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その報せを確認したのは長めの正月休みを終えて地元から東京に帰る新幹線の中だった。いつものように何の気なしにTwitterを見ていたら突如タイムラインが「え?」とか「なんで?」といった短い投稿で埋め尽くされていき、あ、これは何かあったなと直感で悟った。私のフォロワーはセクシー以外のグループとの掛け持ちも多いから他のグループで何かあったのかな〜と当初は脳天気に考えていたが、あまりに全員がツイートするものだから、ん?これはもしかして我らがセクシーゾーンのことか?とやや構えながらメールボックスを開くと「大切なお知らせ」がファミクラから来ていた。このタイミングで大切なお知らせ?あ!ついに新しいグループ名が決まったんだ!とドキドキしながらURLを開いたら、まず初めに「僕はソロとして新しい道に進みたいと思います」という文言が目に飛び込んできた。この時点で「僕」は多分健人くんとのことだなと推測できた。山田みたいな感じでソロ活動始めるのかな?くらいの印象で、この時はまだ事の重大さに気付いてなかった。セクシーゾーンからこれ以上誰かが抜けるなんてことは私の予測リストに1ミリも予定されていなかったからだ。しかし読み進めていくうちにどうやら何かが違うと分かってきた。目を滑らせながらやっとの思いで全文読んだけど、それでもまだ分からなかった。健人くんがソロ活動することは分かったけど、それとグループを抜けることとを繋げられなかった。今思えば脳が理解するのを拒否していたんだと思う。でもその後すぐに動画を再生し、画面に映るメンバーの沈鬱な顔を見て、その時初めて全てを理解した。あ、健人くんがセクシーゾーンからいなくなるんだ、と。血液自体の温度が下がるようなゾッとするような寒気に襲われ、文字通り何も考えられなくなった。その後すぐに東京駅到着のアナウンスが車内に流れ、押し出されるようにホームに出たものの、しばらくその場から動けなかった。ノイキャンのイヤホンをしてたけど、いつもより何も聞こえなかった。

何で今?という憤りが一番初めに来た。正直、昔からグループじゃなきゃダメな人だとは思ってなかった。どちらかというとソロ向きの人だと思っていた。でも辞めるならもっと前だと思ってた。具体的にいうとまず2015年、その次が聡ちゃんのお休み、その次がマリウスの卒業。こんな幾多の困難を乗り越えて辞めなかったんだからもう一生やるんだと思ってた、セクシーゾーンを。念願だったドーム公演も無事成功させ、さぁこれから!って時に何でいなくなる選択をしたのかがさっぱり分からなかった。
ここ数年、事あるごとに「30歳」を意識していたのは知っていた。何かにつけて「20代最後の」を枕詞にしていたし、27歳の時には「心からアイドルと言えるのは30歳まで」的な話を雑誌でしていて、アイドル中島健人が何よりも好きだった私は大きなショックを受けたのを鮮明に覚えている。だから30歳の節目に何かしらの事柄が起きることは覚悟していた。結婚か、俳優メインで動くのか、はたまたそのどちらもだろうなとぼんやり予想はしていた。でもその数年かけて醸成してきた私の覚悟の中に"グループを抜ける"という想定はなかった。だってセクシーゾーンはあまりにも健人くんそのものすぎたから。私にとってセクシーゾーンから健人くんがいなくなることはディズニーランドからミッキーがいなくなることと同義であり、マリリンマンソンからマリリンマンソンが脱退することと同義であった。とにもかくにも概念の根本を揺るがすクライシスであった。

やりたい事いっぱいあるんだろうなぁ。好奇心旺盛でいつだって元気いっぱいで、新しい世界に飛び込むのが大好きで、人が好きで、流行りの映画やアニメや音楽、メンバーの仕事はもちろん、友達の仕事もいつも隅から隅までチェックしていた。神様、健人くんにだけ48時間与えてるよね?と本気で疑っていた時代もあった。でもそんなことはあり得なくて、健人くんだって私と同じ24時間の制約の中で生きている。そして365日で1歳年を取る。そして我々普通の人間と同じように80歳くらいで死ぬ。だから健人くんが今やりたいと思ってることをやるには何かを諦めなきゃいけなかったんだろう。人生が短すぎるのが悪い。

本当はずっとグループにいてほしかった。グループにいたまま全てを手に入れてほしかった。"セクシーゾーンの中島健人"としてアイドル界の頂点に立ってほしかった。でもほかでもない健人くん自身がそれは出来ないと判断した。私はただのファンだから、この決断を受け入れるかここで離れるか、その二者択一しかない。私の決断は良くも悪くも彼らの今後に何も作用しない。シンプルな2択なのにこんなにも苦しい。私はどこまで行っても健人くんが大好きだから受け入れてついていく以外の選択肢はハナからないけど、それでも苦しい。

今は本当のことは誰にも分からないけど、いつか話してくれるといいなと願う。
(2024.1.9)

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