『ぼくは麻理のなか』
人間を神格化した人間と神格化された人間の話。気軽な感じで見れるラブコメかと思ってたら意図せず登場人物全員の自意識がねじれこじれした話でつい一気見してしまった。分類的には「渇き。」に近い雰囲気。
一番ハッとしたのは、小森の人格が入った麻理が意図せずエロ本を見てしまうシーンで、「吉崎さんの眼球でそんなもの見ないで」と依が怒って麻理の目を覆うシーン。依は麻理の外面だけ見て分かったフリしてる連中たちを軽蔑して生きてきた人間だけど、内面を分かったつもりでいる方がよっぽどグロテスクだと思った。実際、麻理は依が想像していたような清廉潔白な天使では無かったし。依は保健室でのたった一回のあの宗教体験のような抱擁のみで麻理を自分の理想で塗り固めた神様に仕立て上げてしまった。なんだかコンサートで貰ったたった一回のファンサを永遠に抱きしめて生きるオタクのようで笑えなかった。
かくいう私も最近の渡◯の不倫関連の話題で汚くて下品なワードがトレンドに並ぶのを見るたびに「健人くんにこんな汚いもの見せたくない」と嫌悪する。健人くんはきっと私より芸能界の汚いところや理不尽なところをたくさん見てるし知ってるのに、それでもなお勝手にそんなことを願う。それはハイエナと喧嘩しているライオンを守るために必死で戦うネズミのようで、滑稽だなぁと思う。そして次の瞬間我に返り、「あぁ、でもきっと私よりもっと汚いものを見てきているよね」と当たり前のことに気付き、その事実にまた勝手にショックを受ける。なんとも救いようがない。