背徳感のある行為で、終始ヒヤヒヤしっぱなしだった。爪先で蹴ると隣の部品と擦れ合ってくすぐったそうにカチャカチャと音が鳴る様子を見て、別に音楽なんてそんなに高尚なものじゃないのかもしれないな、と良い意味で音楽に対してカジュアルになれた。

個人的な意見だけど、現代芸術の展覧会って「色々やってみたけど結局人間の力ではどうにもならないことを知る」みたいなやたらペシミスティックな結論に収束する場合が多い気がするんだけど、これは「"音"だけでどこまで飛べるか試してみよう」というポジティブな気概の感じられるいい展覧会だった。音という不可視の現象で植物を震わせる(=可視化する)という装置も、見た目は滑稽だったけど希望と好奇心に溢れたわくわくする作品だった。

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「音は生まれたら消えていきます。音楽と呼ばれるすべての行為は、この消えていく音を聴き出そうとする、人間の欲求なのかもしれません。音楽は僕たちの生活の中から生まれていて、個人から出発して、個人へ戻ってきます。」

というのは蓮沼さん自身が書かれたライナーノーツの抜粋だけど、消えていく瞬間の美しさを捕えて逃さまいとする生き物の本能的な情熱を肯定する素敵なメッセージだな。

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