【5通目】小説が先か、映画が先か——ジョルジュ・シムノン『仕立て屋の恋』【書評】
拝啓
昨晩は今年最後の満月でした。ご覧になりましたか? ただ正直にいえば、満月よりも、ちょいと欠けた居待月のほうが、私の好みです。まだか、まだかと東の夜空にのぼるのを待ち焦がれる切なさでしょうか。
さて、あなたが映画も好きだと知り、一度たずねてみたいと思っていたことがあります。それは、映画と原作小説、どちらを先に観るか、読むか、というものです。それを考えさせられたのが今回のフランス小説であるジョルジュ・シムノンの『仕立て屋の恋』です。フランスにおける初版は1933年。でも