信仰と血縁が主なテーマだけど、テーマからして弩級の中上イズムですね。主人公熊野にも行ってるし。
読み終わった後に感想サイトを巡回したら「理解出来なかった」という感想が4割くらいあって純粋に羨ましいなと思った。この世の中にはこれが分からない人生があって、そういう人とも一緒に社会をやっていて、そして平然とやってゆかねばならないのだ。
とにかく文体が独特で読み進めるのに苦労したけど慣れたら早かった。『推し、燃ゆ。』を読んだ時にも感じたことだけど、宇佐見りんは個別の事象を世界の全部のように表現する能力に非常に長けている。結局人生なんて個々の感情の連続でしかない上に、それがその人にとっての世界の全てなんだから、まず個人の世界をしっかり書き切らない限り大きなテーマの作品なんて永遠に書けっこないのよ。だから個人史が書けない人間が書くスケールの大きな話って本当に薄っぺらい。そしてこれを10代で書き切ったのはやはり化け物じみてる。あと宇佐見さんのSNS(Twitter)への温度感の高さと解像度の高さは一体何なんだろうね。
印象に残った部分は上に引用した通りだけど、一番心を深く打ったのはここかも。