【小児がんを治せる病気にしたい】deleteCが推す 奥野友介先生のがん治療研究とは?
突然ですが、deleteCでは「推し研!」始めようと思います。”研究や研究者”を”推す=応援する”で「推し研!」です。どんな推し方ができるかdeleteCメンバーで夜な夜な考えている今日この頃です。
deleteCは、これまで4人の研究者を寄付と啓発を通じて応援してきました。(2021年10月現在)とは言っても、まだまだ些少なものです。テレビのように大きな影響力を持った発信ができているわけでもありません。それでも微力なりに何かもっとできないかと考えたとき、「推し」という言葉がひらめきました。もっともっとがん治療研究を推し進めたい、応援したい!アイドルを応援するみたいに、がんの治療研究を後押しできないか、応援うちわだって作っちゃうぞ!という勢いで、本気で推して推して推しまくりたいと思っています。
そのためには、まずは研究者や研究内容をもっと知っていただこうと、日頃からdeleteCを応援してくださる方々に向けてオンラインミーティングを行いました。その様子も含めてこれから少しずつdeleteCが推すがん治療研究の紹介できればと思います。
オンラインミーティング「推し研!~あの研究をいちから知って、もっと推そう!」第1回
奥野友介先生
名古屋市立大学 大学院医学研究科 ウイルス学分野 教授 研究内容:小児がんの子どもを遺伝子検査で助ける研究
★★★まずは、deleteCが制作した奥野先生の動画をご覧ください。★★★
2019年2月に行われた「deleteC~HOPE」で、deleteCは集まった寄付金の中から100万円を奥野先生に贈らせていただきました。
日本では年間2000人くらいのこどもががんに罹ります。小児がんは適切な治療をすれば70%近くの患者が治る病気ですが、悲しいことに助からない命もあります。
大人のがんと大きく違うところは、小児がんは診断が難しいということだそうです。正しい診断をし適切な治療をするためには遺伝子検査がとても有効で、奥野先生はその研究を続けていらっしゃいます。
今回の「推し研!」では、奥野先生は手書きのイラストで小児がんとご自身の研究についてわかりやすく説明してくださいました。
奥野先生の研究とは?
奥野:そもそも、がんとは人間の細胞が持っている遺伝子に間違いが発生することで起こります。なので遺伝子のどこに間違いがあるかを調べることによって、がんの正体や性質を知ることができるのです。
奥野:大人のがんは、肺にがんがあれば肺がん、大腸であれば大腸がんと比較的はっきりと診断できますが、こどもの場合はたとえ肺に塊があったとしても肺のがんなのか、周辺の筋肉からなのか、他の臓器でできたがんが飛んできたのか、血液のがんが肺に塊を作っているのか検査では判らないことがあります。そんな時に遺伝子の検査で遺伝子の間違いが判れば、がんの正体を知ることができます。
奥野:遺伝子を全部調べて間違いを見つけられれば、その間違いにダイレクトに効く「分子標的治療法」という特効薬を使うことができるのです。
奥野:治癒できた4歳の女の子の白血病は、日本で3人しか見つかっていないものです。1歳のこどもに見つかったNUTがんは正体不明のまま手遅れになってしまうケースが多いのですが、早く見つけられて助けることができました。
小児がんは種類が多いのに、患者の数は大人に比べると少なくて、一つ一つの症例を解明していくのはとても大変なことです。検査で正体が不明だったこどものがんでは、すべての遺伝子を調べて治療法を明らかにできることを目指しています。
奥野:がん細胞を調べてそれに効く薬を開発するのには10年から20年かかります。その間に当事者の患者は亡くなってしまいます。薬の開発と並行して遺伝子の検査をすれば、1か月くらいで適切な治療法を患者に届けられる可能性があります。
これが私の研究イメージです。
しかし、小児がんにおいて、今の研究費ですべての遺伝子を検査するのは難しく、通常の検査を受けても判らず追加検査が必要になってからようやく遺伝子検査をするのが現状です。
早い段階で診断がつけば治療成績は上がります。
年間2000人くらいの小児がんのこども全員に遺伝子検査を受けさせるためには、遺伝子検査が一回約30万円でできるので、年間6億円あればこどもたちに最先端の科学を届けることができるのです。
奥野先生(右)と進行の藤松(左・deleteC事務局)
奥野先生への質問コーナー
Q:コロナ禍は研究にも影響しましたか?
A:ほとんどの人の興味はコロナに向いているので、従来の研究に対する寄付は集まらなくなっています。研究そのものも、ステイホームで大学に行けないので進んでいません。幸い遺伝子解析は影響なく、患者さんの検体を提供いただいて解析を進めています。ただ、確実に解析できた症例は増えているのですが、新たな治療法にはまだ繋がっていません。
Q:研究は地道にコツコツ進めるしかなく、なかなか陽の目も見られないと聞きます。
A:研究者ができることはどんどん増えていて、30年前に比べたら何十倍もいろんな研究ができています。私自身もこれまで11種類の病気を解明してきています。それでもなかなか発信する機会が持てていません。
Q:deleteCで寄付や応援メッセージなどを届けてきましたが、いかがでしたか?
A:細々と研究を進めている中でも、時々、反応があったり電話や手紙が来たりします。頑張ってくださいというメッセージをもらえると勇気づけられるし、それがあるから頑張れます。
寄付文化が根付いて欲しいと思います。アメリカやドイツでは市民が大学に寄付をすることが当たり前になっています。「推し研!」が寄付文化の第一歩となって、地域に根ざした文化になっていくと思います。
Q:奥野先生は、deleteCの第一回の受賞者です、表彰式や派手な応援はいかがでしたか?
A:本当にうれしかったです。ほとんどの研究者は一回も表彰されることなく研究生活を終えていきます。ほめてもらえる機会が一回あるだけでも大きな応援になります。みんなの応援が届いてその嬉しさが続くことで、自分も発信していけます。研究は辛いことが多いけど、応援は続けていく力になります。
Q:「推し研!」についてはどんな期待を?
A:すぐには思いつきませんが(笑)こうした発信する機会をもらえることは嬉しいです。ほとんどの研究者にはないんですよ。
これからも、こどもたちに最先端の科学が届くことを実現させるために頑張っていきます。
「推し研!」に参加した最年少の5歳児♪手作りうちわで応援してくれました。「『おしけん!』かいいんばんごう1ばんです!」
協力(文 石田敦子 企画・編集 山口恵子)