第62回 時間があったら挑戦したい本 #ブックブックこんにちは
ブックブックこんにちは!
東京・神楽坂かもめブックスの柳下恭平と札幌・北18条Seesaw Booksの神輝哉、2人の書店店主が好きな本のことについて話すPodcast番組「ブックブックこんにちは」。このnoteは当番組ディレクターの山本リオが裏話をお伝えするマガジンです。
みなさんの業界格言、お待ちしています!
はじまりました、新コーナー!業界格言のコーナー!
これは、それぞれの業界あるあるを詰め込んだ格言をご紹介するコーナーです。柳下さんからは編集の進行における格言を、神さんからはゲストハウスの格言をいただきました。
こういうやつですね。
仕事の格言、いろいろありますよね。映画『紅の豚』に出てきた名台詞「睡眠不足は、いい仕事の敵だ」というのとかすごく好きです。つい夜更かししちゃうから。(これを書いているのも今26時15分を迎えようとしているところです)
私は時々営業やプロデューサーの仕事もするのですが、なにか難しい局面に立った時、いつも脳内に呼び起こすのは矢沢永吉の「ヤオモテ、OK」という名言。チームメンバーに代わって矢面に立つときほど、自分を奮い立たせるのにこの格言を思い出すようにしています。
神さんの格言を受けて「僕、宿とか基本的に予約していかないからなぁ。こないだもこんな人の家に急遽泊めてもらって......」と話していた柳下さん。音源チェックで聞き直したら「これは普通じゃないわ!」と言ってました。私も宿は事前にしっかり予約する派です。
時間があったら挑戦したい本
今回のテーマは「時間があったら挑戦したい本」。三体さんからのおたよりでリクエストいただきました。三体さんは池澤夏樹個人編集『日本文学全集』の「平家物語」に挑戦したのだとか。
『日本文学全集』といえば、2016年1月に早稲田大学を会場として行われたトークイベントがとても深く記憶に残っています。新訳に携わった作家の方々が、それぞれ担当した作品について考えたことなどを話してくださったり、新訳の一部をご自身で朗読してくださったり。そのラインナップがこちら。
「竹取物語」森見登美彦
「伊勢物語」川上弘美
「堤中納言物語」中島京子
「土左日記」堀江敏幸
「更級日記」江國香織
ご......豪華......!と思い、友人と連れ立って行きました。本は読んだことがあっても、ご本人がお話しされる姿を見る機会はなかなかない。憧れのミュージシャンのライブに初めて行くときのような高揚感がありました。
特に印象深かったのが江國香織さんの言葉。7年前のトークイベントのメモしかないので正確な引用ではないのですが、更級日記についてこんなふうにお話しされていました。
「女の一生を書いているようでいて、幼少期にこんな話を聞いたとか、こんなことがあったとか、
日常的な些細な「物語」の方が、結婚出産より残すべき内容と思われていたのかも。
夜の出来事ばっかり、月が綺麗だとか、花びらと雪を見間違えそう、とか。」
更科日記を「読む」というだけでなく、新訳するという過程を経てこそ見えるものがきっと深くあるのだろうなと感じました。
また、こんなこともおっしゃっていました。
「当時の人の旅のワイルドさ。家屋に執着しないで、方角が悪いとかでどんどん引っ越す。
知らない人の家に突然行って泊めてもらう。
そういう旅の仕方もワイルドだけど、泊めてあげる人たちもワイルド。
今の日本人とは全く違うメンタリティなのかもしれない。」
ん......?いま当時のメモを読み返しながら驚いているのですが、宿を予約することなく知らない人の家に泊めてもらう、ワイルドな旅......?そうか、柳下さんは平安時代にも適応できる人だったのか......。謎の納得をしてしまいました。
神チョイス『いきの構造』『偶然の諸相』九鬼周三著(岩波書店刊)
柳下チョイス『カイエ・ソバージュ』中沢新一著(講談社刊)
さて、お二人が選書したのはこの2冊。実はこの収録直後に、神さんチョイスの『いきの構造』をすぐに買ってしまいました。最近、お仕事で着物に関わる取材や執筆が続いていて「粋」について考えを深めたかったから。
しかし買ったはいいものの、「時間があったら挑戦したい」という気持ちがすごくよくわかる。何がなんでも落ち着いた時間をつくって、これからじっくり読みたいと思います。
柳下さんの『カイエ・ソバージュ』もずっと気になり続けているので、そろそろ読んでみたい。そろそろと言っている間のどこで一歩を踏み出すかこそが大事なんだよな......と改めて思います。
さあ、そろそろお便りのストックが少なくなってきております!みなさま、ぜひぜひお気軽なご感想を一言でも、熱い想いを長文でぶつけていただいても、なんならビデオレターでも!お待ちしております!