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デジタルトークンの法的分類(暗号資産・ステーブルコイン)

2023年の資金決済法改正により導入されたステーブルコイン(「電子決済手段」)を含めた、デジタルトークンの法的分類の整理を試みます。

分類フロー図

資金決済法・金商法等の観点からデジタルトークン(暗号資産・ステーブルコイン等)を分類すると、下記フロー図のとおりとなると考えられます。

分類フロー図

①利益分配の有無

まず、①利益の分配がある場合には、金商法上の「有価証券」に該当します(金商法2条2項5号ロ)。

②有償発行/無償発行

次に、②無償発行の場合、いわゆる「ポイント」にあたるものとして、資金決済法上の規制に服することはありません(但し、景表法に基づく上限規制等が別途問題となりますが、本稿は金融規制を主題としますので、割愛します。)。

③通貨建資産該当性

次に、③通貨建資産該当性が問題となります。「通貨建資産」とは、発行者により、券面額と同額の法定通貨での債務の履行等が約されているものをいいます(金商法2条7項)。

例えば、預金債権、資金移動型マネー、金額表示型の前払式支払手段などがこれにあたり、金銭による払い戻しが認められているトークンのほか、円建てで債務の履行に用いることができるものも含まれます(例:Suica等のプリペイド)。

④特定信託受益権該当性

通貨建資産に該当する場合、まず、④特定信託受益権該当性を検討します。これは、「特定信託受益権」いわゆる3号電子決済手段(資金決済法2条5項3号)は、信託受益権をステーブルコインとして発行するものであり、他の電子決済手段やデジタルマネーとはやや性質が異なるためです。

⑤払い戻しの可否・⑥不特定者を相手方とする売買等の可否(ステーブルコイン該当性)

特定信託受益権に該当しない場合、次に、⑤金銭による払い戻しの可否を検討します。
金銭による払い戻しが可能な場合であって、⑥不特定者に対する代価の弁済として使用することができ、かつ不特定者を相手方として当該トークンの売買が可能な場合には、「電子決済手段」に該当し、そうでない場合には、預金債権・資金移動型マネーに該当します。
また、払い戻しが不可の場合には、「前払式支払手段」に該当します(資金決済法20条5項)。

なお、通貨建資産であって、P2P取引が可能な前払式支払手段も、定義上は「電子決済手段」に該当するものの、前払式支払手段発行者に対しては、P2P取引型前払式支払手段を発行しないための適切な措置を講ずることが法令上義務付けられており(前払式府令23条の3第3号)、その発行が制限されています。
また、電子決済手段等取引業ガイドラインにおいても、P2P取引型前払式支払手段を電子決済手段として取り扱うことは適切ではない旨示されています(電子決済手段等取引業ガイドラインⅠ-1-2-3(1)④)。
これは、前払式支払手段は払い戻しが法令上禁止されているところ(資金決済法20条5項)、不特定者間における決済手段としての機能を想定した電子決済手段(ステーブルコイン)については、金銭による払い戻しが担保される必要があり、前払式支払手段を電子決済手段として整理することは、その性質上馴染まないことが理由と考えられます。

⑦不特定者を相手方とする売買等の可否(暗号資産該当性)

次に、通貨建資産に該当しない場合、⑦不特定者に対する代価の弁済として使用することができ、かつ不特定者を相手方として当該トークンの売買が可能な場合には「暗号資産」(資金決済法2条14項)に該当します。

なお、ガイドライン及びパブコメにおいて、最小取引単位あたりの価格が1000円以上又は発行数量が100万個以下である場合には、基本的には、かかる要件を満たさない(「暗号資産」には該当しない)旨の解釈が示されています。
そして、不特定者を相手方とする売買等に使用できない場合であって、⑧発行者による債務の履行等が訳されているときは前払式支払手段に該当し、そうでないときには金商法・資金決済法上の特段の規制に服しません(NFTに該当することが多いといえます。)。この場合の前払式支払手段は、いわゆる数量表示型の前払式支払手段が想定されます(例:NOT A HOTEL MEMBER SHIP)。

基本的な整理としては以上のとおりですが、実際にデジタルトークンを利用したビジネスを行う場合には、当該ビジネスの実態に照らした個別具体的な検討が必要になります。


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