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【ちょこ論】ChatGPTもGeminiも親戚?AIモデル基盤Transformerとは。

Attention Is All You Need」は、AI分野に革命をもたらした一冊とも言える論文です。

この論文は、従来の自然言語処理(NLP)モデルが抱える課題を解決する新しいアプローチを提示し、GPTやBERTといった現在の最先端AIモデルの基盤をなすTransformerという共通の機構に基づいており、論文の意義は現在のAIの構造を理解するために不可欠なものといえます。

AI技術の未来を語るうえで避けては通れないこの画期的な研究を、ちょこっとのぞいてみましょう!


タイトル: Attention Is All You Need

発表日: 2017年6月12日

この論文が解決しようとした「困りごと」は、従来のAIモデルの3つの課題

  1. 学習に膨大な時間がかかる

  2. 並列処理が難しい

  3. 長い文章の意味を正確に理解できない

画期的な解決策 - 「Transformer」の誕生

Transformerとは?

「注意」だけで高度な言語処理を実現する革新的な仕組み。

特徴

  • 従来のAIモデルと全く異なるアプローチ

  • 「注意機構」のみを使用

  • 驚くほど速く、正確に言語を理解できる

踏み込み!(詳細)

著者らは「Transformer」と呼ばれる新しいネットワークアーキテクチャを提案しました。Transformerの最大の特徴は、RNNやCNNを完全に排除し、注意機構(Attention)のみを使用している点です。Transformerの主要コンポーネントは以下の通りです:
Multi-Head Attention: 複数の注意機構を並列に使用することで、異なる観点から入力を解釈します。
Positional Encoding: 入力シーケンスの順序情報をモデルに組み込みます。
Feed-Forward Networks: 各層で非線形変換を行います。
Layer Normalization: 各層の出力を正規化し、学習を安定させます。


Transformerは大きく分けて、エンコーダーとデコーダーの2つの部分から構成されています。エンコーダーは入力シーケンスを処理し、その特徴を抽出します。デコーダーはエンコーダーの出力を基に、目的のシーケンスを生成します。


具体的な仕組み

「注意機構」の動作イメージ

例:「私は人工知能が好きです」を英訳する場合

  1. 「私」→ "I"

  2. 「人工知能」→ "AI"

  3. 「好きです」→ "love"

各単語の重要度を瞬時に判断し、最適な英訳を生成します。

踏み込み!(詳細)

Attentionとは

Attentionは日本語だと、「注意機構」と訳されるように、「重要な情報に注意を向けさせる」というアルゴリズムになります。

例えば、「私は人工知能です。」という文章を「I am an artificial intelligence.」という文章に翻訳するときに、「I」という単語を推論するときは、「私」という単語に「注意」を向けさせ、「artificial intelligence」という単語を推論するときは「人工知能」という単語に「注意」を向けさせるといった具合です。

【引用】SOARIG社の論文解説がわかりやすいと思いましたので掲載しておきます。
https://www.soarig.co.jp/post/%E8%AB%96%E6%96%87%E8%A7%A3%E8%AA%AC-attention-is-all-you-need%E3%82%92%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E3%81%99%E3%82%8B
上記は推論時のベクトルの重み(各単語の関係)を矢印で表現した図になります。 「I」という単語と「私」という単語は他の単語に比べて、より強く紐づいており、「artificial」という単語も同様に「人工知能」という単語と強く紐づいています。 注意を向けさせるというのは、そのベクトルの重みを大きくするということであり、このベクトルの重み(矢印の太さ)を学習するのがAttentionというアーキテクチャになります。


驚くべき実験結果ー性能比較

  • 従来モデル比で2倍以上の翻訳精度

  • 学習時間を1/3に短縮

  • 8つのGPUで3.5日の学習

踏み込み!(詳細)

英独翻訳タスクでは、BLEUスコア28.4を達成し、既存の最高結果を2ポイント以上上回りました。
英仏翻訳タスクでは、8台のGPUで3.5日間学習させた後、単一モデルで新たな最高BLEUスコア41.8を記録しました。

この技術がもたらした革命ー波及効果

  1. ChatGPTなどの生成AIの基盤技術に

  2. 画像・音声処理にも応用

  3. 世界中のAI研究を加速

なぜ重要か?5つのポイント

  1. 超高速処理:
    Transformerは、文章を一気に処理できます。これは、従来のAIが一つずつ単語を処理していたのと大きく異なります。例えば、長い小説を読むのに、人間が一文字ずつ読むのと、ページ全体を一度に見るのとの違いです。この方法で、AIの学習速度が劇的に向上しました。

  2. 文脈をよりよく理解:
    Transformerは、文章の前後関係をより正確に理解できます。例えば、「彼は本を読んだ。それはとても面白かった。」という文で、「それ」が「本」を指していることを簡単に理解できます。これにより、AIの言語理解能力が大幅に向上しました。

  3. 多目的に使える:
    Transformerは、翻訳だけでなく、文法チェック、文章要約、質問応答など、様々な言語タスクに使えます。まるで、一つの道具で料理も大工仕事もできるような万能ツールのようです。

  4. 最新AI技術の基礎:
    ChatGPTのような最新のAI技術は、Transformerを基礎にしています。Transformerは、現代のAI技術の「エンジン」のような役割を果たしています。

  5. 言語以外への応用:
    Transformerの技術は、言葉を扱うだけでなく、画像認識や音声処理にも使われ始めています。例えば、写真の内容を説明したり、音声を文字に変換したりするAIにも応用されています。


専門用語を簡単に

なぜ今この論文?

ちなみになぜ今この2017年のTransformerがホットなのかというと、東京発のAIベンチャーSakana AIが、大規模言語モデル(LLM)が自律的にタスクを理解し、リアルタイムに適応する新しいフレームワーク「Transformer2」を発表したためです。

結びに

「Attention Is All You Need」がAI分野においていかに画期的であるか、その基礎から応用までを確認してきました。
この論文がもたらしたTransformerの仕組みは、自然言語処理のみならず、画像認識や音声処理といった多岐にわたる分野で応用され、AI技術の未来を形作っています。そして、この基盤の上に構築されたChatGPTやGeminiといった最先端モデルが、私たちの生活や産業を進化させています。

今後もAI技術は進化を続ける中で、Transformerが果たす役割はますます重要になっていくでしょう。
もしかしたら新たな基盤モデルも出てくるかもしれません。
この論文を一歩深く理解することが、AIの現在と未来をつなぐ鍵となるはずです。今後もちょこちょこ、ちょこっと論文を見ていきます!
次回もお楽しみに!

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