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工業ミシン・漉き機のTAKINGブランド

【注】この記事では機械の優劣には触れません

TAKING、検索しにくいよね。タキングと読むのだけど、英語の主要200単語に入るtakeの現在進行形だから、検索結果がゴミまみれになり、特定回避テクなんじゃないかと。

大慶縫衣機械股份有限公司(TA KING INDUSTRIAL CO., LTD.)は台湾台北に本社があるメーカー?

工業用ミシン・革ミシンの加工機の売買加工製造業
精密金型製造
前項の商品の部品及び付属品の売買・加工・製造業

本社は二階…

TAKINGオフィス

大丈夫か?と思いますが、ベンツは社長のクルマかな。近郊に加工工場はありそうで航空写真で確認。

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写真が1枚あった。入出荷で車両の出入り多そうな路面。

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台湾の大慶縫衣機械股份有限公司、商標登録履歴は以下。大慶の読みはDàqìngでTAKING(タキング)に近いけど、大王や天王は遠いけどなあ

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現在有効な商標は「天王星+TAKING」それと「大王+KINGSTAR」も押さえていますね。しかし天皇星はアウトのような笑

いかがでしたでしょうか。

一方、「中国TAKING」と呼ばれているのは、深圳市远成缝纫机工业有限公司。HPがテンプレに字を挿入しただけの仕上がり笑う。西洋人がにこっとしてるのはともかく、建物とかは日本でいうところのイメージ画像、袋めんの調理例みたいなものです。日本企業webサイトのコールセンターヘッドセットした女性画像とかをもっと解釈拡大OKという文化らしい。会社の派手なエントランスと受付嬢の画像をよく見ますが、あれはいちおうCGではないみたいです。場所がスタジオだったり、会社の一角で一時的な大道具設置かもしれんし、受付嬢はほとんど外注コスプレだとは思う。

中国タキング

ストリートビューは中国本土では通用しないので百度で、電脳未来都市深圳市でも20世紀のまま取り残されたエリアっぽい。

大王牌

路駐の大王牌バンが無かったらぜったいわからんよね。工場エリアではないし敷地も狭く、建物がどれかすらわからないのでここでの製造は無いと思います。
ちなみにDejima Auto Tuningをストリートビューすると小さなバイク屋くらいなら営業できそうなガレージがみられます。なのでよそ様のことバカにするつもりはさらさらないです。

深圳は電脳都市のイメージが強いけど、よそから仕入れた工業ミシンなどを調整して台に載せ自ブランドをつけて出荷する業態が栄えており、そういうミシン屋の一つと思います。日本と違うのは仕入れ先の工場が模倣品や委託製造契約切れのミシンだけを製造してる都合でブランドタグがなく、自分とこでブランドをでっち上げないと格好がつかないわけで。
で中国大王牌は台湾TAKINGの大王とTAKINGの名前をパクってるのかと思います。「大王」をTAKINGと読むのは台湾大慶由来なんだから。

では、台湾TAKINGが自社でミシン製造しているかというとそれも考えにくく、大陸から同様のノーブランドコピーミシンを輸入し調整してTAKING天王星KINGSTAR大王などとして売ってるのは深圳、杭州のミシン屋と同じかと。
そういうわけで名をかたられても、あまり強く言えないですよね。いわば昭和の頃にグレコやフェルナンデスが「うちのギターのコピー作って売るなよ!」って怒るみたいな。【更新2024】後者が事情停止・破産したことで、楽器メーカーではなくて企画した製品を他社でOEM生産してもらい、販売する業態だったことがわかりましたよね。もとをたどると昭和コピーギターの模倣主犯がどこなのかをあいまいにするためのやり口だったのでは。

Seiko TE系デザインの腕ミシンは大陸には無いように思うので一部は自社製造かも。あと仕入れた工業ミシンのロングベッド・ロングアーム化改造をやっているのかもですね。途中を切ってスペーサーをかまして軸を延長するのはストレッチリムジンと同じような工程ですから、一から設計製造するのとは別次元のさほど頭を使わない仕事。
その他業務内容に「部品及び付属品の売買・加工・製造業」ってあるので、漉き機TK802のベアリング入りビア樽、主軸アンギュラベアリング、どちらも20世紀Fortuna機のパクリではあるが、猿真似でなく新規に図面を引いているのは間違いないし、他で見ないことから、そこは台湾TAKING製だろうと思っています。旧型TK801主軸支持の玉軸受けx3はGolden WheelのCS-747漉き機でも同構造ですが、801系に玉軸受けを最初に入れたのもおそらく台湾TAKINGでしょう。玉軸受け化加工はかんたんなのですぐ真似が可能なわけでおそらくGolden Wheelが同構造なのは… 

漉き機のいわゆる801タイプは、欧米日本フルコピー(ただしネジ模倣は雑)の中華ミシンたちとは違い、中国オリジナル度が高いような。中島ミシン製作所(現JUKI松江)のYakumo NLS-7506の外観がまるまる801系で、made in Japan、漉きクズ排出装置等で実用新案済とあるので、中国製を持ってきて日本製と謳って売るような会社ではなさそうな気がするんで、これがコピー元かもしれません。ですが、ミシン会社が「漉き機も?はいはいわかりました」と作れるほど類似している機械ではないんで、中国(機構パクリ担当)+中島ミシン製作所合弁≒大陸で部品生産というセンが濃厚。それなら大陸に本体の鋳型があるわけで。セイコーも漉き機を製造してたようなんですがSinger 509BSIとして売られていたので、「この図面で作れ」と半完成の鋳物を配給で加工を依頼されたのでしょう。
下画像は樽の手前の板なんですが、「2種ありますよ」という注意書き。長いのはTAKING、短いのはGolden Wheel 金輪(杭州)に代表される機械に合います、といってもめっちゃブランドありますから測るのが近道、という。

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どちらもドイツのFortunaとは寸法が違います。古いFortunaをパクった日本の漉き機とも違いますし801系の元祖はどこなのだろう(ちょっと上に加筆編集済、Yakumoです)。
うちのTAKING TK802は長いのが付いてきた。右上にTK802には必要ないオイル注し穴あるし寸法おかしいので今売ってる機械に付いてる板ください、と日本で輸入販売しているZIT-toolsさんにお願いしたら、「今売ってる802の板はその802には付かないし、そもそもパーツを在庫していない」と。「合うかわからないけどこれどうぞ」と頂いた板は短いほうかつオイル穴無しでした。

もしおっしゃられたことが事実であるならば、台湾TAKINGが大陸から仕入れている漉き機の仕様がTK802の途中で変わり、Golden Wheel型になったのだと思います。春節過ぎたら担当が居なくなる、そして仕様の相互理解を一からやり直しってことよくあるそうですし、「世界の工場」と取引するのは大変なのわかります。ちょうどコロナ禍もあったし。

上の写真の153mmの板をaliexpressで買い、ネジ穴はTAKINGの802と一致し付きました。が、ビア樽の切り欠きの位置が画像右側に2ミリほどズレています。そういうレベルでしょうね、としかもはや思いません。もうじき手放すし。

もうちょっと調べてみると、台湾TAKINGというか、上の本社の画像の右側、「TAI KING」になってるほうの子会社工場(部品加工組み立て場?)が21世紀から大陸浙江省に登録情報としてはあり、TK802のベアリング方面改良部品はそこで生産してるらしいです。飽きたので百度路面画像は貼りませんが、工場がひと気のあまりない古いビルの3階なのは生産出荷に支障ないのでしょうかね。いろんな会社情報サイトで拾えるその所在地はバラバラ、3か所のうち一つは大学キャンパスだったし、台湾本社に加え、子会社のほうも公開している会社情報を鵜呑みにはできない印象を受けました。

いくら機械の土台が同じとはいえ、名前をかたって売る中国TAKINGに対して台湾TAKINGは割と頭来てるらしく。とはいえ本体そのものは同一あるいは同等のもの、筐体の鋳型を社内新造するコストは掛けれず、ビア樽や主軸アンギュラベアリングで差別化を、という作戦。その構造自体がFortunaの真似でもいいんです、ただの玉軸受け化とは違い、模倣で製造しにくい構造にはなってると思います。

ところが、さらに調べると、深圳大王牌でないショップが「天王星Kingly Star」という漉き機を売っていました。主軸・樽ベアリング等が台湾TAKING TK802そのまんまですが、台湾タキング商標にあるのは「大王KINGSTAR」で微妙に違う。ひょっとしてすぐ上に書いた台湾TAKING浙江省工場からよそに横流しされた主要パーツを使って組んでいたりしたら、せっかく差別化のための部品を新製した台湾TAKINGとしたらかなり面倒くさいことに。
天王星Kingly Starのタオバオ販売ページによると、

台湾TAKINGがニセバッジ品が出回ってるから識別のため、主要構成部品を変えて中国本土では「天王星KINSLY GTAR」という商標にして、バッジはこう変更されています。

と下の画像を。これが怪しさ満載。

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1.元の左バッジの時点でニセものっぽい
2.STARのSは英語ネイティブだとGと読む
3.台湾製とほのめかしTAIWAN TECHNICだけど→商標変更後はTAIWAN TECIINICにすんのかよ! 老眼鏡掛けずロゴいじったとか?

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↑主軸と樽軸の写真は確かに台湾TK802主軸樽構造と同じ、画像だけ拝借し、従来型801の構造の機械をそれで売ってるミシン屋が出てきた、というセンも濃厚。ここは実店舗・オフィスが確認できない上に、TAKINGブランド盗用の深圳大王牌TK801もタオバオで併売してる(値段だいぶんちがいます)。
いやしかし「台湾TAKINGは、中国でのTAKINGブランドの盗用対策のためサブブランドのKINGSTARに似てるKingly Starを中国本土での商標にしました、主要パーツが改良されているのはKINGLY STAR802だけ」という作り話は秀逸…いや他人事でごめんなさい。

まとめ

世界で一番詳細な、台湾・中国TAKINGブランドネームの謎とき。

台湾TAKINGがブランド盗用対策のため新設計したベアリング主軸樽付きを標榜するニセモノ漉き機が出現しているみたいです。仕事が早い。もし中身もホンモノの改良パーツだとすると、改良部品をニセモノ対策で製作した台湾TAKINGにとってはもっとやっかいですね。

【更新】2024年4月。Google Mapで存在を再確認したら英語の社名では検索候補が出なくなり、「大慶縫衣機械股份有限公司」では台北オフィスがあったところにはピンが立たず荒れた公立墓地にピンが立ちました。

鬼籍に入られたのか?

そして台湾企業情報を集めているサイトで示しているウェブサイトは重くて開かない。従業員数は1-5となっているが、上のサーチ結果から推察できる規模もそれだから驚きはない

というわけで今は深圳市远成缝纫机工业有限公司のほうがwebサイトも縫製業界イベントへの参加歴は2017が最新だけどちゃんと製品ラインナップが見れるし、西洋人ニコの扉画像もやめてもはや台湾TAKINGよりホンモノっぽく?なってる。漉き機だけTAKINGロゴが付いてるが他はTKロゴになっており、TK-801は主力商品ではなくなったっぽい。

他機種ミシンでもJUKI・MITSUBISHI現存機クローンは問題な気はする