第4回 「お魚サブスク」PJインタビュー(前編) ~ 「お魚サブスク」で地域課題
悩める自治体と新規事業を創出したい企業が協力して、地域の問題を解決することを目指すワークショップ「デジマ式 plus」。その第3回が開催されたのは、コロナ禍の兆しが見えてきた2020年2月19日、登壇したのは「長崎県長崎市」である。
今回は、長崎市役所 商工部 産業雇用政策課(当時)の山田貫才さんに、「デジマ式 plus」と出合った経緯、そこから「おさかなサブスク」が生まれた背景、サービス開始から約4年経った「おさかなサブスク」の現状、そして未来への展望を伺った。
長崎市 meets 「デジマ式 plus」
2019年、長崎の田上市長(当時)より「新産業の種を育てるプロジェクト」として新産業創出の方針が打ち出された。山田さんが所属する商工部もその方針を受けて新規産業の創出に向けて動き出したが、全くの手探り状態だった。
そんな思案に暮れていた山田さんの前に現れたのが「デジマ式 plus」。地元銀行である十八親和銀行からの紹介でその存在を知り、「デジマ式 plus」の扉を叩く。
地方自治体と企業が協力して問題の解決に向かうのが、「デジマ式 plus」の大まかな流れなので、まずは前提となる問題の選定をしなくてはならない。
長崎市役所の各関係所管に問題を挙げてもらった中で、浮かび上がってきたのが「漁業」。長崎の漁獲高は日本でもトップクラスにも関わらず、「長崎といえば魚」のイメージが薄い。
しかも長崎は獲れる魚の種類が日本一多い。多種多様な魚がそれぞれそこそこ獲れるという少量多品種の海域なので、裏を返せば「関アジ」「土佐のカツオ」「大間のマグロ」のように単一の魚をフィーチャーしてブランディングすることが難しい。
さらに漁業従事者の高齢化も進んでおり、漁業の復興は待ったなしの状態でもある。このように二重三重のハンデを背負ってはいるが、長崎にとって漁業は基幹産業なので、成功すればその波及効果は大きい。それらを勘案し、デジマ式plusの長崎市のテーマとして「漁業振興」を選んだ。
いざ「デジマ式 plus」!
「デジマ式 plus」にて漁業振興を俎上に載せると、参加企業6社がそれぞれ解決策を提示した。なお、「デジマ式 plus」第3回の様子はレポートが公開されているので、ぜひ読んでいただきたい。ディスカッションとプレゼンがかなりの熱気をはらんでいたことが分かるだろう。どの企業も本気で新規事業の芽を探しているのである。
参加企業6社の熱いプレゼンを経て、事業化への一歩を踏み出したのは「伊藤忠インタラクティブ」(以下IIC)。ここから、長崎市(+長崎県・十八親和銀行)とIICは協力し、漁業振興の新規ビジネスを立ち上げることになる。
(※:「デジマ式 plus」での解決策案を、IICと長崎市で形にしていくが、もちろん「デジマ式 plus」スタッフも伴走し、ビジネス化までを見届けるべく、常にフォローを入れている)
「おさかなサブスク」誕生前夜
「デジマ式 plus」に長崎市が登壇したのが2020年の2月、そして2020年内には実証実験として「おさかなサブスク」の第1回目が行われている。多くの関係者が参画する新規プロジェクトとしては、素晴らしいスピード感と言える。
このスピード感の裏には、世相的な後押しが2つあった。ひとつは長崎市役所の協力を得られたことだ。市長が、新たな産業振興を政策として掲げていたため、このプロジェクトが市役所内でもコンセンサスを得られやすかったのは僥倖だろう。
なお「デジマ式 plus」で長崎市が地域課題をプレゼンした際には、市長もオンラインで謝辞を述べている。市長の理解を得られていたプロジェクトだった証左と言えよう。
もうひとつは、コロナ禍である。2020年はコロナ禍によってオンラインミーティングの環境が急速に整備された。長崎とIICがある東京をオンラインで結んで、毎日のように打ち合わせができたことも、プロジェクトのスピード感に作用したと言えるだろう。
「おさかなサブスク」誕生
打ち合わせを重ねていく内に、IICから「魚種の多さこそ長崎が持つ唯一性であり、そこを活かしていった方が良い。魚を選べる楽しさを提供しよう」という方向性が示され、それからさらに会議を重ねた末、「おさかなサブスク」が誕生した。
「おさかなサブスク」は契約者に定期的に長崎の魚が送られてくるサービスである。送られてくる魚は6種類、2種は固定で、4種は月替わりで旬の魚が選ばれる。現在は実証実験ではなく、通年的に注文を受け付けている。きちんとビジネス化されているのである。
次回の後編では、「おさかなサブスク」誕生までに地方自治体が果たした役割や、「おさかなサブスク」を始点として新たに始まった取り組みなどをお伝えしよう。
「デジマ式 plus」ご興味のある新規事業担当者さまへ
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