④夫の転勤のたびに、私の仕事は「リセット」?
(写真)福岡市の東平尾公園で、「お花見とおもちゃのはなし」という講座をしました。背中には娘がいます。
夫は新聞記者です。結婚したときはちいさな商社に勤めていましたが、子どものころからの夢は新聞記者で、転職しました。転職のために商社を辞めたので、新婚時代に収入ゼロという事態がありましたが独身時代の私の貯蓄で乗り切りました。新聞社は、会社の意向による転勤が2~3年ごとにあります。いわゆる「転勤族」です。
おもちゃの民間資格を取得してすぐ始まった講師活動は順調で、講師依頼は月に2~5回ほど。コンスタントに入るようになって「仕事」として成り立ってきたなと思っていたころ、夫が福岡県へ転勤になりました。もう少しこの土地で仕事を続けたいという思いがありましたが、お腹に第二子である娘がいたこともあり、夫と息子と一緒に福岡の宗像市へ引っ越しました。
新しい土地では、私の講師のキャリアなど誰も知りません。また一からのスタートです。息子を連れ、娘がいるお腹を抱えて、地域の子育て情報誌のスタッフになったり、子育てサロン立ち上げに関わったりしました。そこからまた少しずつおもちゃの講師依頼をいただけるようになりました。
しかし3年経つとまた夫が転勤で引っ越しになりました。新しい土地、福岡市へ移り、一からのスタートになりました。
「夫は転勤するたびにキャリアを積み重ねていくのに、私はその度にゼロに戻る。頑張っても一定のレベルまでしか仕事ができない。しっかり根をはった仕事をしたい」
単身赴任の夫を支える妻という姿、母であることだけでなく、わたしという女性の生き方、⦅私⦆の人生の行く末を眺め、考えるようになっていました。
また、講師で伺ったときに「今日、紹介してくれたおもちゃはどこで買えますか?」と聞かれることが増え、おもちゃを紹介するだけでなくお渡しまでしたいなと思い始めました。離島や地方へ講師に行くことも多く、紹介しているような木のおもちゃを売る店がない地域では「どこで買えばいいですか」と尋ねられました。
自分でおもちゃ屋ができたら、おもちゃを手渡しできるのに…と考えることが増えました。当時は息子が年長、娘が2歳です。夫に、転勤の度にリセットされることへの思いや、「将来、おもちゃ屋になれたらいいなと思っている」と(漠然とでしたが)素直に話しました。じっ と聞いていた夫は「家を建てよう。そこにおもちゃ屋さんを作ったらいい」と言いました。ずっと「転勤族だから持家はなし!」と腹を決めていたので、家を建 てるような貯金はありません。今まで現実的に計画してなかったし・・お金ないし・・と、できない理由ばかり言う私に、夫は「お金のことは何とかしよう! 僕が新聞記者になるという夢を叶えたいと言ったとき、応援してくれたでしょ?今度は君が、夢を叶える番だよ。やろう!」と言ってくれました。
こうして、2006年、自宅の新築に合わせて『木のおもちゃ・おひさまや』を開店することが決まりました。