ネギを背負ったオノボリが永遠の都ローマでカモられた(220708)
あれっ?おかしいなぁ、どこいっちゃったんだろう?ピン札で300ユーロキッチリ入れておいたのに綺麗さっぱり消えた。現金は全く使っていないんだけどどうしても思い出せない。俺も最近ヤキがまわっているからな、と一日の記憶を巻き戻した。あっ!ここだと問題のシーンがフラッシュバックした
観光客で芋洗いのスペイン階段をありがたやと物見遊山してスパーニャ駅からメトロA線へ。地下鉄に乗り込んだ瞬間、邪悪なローマ市民の娘さんAが何やら俺に話かけてきた。この娘さんに数秒注意が向いてしまった。結局何が言いたかったのかよくわからないまま娘さんAは車内に消えていった。混み合う車内で立ったまま、次の駅に着く直前に俺はなぜかポケットから財布をボトって足下に落としてしまった。ん?とか思ったけど特に気にせず財布を拾いポケットに突っ込んだ。となりにいた嫁さんが気をつけてねと言った。何気ないシーンだけど後から振り返ってみるとここだ
これ財布が帰ってきたから思い出せたけど、そうでなければ無理ゲーだわ。100%知らんうちに落としてしまったで処理されるよ
被害は現金だけなのが不幸中の幸い。こんなこともあろうかと必要以上の現金は分けてあったから旅は続行可能。ソーテーの範囲内だと涙目で自分を慰めた
翌朝またテルミニ駅で乗り換え、乗車時に誰かと軽くぶつかりゴメン。混んでるから許して。しばらくして(推定) 善良なローマ市民の娘さんBが話しかけきた「財布スラれていない?さっき男が僕のお尻のポケットから財布抜き取ろうとしていたわよ」
すわ、またか?しかしこの娘も敵か味方か判別不能。警戒レベルをオレンジに維持したまま目立たないよう慎重に財布があることを確認し大丈夫と伝えると「よかったわ。スリが多いからね。ローマを楽しんでね」と言って消えていった。全然気づかないわ。さすが世界に誇る無形文化遺産のローマのスリ。お見事なお手前でございますなぁ
AF0291 KIX-CDG (220707)
無知、無教養、無産階級の僕は消費主義という資本家のプロパガンダに煽られ続け、なけなしの蓄えをはたいて生涯一度の大旅行第二弾、イタリア・スペイン・フランスのラテン系南ヨーロッパ諸国へ旅立つのだ
富める者は投資し、そうでない者は消費する。それでいいさ。異国の街を散策し定番の郷土料理をいただき、お決まりの観光名所を訪れてみる。たしかに単なる消費活動の一形態に過ぎないが、実際に感じた街の雰囲気は空気は体験として僕の心や記憶に刻まれていく。知識から経験への昇華だ
記憶をたどってみると、上海、マニラ、香港、クアラルンプールで暮らし30の国や地域を訪れた。結局、どこにいても僕は異邦人気取りで何事にも斜に構えて深くコミットしてこなかったチキン野郎だった
いろいろ回り道した結果、その土地にしっかり根を張り生活基盤を築いて暮らすというどローカルな生き方が正解だといつしか思うようになった。隣の芝生は青いのか、歳をとって保守的になったということだ
関西空港発のフランス航空291便の三等硬座に家族三人仲良く並んで目の前のスクリーンで現在の飛行位置を表示するインタラクティブマップを操作しながらわいわいとどうでもいい話で時間を潰すというのも普段は出来ない素敵なことだ
飛行ルートは思いっきり世界情勢の影響をうけ、いつものシベリア横断の直線的な最短ルートではなく、ゴビ砂漠、カザフスタン、黒海、トルコ経由の南回りルートをこまめに進路調整し大回りしながら16時間の長時間フライトがようやく終盤に近づき経由地のパリ国際空港へ到着した
空港でバカ高い夕食をいただき合掌。乗り継ぎのローマ行きAF1004便の搭乗ゲートは年末のアメ横のようにたくさんの荷物を抱えた人々でごった返す。マスクつけているとお前ビョーキ?と言われそうなくらい肩身が狭い。搭乗を待つ長い列の最後尾でいつも通り予定より大幅に遅れている搭乗手続きのアナウンスを気長に待ち続けた
AF0292 CNXLD (220717)
フィレンツェ発ミラノ行きの赤い新幹線フレッチャロッサ9544号は意外にも定刻運行でトスカーナの大地をかっ飛んだ。晩飯は老舗レストランへ行きリゾットアラミラネーゼをいただく。これ絶品。家に帰ったら自分で作ろう。そんでガレリアの雄牛のチンポコかかとで踏みつけぐるぐる回っておいた
灼熱のマドリードの目抜き通りのバス停の温度表示は51度!湿度が10%台で日陰では涼しい危ないパターン。ジモティは炎天下日傘もささないで露出多めに涼しげに闊歩していていた
そしてこの旅の最後は憧れのスリの都パリ。空港からタクシー飛ばして猛ダッシュで医療研究所へ直行しPCR検査を受けた後ステキな街を散策した。涼しくて気持ちいい夏の北海道という感じだ
観光コンテンツてんこ盛り。今回の目玉はルーブル美術館。事前予約しているのに入場まで30分待ち。フランス帝国の偉大さを象徴するような馬鹿でかい館内にエジプトやら古代ギリシャやら中世の美術品の石像、絵画、一部武具や遺跡を移築したようなものまでお宝が所狭しと並んでる
この旅で美術館を何ヶ所か訪れたが、石像系はなんとなく分かるが西洋絵画は宗教的、歴史的素養がないと味わいが深まらないと理解した。ようは感動しない。意外なことに抽象画のほうが見ていて想像力が掻き立てられ鑑賞していて楽しい。その意味ではマドリードのソフィア王妃芸術センターの現代アートの方が僕には合っているようだ。よくこんなの思いついたよなというフィクションの方が映画でも小説でも絵画でも創造性に感銘を受けるよね
愛好家・好事家にとってはお宝に囲まれた至福の空間なんだろうが、ど素人な僕には似たようなのが大量にありすぎて短時間では消化しきれそうにもなく、ウゥエップ状態。オノボリらしくミロのビーナス、サモトラケのニケ(Just do it)とモナリザを拝んでおこうと方針転換。モナリザの前では黒山の人だかり。すげえ!皆んなスマホや一眼レフで写真に収めようとして長い順番待ちだ。折角目の前にあるんだから肉眼で楽しんだ方がいいんじゃないの?家に帰ってから図書館に行って画集を借りてきて味わった方がいいじゃん
モナリザをバックにバッチリセルフィキメる西洋のお嬢様方のほうがお綺麗でサマになってますねと鼻の下をのばしながら思わずそっちのほうにデレデレ見惚れてしまった。現地で体験しないとわからない新しいモナリザの楽しみ方を発見!
シメは定番の凱旋門の真下にある偉大なるフランスを偉大たらしめた唯我独尊俺様将軍ドゴール様の6月18日のラジオ演説の金属レリーフ前でありがたやと合掌。「ドイツ軍の電撃線に蹴散らされナチのポチのヴィシー政権が勝手に休戦しようとしてるけどオメーらこれで終わりか?ゼッテーちゃうやろ?やる気のあるやつ俺について来い!どんなやつでも歓迎するぜ。フランスの抵抗の炎は消えてないし、消しちゃあかんよな?俺は明日も同じこと言い続けるぜ。ヨロシク!」とBBCのラジオを借りてフランスの皆様へ呼びかけた。当然当時は誰お前?メンドクセーやつと誰も聴いておらず、録音さえされていないが、このオッサンの粘り強い俺様力でなぜかフランスを戦勝国に捩じ込み、戦後核武装し米ソに並ぶメンドクサイ第三極の地位固めたのだ。ま何にせよ徒手空拳でここから始めたありがたい場所だ
決まりきった日常を脱出しおなじみの秩序を後にし遠方の土地を旅してその土地の空気や匂い、文化や規範、風習にふれ知識を経験に昇華させ記憶に刻んでいくという旅の目的は今回もかなえられたはずだ。こうして虎の子の貯蓄を気前よく散財したロマン主義的消費主義な欧州旅行は終わりに近づいた
ちょっとしたトラブルも粘り強くいろいろな人に相談し解決しつつ無事に帰国の途についた。13時発の関西空港行きAF292便のチェックインを済ませL44ゲートで満員御礼の搭乗のアナウンスを待ったが待てど暮らせど搭乗が始まらない
3時間待たされた上で操縦士がコロナ陽性となり代替の操縦士が濃厚接触者のクルーと仕事したくないと乗務を拒否したというフランスらしいストレートな説明で結局欠航。はっきり言ってくれたほうがいいよね。荷物を回収し再度長い列に並び直し、代替スケジュールは提示されないままとりあえず空港ホテルをあてがわれようやく19時にチェックイン完了
トーゼン折り返しの明日の大阪発AF291便も欠航。さあフランス航空、代替便を飛ばすのか他に振り分けるのかお手並み拝見だ
こうして非日常的な新たな経験がもうひとつおまけに付いてきた。しかも勘定は航空会社持ちで楽しめる無料コンテンツとして。大変ありがたいことでございますなぁと合掌した