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改造届出の計算をするまえに

自動車の改造届出で計算が必要になるなかでもっともポピュラーなのは、

1.原動機の変更

→(推進軸、駆動軸)俗にいうペラシャ、ドラシャです
→マウントブラケットの強度計算

2.原動機の変更や車幅、懸架装置が大幅に変わったときの転覆限界

→実車を台で傾ける検査をするか、重心を求めて計算式に入れます。

3.懸架装置の変更

→アーム類の強度計算または破壊試験

4.操縦装置の変更

→ステアリングからギアボックスまでのシャフトおよびUジョイントの強度
→最小回転半径の計算

取り掛かる前に大事なことは改造する車両が生産されたときの諸元資料を入手することです。誰かのHPや雑誌に書いてあったとかではダメで、最低でも書籍。

製造年月が諸届出に必要なのですが、1972年ですと日産ですらわからないそうです。頼りになりません。月は特定できないものの車台番号により年は特定でき、その年は保安規準の改定が何もなかったから月は不問となりました。

当然改造に使うパーツが強度部品であればそのスペックや素材の資料が必要になります。純正部品ならそのクルマの諸元やパーツ番号、パーツリスト図。

ペラシャ強度など一般的な計算式は国交省の保安規準に載っています。webでpdf化したものがあるので探すか、検査員に教えてもらいましょう。

計算には素材の特定が必要です。鉄系なら不明な場合でもJIS規格で一番強度の低い低炭素スチールで計算して十分な強度があればOK。ですから工業規格の基本知識と参照できる出自のしっかりした強度表みたいなものを用意します。
アルミ合金のアフターパーツは結構困りもので、アメリカですら「素材教えろ」とメールしても「aluminum」て返すような認識のとこばっかりです。だいたい6000番系が多いのでそれで計算して強度要求をクリアできれば大丈夫。

溶接する場合は溶接の質を担保しろ、となります。けれどいろいろな溶接資格が…技能講習修了証でも「まあいいか…」で済む場合もあるし、アームをSCM系を使って溶接作成した場合はそれだとアウトかも…と思いましたが…今になって考えるとTIGで炭素鋼を溶接したあと焼き戻しするような薄肉板・パイプ方面で降伏強度を保証できる資格はこの日本にはまだ無いので、「溶接資格は?」と検査員がいう場合、「この届出は雑すぎてヤバいぞ…」などの理由で言いがかりをつけたい動機なのかと思います。
ここだけの話、検査員とのやり取りのなかで「TIG溶接ってなんですか?」と聞かれましたよ。これはもしかしたらバカのフリして隙を見せ、いろいろ端折って届出を通そうとする方向へ誘導するためのフェイントなのかもしれませんね素
アルミ溶接は溶接業団体の試験自体がありませんから「は?溶接してるこれはアルミだけど」で大丈夫です。軽合金溶接協会の検定があります。チタンもあります。強度計算が必要な部品で溶接する場合は検定取っておいたほうがよいかも。軽合金溶接協会・日本溶接協会で検索。

純正部品の流用は改造する車両より重くて出力のある車両のものであれば文章の説得力次第ですが通ります。

ステアリングシャフトの強度計算が一番大変でした。操舵系が破断すると死にますから、上に書いた上位車種の部品をまるごと流用でない限り、ちゃんとしたカタログがある部品メーカーの部品を購入して組み合わせることになります。Uジョイントの強度はカタログに記載されていますが、シャフトは断面形状が円でないものが一般的ですので普通の断面強度の公式に当てはめることができないです。ラックアンドピニオンのスプライン数と径についてはほぼどんなクルマでも既製品のUジョイントがあると思います。確かS30zのはほとんど他で使われないやつだったようです。うちのはBMWラックになってます。コラム電動PSの車種からの流用で普通よりめっちゃ太いのですが、既製品がありました。

エンジンマウントブラケットの強度計算を要求する検査員が居たらそれはたぶんあなたがイケ好かないヤツだから嫌がらせされているか、ハナから素人をバカにしてるかのどちらかです。これにはこちらも腹立ったので計算しましたが、計算可能な形状で製作していてよかったです。丸パイプなどで作っていたら計算できないところでした。使う数値はエンジンの最大トルクとモーメント、およびマウントブラケットの断面強度です。

まとめ

改造届出の計算の前に 素材の知識と資料、正しい部品の選択、検査員とのやりとりで人並の態度ができることなどが必要です。どれもおろそかにすると改造届出の決裁までたどり着くのはおぼつかないです。

検査支局や地方運輸局まで出向かなくても郵送で届出でき、電話で済むことはあちらの手が空いた時間にかかってきます。

コミュニケーション過剰の人が担当になると面倒くさいです。会社でも趣味でも一定の割合で居ますよね、やりとりの勝ち負けや恩着せ貸し借りが好きな人たち。それと、若手が改造届出の窓口になり、教育手段に。あるいはレベルの低い届出書を評価するのは時間がとられるうえにつまらない仕事ですから若手が雑用係として使われている気がする…チェックを上司がすることになりますが、そこの人間関係も影響します。地域によって基準が違うと言う話をあちこちで聞きますが、むしろ担当検査員の違いです。車検上での慣れ合いなあなあ防止なのかみなさん特定の検査支局に長いこと居ないから、あるときから急に改造届出が面倒くさくなることもあるかも。