アイドル
9月は手のひらに山盛りにあった宝石が指の隙間からボトボトこぼれて床に叩きつけられて割れていくのをただ歯を食いしばって眺めていることしか出来ないような、怒りと虚無とで充満した月だった。数年間オタクをしてきた中でこれまでもキツいなとか苦しいなとか思う場面は色々あったけど、2023年9月はまさに地獄と呼ぶにふさわしい季節だった。だった、と希望を込めて過去形にしたけど序章にすぎないのかもしれない。
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健人くんが個人インスタに7/29に投稿したYOASOBI「アイドル」のリールが9/16に1,000万回再生を達成した。オタクが取り憑かれたように見まくったのは勿論だけど、それだけではこの短期間のうちにこの数字に達することは出来なかったはずで、オタク以外の、なんとなく健人くんを知っているという層も再生したのだと思う。世間の考えるアイドル像と健人くんの提示するアイドル像が一致しているんだと思えた出来事だった。誰もが目を奪われていく、まさに完璧で究極のアイドル。
昔からそうだけど、健人くんはアウェーの時ほど強烈に輝く。大型歌番組でたくさんのアイドルやアーティストに囲まれた時のパフォーマンスは、見る者全ての視線を自分に引き込んでやろうという虎のような目つきをしていて、私がこの人の担当になろうと初めて決意したのもMステで大勢のJr.に囲まれながらひときわ強烈な閃光を放って歌い踊る健人くんを見つけた時だった。
そして今回の騒動に関しては世間全体がアウェーだった。パソコンのシャットダウンボタンを押したかのようにドラッグストアからは彼がモデルをしていたリップの広告がプッツリと消え、出演予定すら発表されていなかった番組の撮影中止(のちに延期と訂正があった)という悪意に満ちたネットニュースが上がった。こんな状況だから仕方がない、と濁った感情をグッと押し込む反面、なぜ健人くんがこんな仕打ちを受けなければならないのだろうと悔しかった。そんなファンの悔しさを掬い上げるようにその昼健人くんが更新したストーリーはオタク以外のアカウントでも称賛され、そしてバズった。周囲が暗ければ暗いほど星がより一層強く存在感をあらわすように、健人くんもこんな状況でこそひときわ鮮烈に輝いた。金輪際現れない一番星の生まれ変わり、というか一番星そのものだった。
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以前、QRゾーンでこんな話をしていた。
聴きながら、健人くんらしい自認だなぁと唸った。見せられないもの、言えないこと、教えられないこと、私が想像するよりもきっとたくさんあると思う。ウソが本当になったり、本当がウソになる世界で、私たち受け手は真実を知り得ない。アイドルが見せたいという意志を持って見せてくれるものだけを真実だと信じて受け取って生きていくしかない。今だってきっと言えないことがいっぱいあると思う。それでも今もこの場所でアイドルとして活動を続けている状況に健人くんの答えを見たし、今後どんな風に転んだとしても健人くんとセクシー達の選択した覚悟についていきたい。
たとえこの先この業界に何が起きようと、土台の全てがひっくり返ろうと、健人くんがアイドルとして、ジャニーズとして活動してきた時間には間違いもウソもなかったし、それを無にする権利は誰にもない。それだけは言っておきたくてこの文章を書いた。いつか君は全部手に入れる。まさに最強で無敵のアイドル、それが中島健人なのだ。